solo run
春ツーリング
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2012.05.04 六日目 琵琶湖 〜湖畔の単車乗りたち〜
たっぷり寝たおかげで、昨日の酒はすっかり抜け。 野宿生活も六日目となると(一泊はおーが家だけど)、身体がすっかり野外になじんでしまう。自分の身体が欲するものがわかるので、適度に野菜は摂(と)るし、暗くなったら寝て、明るくなったら起きる生活だから、むしろ普段の日より体調がいいくらいだ。 強いてネガを上げるとすれば、妄想。 「どうにかして、この生活を続けられないものか」 そんな妄想ばかりが浮かんでくるのが、困ると言えばちと困る。
気持ちよく起き出してみると、ロケットスリー乗りのTEDさんが顔を出している。 去年の琵琶湖んとき以来のTEDさんは、髪が伸びて、よりダメ人間フレーバが増えてた。久しぶりの再会に挨拶を交わしたら、早速、今日やってくるはずの、『ロケット乗りでイチバンひととして終わってる、秩父のタンクトップ』の悪口を言いながらダベる。 テントに戻り、そこでまたバカ話。 そうしてしばらくグダグダしてると、やがてタンクトップシティからヤツが到着した。 『秩父 タンウトップ』でググるとTOP表示されるダメ人間、mioちゃんだ。 ロケットスリーに箱積んでるって事実が、ヤツのダメっぷりをあらわしている。ちなみに、隣のえらい有機的なロケットスリーは、もちろんTEDさんの愛機である。こうやって改めて見ると、「ホンキで変態な単車だよなぁ」と、つくづく思う。 俺はもう、こんな重たいのは乗れないかなぁ。 少なくとも、『コレで峠』は、もうやれない気がする。
mioちゃんがテントを張るってんで、俺らも、からかいながら手伝う。 つっても持ち主が設営方法をよくわかってないから、組み立ても混迷するったらない。 それでもなんとか設営を終わらせ、とりあえずmioちゃんも一服。 当初、mioちゃんは琵琶湖を一周するつもりだったらしい。 だが、この日は雨が降ったり太陽が出たりと、バカみてぇに忙しい天気だった。昨日さんざっぱら雨の中を走った俺は、そんな天気に走りたくない。まして、昨日わこ〜ちゃんに聞いた話では、琵琶湖ってのは一周で180キロあるらしいのだ。 こんな天気にそこをmioちゃんと走るだって? そんなもん、間違いなく雨が降るに決まってる。 つわけで俺と、同じく走る気のないろろちゃんのふたりは、「おめ、180キロあんだぞ? ショートカットできねーんだぞ?」「今日は一日、降ったりやんだりらしいから、きっと降られるよぉ」などと甘言を弄(ろう)し、mioちゃんの琵琶湖ランを断念させる。 いや、イジワルじゃなくて親切なんだって、マジで。
やがてあきらめたmioちゃん。 ま、あきらめたつーか酒が呑みたくなったんだろう。そこで俺が荷物番をしてる間に、他のみんなはおーがのクルマで近所のスーパーへ買い出しへ出ることになった。その買い出しのクルマの中でも、なにやら色々あったみたいだが、それはまあmioちゃんか誰かのところで。 んで、俺の方はみんなが帰ってくるまで、のんびりとお留守番。 仲良く泳ぐカモを見ながら、ぼんやりと一服つけてると。 サッカーボールが飛んでくる。 なんだ? と思って見回すと、俺とタメくれぇだろうオッサンとその息子が、「すいませ〜ん」と言いながらボールを取りに来た。俺は黙ってボールを渡しながら内心で、(これからもっと混んでくる ってのに、ボール遊びってのはどうなんだ?)と首をひねる。 もっとも、向こうだってせっかく遊びに来てるんだし、あんまし文句を言うのもアレだろう。 「さすがに、ひとがたくさん出てきたらやめるだろうしな」 と思い直して、また琵琶湖の風景に目を移す。
しばらくすると、またサッカーボールが転がってきた。 こんどはもちろん、シカトだ。 それからしばらくすると、このバカ親父、こんどは野球のボールを取り出して、キャッチボールをはじめる。それだけ見れば、親子のほほえましい光景だが、ガキが投げる球が見当はずれの方へ飛んでって 、ほかの家族連れや、よちよち歩いてる赤ん坊にまでぶつかる。 「ホント、てめぇのコトばっかりなんだなぁ」 と、怒るよりむしろあきれて、俺はタバコをふかしていた。 その間にも、ボールはあっちにぶっつかり、こっちにぶつかり。
バカ親子(つーかまあ、バカ親父だ)にムっとしていたら、みんなが帰ってきた。 それぞれの食糧や酒を買い込み、意気揚々と帰ってくるダメ人間たち。 ちなみにTEDさんの前にあるのは、ノンアルコールビール。彼は泊まらないから、酒を呑まないのだ。 みんなと車座になってバカ話したり、それぞれの食い物を料理したりしていると。
