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春ツーリング

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2012.05.01 三日目(後編) 木之本〜出石

〜消えたキャンプ場〜

 

しばらく走って街中を抜けると。

緑の中を抜ける、爽快な道へ出る。

 

とたんに気分がよくなるんだから、我ながら現金なもんだ。

 

国道303若狭街道は、やがて27号と合流して、丹後街道と名を変える。

 

と。

 

エンジン警告灯が点灯(つ)いた。

「なはは、また福井で警告灯か。だが、俺は成長したのだ。おまえには騙されん!」

国産なら問題だろうが、ビューエルさんにそんな常識が通用しないことは、すでによく知っている。こういう場合、とりあえずどっかでエンジンを止めて、あらためてかけてみる。それでも点灯(つ)いてるなら、次はヒューズのチェックをして切れてれば差し替え。

それで、だいたいどうにかなる。

ちなみに今回は一度エンジンを止めたら復帰した。

 

やがて27号は小浜へ出た。

162号は実に楽しいワインディングなので、一瞬、心を奪われそうになる。

だが、ここはこらえて27号を走ろう。

なぜなら今日はとりあえず、街中に行きたいから。それじゃあなんで街中に行きたいのかといえば、土曜の出発前に入ったきり、風呂に入ってないから。さすがにアタマがかゆくなってきて、「気のせいだ」と自分自身を偽(いつわ)るのも限界なのだ。

いや、そうなる前に入ればいい、出来れば毎日入ればいいのはわかってる。

だけど、風呂より曲がり道のほうが楽しいんだから、仕方ないだろう?

 

つわけで走り出すと、小浜から舞鶴までの海沿いは、思ったほど混んでなかった。

「舞鶴あたりまで行けば、何かあるかなぁ」

とつぶやきながら、キョロキョロと風呂的なものを探しつつ走ってると、通りがかった道の駅の中に、温泉施設が併設されている。ま、温泉つーか沸かし湯なんだが、俺はそのへんこだわる方じゃないからね。とりあえず入ってみようと、道の駅『シーサイド高浜』へ滑り込む。

駐車場でバッグをあけ、お風呂セットと着替えを取り出したら。

 

荷物を抱えて併設のお風呂『湯っぷる』へ。

600円払って中へ入ると、

脱衣場から海が見えた。

ホモの盗撮と間違われたらヤなので、これ以上は写真を撮らなかったけど。

洗い場でアタマを二度荒いしたあと、今度は全身を洗い……って、おっさんの入浴シーンの描写は、別に要らねぇか。ま、とにかく洗ったあとは、フィンランドサウナだのジェット風呂だの、色々ある風呂の全てに入ってみてから、すっきりさっぱりして道の駅を後にする。

 

舞鶴の海上自衛隊前を通ると、駆逐艦だかナニ艦だかが入港してた。

詳しくないし、そんなに興味もないから、信号待ちで写真を撮ったらスルー。

 

道の駅で地図を見てたとき、『鬼の伝説ロードパーク』というのを見つけた。

場所は大江。そう、酒呑童子の大江山だ。

このサイトの初期、俺がよく吹いてたホラ話のひとつに、『俺の仕事はUMAハンター』つーのがある。そのイキオイで天狗を狩りに行って、ガケから単車落としたりしてたんだが、それはさておき鬼と聞いて黙ってられないのは、UMAハンターとして当然だ。

つわけで西舞鶴から27号をはずれ、鬼の伝説へ向けて国道175号に乗る。

舞鶴から由良川に沿って福知山へ向かう175号は、道としてはそれほど面白くない。

だが、俺の心はすでに『UMAハンターだったあの日』へ戻っているのだ。

道の楽しさより、UMA狩りの緊張感がもういいですかそうですね。

鬼の捕獲に気合を入れて走っていると、やがて『鬼の伝説ロードパーク』の文字が見えた。

「よし、ここだ! 行くぜ相棒っ!」

相変わらず中二病をこじらせながら、俺は道の駅へ飛び込む。

……思ってたのと違う。

そこは鬼的なオブジェクトがほとんどない、ただの駐車場だった。

ツーリングマップルをひらいて確認してみると、ああ、なるほど。こっから少し戻った北の方が大江山で、そのあたりに鬼の施設があるのか……う〜ん、じゃもういいや。そこまで鬼好きってわけじゃねぇし、戻るのは性に合わねぇし。と、UMAハンターネタを全否定したら。

そのまま175号を南下し、国道9号線に出る。

 

さすがにそこそこ混んでる9号線をしばらく西へ走ってると。

「おぉ、出石(いずし)だと? 出石って、あの出石か? よ〜し、待ってろぉ皿そばぁ!」

水曜どうでしょう原付西日本でおなじみ、『出石』や『皿そば』の看板が出始めてくる。国道9号をそれて道の駅『但馬楽座』へ入り、一服つけながら地図を見ると、どうやらここから国道312号、県道2号と行けば、出石へ出るようだ。

そしてそのあたりに、『白糸の滝』つー無料キャンプ場がある

今夜はここで停まることにしよう。

 

