solo run

春ツーリング

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2012.04.30 二日目(前編) 秩父〜松本

〜女神のすっぴん〜

 

明けて翌朝。

ピーカンとはゆかないものの、すごしやすい気温の中で、気持ちよく目を覚ます。

仕事に行く日の朝は、あれほど絶望的に眠いのに、ロンツー野宿ともなるとスイッチ入れたように意識がクリアなのは、不思議というか当然というか。すぱっと起きだしたら、アサルトリュックの中から『暴走くん』を取り出し、燃焼用アルコールをいれて火をつける。

朝イチみそ汁タイム。

風がないときは、『暴走くん』とチタンマグだけで湯を沸かせるから便利だ。

炎が見えないから、慣れないとヤケドするけど。

 

秩父連山を眺めながらみそ汁を飲んだら、のんびりゆっくり出発の準備。

ひとりだと、どれだけのんびりやっても、段取りが悪くても、誰に迷惑がかかるわけじゃない。ちんたら時間かけて準備したって、誰に文句言われるわけでもないし、なんなら走らずに寝てたっていいのだ。俺がソロツーリングを愛するゆえんのひとつ。

準備ができたら、さあ、走り……あれ? 誰か来たぞ?

 

mioちゃん経由で知り合った、ユリシーズ乗りのTKさんが、ツーリングに出る前の時間を利用して、ひょいと顔を出してくれた。秩父の林道なら走ったことのない場所はほとんどないだろう、間違いなく変態と言っていい林道マイスターである。

ただし、タンクトップは着てない。

XB12XTユリシーズと、XB12ユリシーズ。

ほんの一部がちがうだけなのだが……とてもそうは見えないのが不思議。

いや、『持ち主の差』だってのはわかってるから黙れ。

 

しばらくTKさんとユリシーズ談義に花を咲かせる。

彼に薦められたベルトテンショナに感激した話、フォークオイル交換後の感想、ポジションや足つき、タイアの話など、尽きることはない。そんなTKさん、俺の言った、「壊れるまで乗りますよ、どうせ売っても金にならないし」つーセリフに、穏やかな笑顔を浮かべつつ。

いろいろやってそうな車体ですもんねぇ」

言葉を選ぶ彼の優しさが、俺の胸に突き刺さる(T△T)

 

「これから秩父駅で友人と待ち合わせなんですが、そこまで行きませんか?」

と、TKさんからのお誘い。「まだ一度も一緒に走ったことないですし」とまで言っていただければ、俺としても否やのあるはずはもちろんなく。ミューズパークのツイストロード経由で、秩父駅まで先導してもらえることとなった。

そういえば俺、ビューエルと一緒に走るの、初めてだ。

 

外装の一部や足まわりが違うだけで、基本的にほとんど同じ単車だから(俺のと一緒にされるのは不本意だろうけど)、走り的にちょっとしたところが似てて、一緒に走ると楽しい。ニコニコしながら走って、ふと信号待ちでアイドリングしてるTKさんとユリシーズの姿を見た瞬間。

俺は思わずメットの中で爆笑してしまった。

アイドリングでぶるんぶるんしてるのは、同じ単車だからもちろん知ってたが、『ヒトが乗った状態で震えてる』のを『外から見た』のは初めてだったのだ。TKさんの身体ごと、いいだけゆれてる画が、もう抜群におかしくておかしくて。

「ぎゃはははっ! いっや、ビューエルさんはホント面白いなぁ」

 

笑いながら並んで走ってると、ミューズパークに入り、道がツイストし始める。

直線でTKさんの写真を撮ったり、曲がり道を一緒に楽しんだり。

 

秩父駅に到着して、コンビニで朝飯を食っていると。

TKさんの友人、メガたっひぃさんがやってくる。

 

CB250RSZ−R。

TKさんとはこの単車つながりらしく、昨日、静岡からいらしたそうだ。そんで静岡から延々走って来たメガたっひぃさんを舗装林道で引きずり回し、最終的にはダートまで走ったってんだから、さすがは『鬼のTKさん』だ。もっともその時は、TKさんも同じ単車だったらしいけど。

お初の挨拶を交わし、しばらく話し込んだら。

http://blogs.yahoo.co.jp/toshifine227/28868858.html

彼らは正丸経由で奥多摩へ、俺は気ままに229号を西へ。

TKさん、メガたっひぃさん、楽しい時間をありがとうございました。

また機会があれば、ぜひ!

 

 

爽快な朝の空気を胸に吸い込みながら。

ひとり299号を走り出す。

出発する前、「十国峠は通行止めかも知れませんよ?」とTKさんに教わっていた。そう言えば、前に走ったときも通行止めを食らって、そのときは下仁田から妙義の方へ抜けたんだっけ。ま、通行止めだったら、254で十国峠をかわして299へ戻ればいいや。

 

曲がった道を、朝から軽快にすっ飛ばしていると、ちょいちょいツーリングライダーを見かける。

「さすがにみんな、家でじっとしてられねぇんだな?」

と、こっちまで嬉しくなりながら、ツイストで軽く遊んだり。

ムキになるほどカリカリやるヒトはいなかったので、テキトーにかわして先へ進むと。

うむ、やはり通行止めだったか。

そんじゃ、県道45号で254へ抜けよう。

つっても俺の記憶はアテにならないので、いちおう確認しておこうかと地図を取り出して見ると、おや、県道45号の途中から西へ抜けるワインディングがあるじゃないか。それじゃせっかくだから、こっちを走ってみようか。やっぱどうせなら、走ったことのない道を走ってみたいしね。

つわけで予定変更、途中から県道93号を走って、霊仙峰を越えるルートを取る。

 