またもやボールが飛んできて、俺にぶつかった。
ヘラヘラ笑いながら、「すいませーん」とこっちへくるバカ親父を見たら、ついに俺の我慢も限界に達する。ガキが差し出した手にはボールを渡さず、そのまま親父に向かって投げつける。ボールは転々と転がってゆき、親子は呆然とたたずんだまま。 「こんだけヒトがいる中で、ボール遊びってのはどうなんだ?」 怒鳴りつけたりはぜず、ただそれだけを言って視線をそらす。親父は「す、すみません」と消えそうな声でつぶやいたあと、子供に「もう、終わりにしよう」と言ってボールを仕舞ってた。ガキもさすがに空気を読んだのだろう、黙ってうなずいている。
俺としても本当は、楽しく遊んでる親子のジャマなんてしたくない。 怒ったって、誰ひとり得するわけじゃないんだから。だけど、あまりにイラついたので、ついつい態度に表してしまった。ところでひとつ言っておくと、俺は別に、『周りの子供や家族にボールがぶつかった』からって、義憤を感じて怒ったわけじゃない。 これだけは明記しておこう。 基本的に、『周りに迷惑だから』って論法が、俺はあまり好きじゃない。自分の言いたいことを、勝手に一般化して、「みんながそう思ってる」って言い方は、俺には卑怯だと思えるからだ。だから、このときも別にみんなのために怒ったんじゃなく、『俺が不愉快だから怒った』のである。 だいたい、メイワク云々ってのは、誰かに言われる前に、親が教えるべきだと思う。 俺には1ミリも関係ない親子だけど、だからこそ、彼らに不愉快にさせられる謂(いわ)れはないのだ。
とまあ、てめぇのクズっぷりを棚に上げて、偉そうに語っても仕方ない。 みんなに、『俺が怒った理由と経緯』だけを話したら、こんな話は忘れて呑んだくれよう。
mioちゃんがロケットスリーにハーフカバーをかけてるところ。 彼はただ、レザーパンツをジャージに履き替えただけ。 たった『それだけ』でブーツがゴム長靴に、バンダナがてぬぐいに見えてくるから不思議だ。 どう見ても田舎のおっさん。
そのmioちゃんが来ると聞いて、当然のごとく連泊を決めたおーが。 UKTの飯を作りながら、俺らとバカ話に興じる。 俺と大差ないキチガイだと思っていたが、いや、事実そうなんだが、それでも『いいお父さん』してる時のこいつは、なんだか俺の知ってるおーがと違う気がして、不思議な気持ちになる。もしかしたら、マルも娘といるときは、いいお父さんなのかなぁ。 まあ、そうであるべきなんだろうけど、なんだかちょっと変な気分だ。
そんな俺の感傷はさておき、昼間っから呑みはじめたダメ人間たち。 みんなが炭火で料理するもんだから、アルコールストーブオンリーの俺はちょっと負けた気分。 このツーリングから帰ってきて、キャンプ道具の手入れをしたとき。今回、「重いから要らない」と置いてった炭焼き台を、そうっとバッグに忍ばせたのは、ここだけの秘密だ。次回のキャンプでは、炭火で料理をしようと思う。ま、どうせ鶏肉を焼くだけなんだけど。
そして料理といえば、昨日の晩の宣言どおり。 ろろちゃんがカレーを作り始めた。せっかくなので、そのレシピをここで紹介しよう。
材料/肉、調味料(カレー粉を含む)
以上。 潔(いさぎよ)く、肉以外のすべての具材を放棄した、シンプルで強烈なカレーだ。 「あとで入れるミートソースに、野菜とか入ってるから大丈夫だよ」 うん、なにが大丈夫なのかイッコもわかんないよ、ろろちゃん。 ろろちゃんが、『肉だけカレー』を作ってると、駐車場に排気音が聞こえてくる。 だれだ? と首を伸ばして向こうを見てみれば、昨日の夜に顔を出してくれたぐっさんが、今日は彼の愛機であるハヤブサに乗ってやってきた。「お、きたな!」と迎えると、ぐっさんはニヤニヤしながら自分のバッグを開けて、つぎつぎと缶ビールを取り出す。 最後にワンカップまで取り出してから、ぐっさんは「かみさんにお土産」と笑った。 自分で飲む分じゃなく、どうやら俺の分らしい。いやいや、俺だってさっきの買い出しで酒を買ってきてもらってるってば。こんなにたくさん貰ったって、とても全部は呑みきれないよ。いったいキミはナニを誤解して俺がそんなに呑んだくれると思っ…… 「ぎゃはははっ! ぐっさん、よくわかってるっ! コイツ、信じらんねぇくらい呑むからな」 だまれ、バカおーが。
ぐっさんも加えて昼間っから宴会をしていると、栃木のロケット乗りOTOさんが現れる。 やってきたOTOさんも早速テントを張り、宴会に参加だ。 色々と食い物を持ってきてくれたのだが、いかんせんこっちはもう、朝から飲んだくれてすでに腹いっぱいのベロンベロン。俺にいたっては、早くもこの辺から記憶があいまいだったりするんだから 、手に負えない。ひとをバカ呼ばわりなんぞできねぇだろうって話だ。