312号を北上して、県道2号を目指す。

これはたぶん、312号だと思うが、自信はない。

これは県道2号かな? 同じく自信はない。

 

やがて出石の街中に入る手前で、国道426号と482号の重複区間に出た。

んじゃ、とりあえず、『白糸の滝キャンプ場』を探そう。

ネタ的に言ってはみたものの、もう酒を呑みたいだけで、皿そばは別にどうでもいい。なのでこっから地図を見ぃ見ぃキャンプ場を探したのだが……これがまた見つからないったらない。かなりの時間、走って停まって地図を見てを繰り返したのだが、それらしき場所が見当たらない。

そこでようやく、先ほどからの経験を思い出す。

そう、俺の地図は古いって話だ。

「あ……もしかしたら、もうやってないのかな?」

町営の無料キャンプ場だとしても、看板のひとつくらいは出てておかしくないだろう。それがないとなると、すでにやってない可能性も充分にある。俺の情報は2009年で止まってるのだ。探しつかれたのと、正直もう飽きたのとで、白糸の滝キャンプ場はあきらめる。

 

さて、それじゃあ野宿場所を探そう。

とは言っても、キャンプ場と違って、野宿場所なら探すのは得意だ。

探すつーか、「ここでいい」と決めちゃえば、そこで決まりなんだから。

必要なのは探索能力よりも、むしろ決断力と強い心。

 

川の土手沿いを走る国道426を、風に吹かれて気持ちよく流してると。

土手の中腹によさそうな場所を見つけたので、そこへ降りてゆく。

右側の土手の上が国道で、ここはその中腹。

左側はもう一段さがってから川面になる。

つまり、ここなら雨で増水しても水没しないのだ。

土手の上から、今宵の野宿場所を俯瞰してみる。

なんだか画的にとても気に入ったので、今夜の宿はここに決定。

となれば早速、荷物を降ろして野宴の準備だ。

準備完了。荷物やテーブルが寄せてあるのは、あとでフライシートを張るためだ。

今晩、どうやら雨が降りそうだから。

 

今夜の連れはワイン。

銘柄はよく知らないけど、ドン・キホーテ・デ・ラマンチャで有名な、ラマンチャ地方のワインだそうだ。勘違いながらも自分の正義を貫いた熱い男、ドン・キホーテは俺の大好きな男だから、コンビニで見た瞬間、ノータイムでこの酒を選んだ

勇気を振り絞ってがんばってるのに、結果は空回り。

なんかヒトゴトとは思えないんだよね。

 

ひとり野宴の準備が出来たら、今度はフライシートを組み立てる。

こうして、組んだフライを横においておけば、雨が降ってもすぐに対処できるのだ。

すべての準備が整ったら、ようやく人心地ついた。

あとは呑んだくれて寝るだけだ。

空と、川と、緑と。そんな美しい景色をツマミに。

 

 

風に吹かれながら、のんびりとワインを飲む。

 

やがて陽が落ち、あたりが薄暗くなってきた。

街灯がちらほらと点灯(つ)きはじめるが、寒いってほどのこともなく。

「あ、そうだ。明日、雨だってんなら、街へ出て洗濯しよう」

と思いついたので、着ている服を脱いで、洗濯に備える。

いいだけ汚れてるズボンを脱いで。

 

ビシっとカッパを着込む。

中はもちろんノーパンだ。そしてノーパンにカッパはとても不快だ。

冷静に考えれば、明日洗濯するならまだ履いててもいいんだが、風呂に入ってサッパリしちゃったぶん、一度脱いだズボンを履くのが嫌だったので、このままノーパンカッパで野宴に興じる。カッパの内側はメッシュが入ってて張り付くことはないんだが、それもでやはり不快。

今回は荷物を減らすことに、ムキになりすぎた。

次回はもう少し着替えを持ってこよう。

 

月に群雲(むらくも)、花に風。

「いいことには悪いことが付きものだ」って言葉だが、月にかかる雲や花を散らす風も、それはそれで俺は嫌いじゃない。むしろ群雲や風のある方が、本来の自然っぽくていいと思うんだが。まあ、昔は自然なんて見飽きてるだろうから、今とは感覚が違うんだろうね。

 

そんな風に呑んだくれながら風とたわむれてると、ポツポツきはじめた。

「へへ、今日は想定ないだから驚かないぜ」

と雨にツッコミつつ、用意しておいたフライシートをかけて養生したら。

こんだ、相棒と語らいながら酒を呑む。

常々、「機械を擬人化するのは趣味じゃない」とは言っているが、さすがにコレだけトラブルを乗り越え、いっしょにあちこち走り倒していると、ちょっとばかり感傷的になる。まあコイツの場合、顔が生き物っぽいから、余計に感情があるような錯覚に陥(おちい)るんだろう。

「お疲れちゃん! 明日は雨っぽいけど、ま、よろしく頼むな?」

相棒に向かって酒盃を掲げたら。

程よく呑んで、そろそろ寝よう。

 

朝から晩まで走りながら、湖、滝、空、風、いろんな自然を堪能できた、三日目の話。

 

つづく

 

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