県道93号に入ってすぐのところで。

美しい渓谷があったので単車を停める。

案内看板を見ると、『蝉の渓谷』と書いてあった。

南牧川の侵食でできた渓谷だそうだ。

しんとした中に、せせらぎの音と鳥の声だけが響く。

大きく深呼吸して伸びをすると、思わず「あぁ、きもちいい!」と声がもれる。

まったく偶然にこういう場所と出会えると、旅に出てるんだなという感慨も深くなる。

渓谷を眺めて一服したら。

 

また93号をひた走る。

山間部をゆく舗装林道は、254の迂回路となるのだろうか、見た目の荒れっぷりや寂れっぷりとはウラハラに、思ったより対向車が多い。事故しないよう注意しながら、春風と一緒に林道を駆け抜け、雨川砂防ダムで写真を撮る。

夏の盛りにくれば、きっと緑がきれいだろう。それとも秋の方がいいかな?

 

さらに93号をゆくと、ちょいハデな鳥居が見えたので、

信号待ちで停まったときにパチリ。

このあたりには、龍岡城という五稜郭(ごりょうかく)構造の『国定史跡』があるのだが、寡聞にして知らなかった俺は、思いっクソ見逃した。五稜郭ってのは、要塞の構造としては当時の最先端で、どの方向から敵が来ても、もういいですかそうでしょうね。

ま、このときはそんなことビタイチ知らなかったので、幸せな顔で通り過ぎる。

 

国道141号を経由して、道はふたたび299号線。

このあたりではメルヘン街道と呼ばれる299号を、麦草峠目指してすっ飛ばしていると。

どうやらここも通行止めだ。

さいわい横に迂回路があって、親切に地図つきで説明してあったので、それに従う。

と。

この迂回路がバカにできない、実に楽しいワインディングだった。

 

視界が広くガラガラなので、えらい気持ちよく曲がってゆける。

 

「こらぁ、気持ちいいねぇ!」

ゴキゲンで曲がり道を堪能していたら。

いつの間にか299に戻っていたらしい。

そのまま先へ進み、迂回路よりよっぽど荒れてる国道を走ってると、若干の寒さを感じ始めた。

「う〜む、インナーダウン着るほどじゃねぇけど、ちと寒いなぁ……っておい!」

そらぁ寒いはずだよ、まだ雪が残ってんだから。

 

峠を越えてさらに進むと、メルヘン街道は国道152号へ変わる。

国道299号線は、ここ長野県茅野市で終了だ。当初の目的である、『国道299号全線走破』は達成したことになる。いや、まあ、そんな気合入れてたわけじゃないから、達成って程のもんでもないが。んで、このあたりまで来るとイヤでも目に入るのが、『ビーナスライン』の看板。

んじゃ、ビーナスでも走ろうか。

 

途中のコンビニで休憩しつつ、地図を見て確認。

さすがに寒いところだから、まだ、桜が咲いている。

タバコを一本灰にしたら、痛むケツをさすりながらユリシーズにまたがる。

この段階ですでに、俺のケツは結構な痛みを発していた。フロントフォークが短くてリアサスが長い、かみさん的に『イチバン面白い』仕様でここまで走ってきたのだが、この仕様には通勤では気づかなかった落とし穴があった。

シート座面がナナメってるからか、長く乗るとケツが痛いのだ。

「こらぁ、まいったなぁ。長く乗るときはリアサスをS用にしないとダメだな」

ブツブツ言いながら、それでも走り出しちゃえばゴキゲンなのはいつもどおり。

ビーナスラインの取っ掛かり、県道192号線を淡々と進み。

 

やがて見慣れたビーナスの姿が見えてくる。

いや、見慣れてるってのは、あくまでロードレイアウトの話だ。

この季節はまだ緑も少なく、今日は雲も多いので、景色として『ビーナスらしい』とは言いがたい。言うなれば、すっぴんみたいなもんだ。真っ青な空のもと、緑にうずまるようにして走る、ビーナスの名にふさわしい、あの息を呑むような美しさは、夏ならではの景色なのである。

女神に会いたけりゃ、夏に走れってことだ。

 

富士見台で休憩。

夏のシーズン中や、俺は行ったことないけど冬のビーナスラインでは、屈指の絶景ポイントらしいのだが、残念ながら天気の悪い今日は、富士山が見えるわけでもなく、『フツーの駐車場』つー印象しかない。ま、俺は美しさより道の面白さが好きだから、そのへんはどーでもいいんだけど。

ここで、日持ちしそうな土産を買ってから、この先のルートを考える。

 

地図を眺めてると、『松本城』の文字が目に入った。

美ヶ原からのルートを考えていたけど、そういえば前回も、松本へ降りて野麦峠を走ったんだっけ。そう思い出したらなんだか、急に野麦峠を走りたくなった。ついでに、何度も近くを通ったのに見たことない、松本城にも寄ってみようか。

方針が決まったので、とっとと走り出す42歳。

ビーナスラインを走り抜け。

扉峠から松本方面へ降り、ワインデングを駆け下る。

やがて67号は松本市街に入り。

 

ほどなく松本城が見えてきた。これはお堀だけど。

 

だがここで、いつものコトながらひとつ誤算

日本100名城にも列せられる城、しかも連休中だけあって、周りがとにかくバカっ混み。駐車場はどこも満杯で、そこらに単車を滑り込ます場所も見当たらない。しばらく周りをぐるぐる回ってるうちに、わりとどーでもよくなってきたので、松本城見学はあきらめる。

 

コレがナニ門なのか、正面なのかどうかさえ知らない。

なっこならわかるかな?

 

後半へ続く

 

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