おーがが、野菜の好きな息子のために、いろいろと焼き始める。 特に、このしいたけはむちゃくちゃ旨かった。 やっぱしいたけは、網焼きでしょうゆがイチバン旨いね。 それぞれ好きなものを食いながら、好き勝手に呑んだくれたりバカ話したり。 と。 テントに引っ込んで探し物をしていたら、オモテが騒がしくなる。 なんだ? と思いながらテントから出てみると。 目の前に大量のごはんが積まれてた。 持ってきたのはもちろん、わこ〜ちゃんだ。 「ぎゃはははっ! マジでライス持ってきたのかっ! やるなぁ、わこ〜ちゃん」 「ナニ言ってんすか。昨日、約束したじゃないですか」 と答えながら、わこ〜ちゃんもニヤニヤ。 いっや、俺、好きだわこのオトコ。 わこ〜ライスの上に、出来上がったろろカレーをかけて、みんなで食べる。 もともと大人数のつもりで作ってないから、量的には足りないくらいなんだが、それがまた突発的に集まった野宴っぽくていい。俺は腹いっぱいだったので、ちょっとだけもらったが、UKTあたりはモリモリ食ってた。その様子もまたほほえましい。 すると、その父親のおーがが、UKTに向かってまじめな顔で。
「UKT、ええか? 家に帰ったら、『野菜のたくさん入ったカレーを食べた』って言うんやぞ?」 「ぎゃはははっ! てめ、なに息子を共犯者にしてんだよ!」 「アホか、かみ、おまえな。ちゃんと野菜食わさんと、俺があとで飼い主様に怒られるんやぞ?」 「知るかどあほう。俺がツーレポで書いてチクってやっからな」
どうだ、おーが。俺は約束を守る男だろう?(`▽´)
わこ〜ちゃんが来たくらいから、どうやら天気はドピーカン。 つーのはホラで、実は写真に写ってないところは、けっこう曇ってたりする。 なんでそんなヤラセ写真を撮ったのかといえば、理由は福井のかっくんだ。 天気が悪くてこちらに来られないと言う彼に、電話を入れた酔っ払いmio公が、「大丈夫、こっちはちゃんと晴れてますよ」などと、ウソではないが本当とも言いかねるセリフで、かっくんをハメようとしてたので、その傍証として、『空の青い部分だけ』をピックアップして撮ったのだ。 忙しかったかなんだかで、結局、かっくんは来れなかったんだけど。 ま、どうせまた近いうち、会う機会もあるだろう。
みんなでバカやってれば、あっという間に時間は過ぎる。 暗くなってきたところで、もはや絶好調に酔っ払った、かみさん42歳。のそのそと起き上がって、そこらで枯れ枝を拾ってくると、ネイチャーストーブに入れて燃やし始める。そろちゃんが、「なんでキミはそう、何かを燃やしたがるんだい?」と苦笑いしてるが、かみさんにはもう届かない。 と、何を思ったか、ぐっさんが枝を拾い集めて来てくれた。 「おぉ、ぐっさんありがとう! 俺の理解者はキミだけだ!」 「いや、なんか面白そうだから」 なるほどなるほど、それはネタ的にってコトだね? あっはっはっ、そこまで期待されて裏切っちゃ、そら『火遊びかみ』の名が廃(すた)るってもんだ。 ……やんないよ危ないから(´・ω・`)
しばらく火を焚いて眺めながら、わこ〜ちゃんやぐっさんと話こむ。 んで、ぐっさんがキャンプとか焚き火に興味を持ってるようだったので、あんま綺麗じゃないんだけど、俺の折りたたみ風防をあげた。ストーブとかランタンはすぐに買おうと思えるけど、風防とかの細かいアイテムってのは、実際によさを知るまで、なかなか手が出ないもんなのだ。 まあ、きっと近いうち、琵琶湖で火を焚いてるぐっさんの姿が見れるだろう。
てな感じで。 いつものろろちゃんやmioちゃんに加え、三重のおーが親子、こっちが地元のわこ〜ちゃんとぐっさん、それに栃木からOTOさんまでやってきた、楽しい宴会だった。これのナニがいいって、もし俺がここに居なくても、彼らは何の問題もなく宴会をやっただろうって トコロだ。 俺が企画して仕切るんじゃ、俺は気まぐれに動けない。 今回だって本当は来るつもりじゃなく、四国あたりを走ってた可能性の方が高かったのだ。それが、たまたまろろちゃんに誘われて、それを聞いたおーが親子が乗っかり、別口でやってきたmioちゃんとOTOさんを巻き込み、わこ〜ちゃんとぐっさんが顔を出してくれた。 言ってしまえば、ただそれだけの偶然の産物。 だからこそ、気負いもてらいもなく、みなが好き勝手に楽しめたんだろうと思う。
やっぱり俺は、こういう宴会が好きだなぁと、改めて感じた六日目の話だ。
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