solo run
夏ツーリング
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2012.07.14 一日目 柏〜高萩 〜出発〜
「さあ行くぜ、今日から出るぜ、夏ツーリングだ!」 やる気マンマンで早起きした俺は、荷物を担いでオモテに出る。 フル装備したまま仕事へゆき、終わると同時に出発するのだ。 「よっしゃ行くか! 忘れもんはないな? ここで気づいたら忘れもんって言わねぇけどな」 景気よくひとりツッコミしながら、ごきげんで走り出す。
と、職場へあと少しってところで予定調和。忘れ物に気づいた。 「あぁ! マップケース忘れた! 上着も持ってきてねぇ!」 すっかりしょぼくれて仕事したあと、荷物フル満載のまま家に帰ってくる。 シートに丸めたECWCS(軍服)を載せ、タンクカバーにマップケースをつけたら。 今度こそ出発だ。
だが、ここのレポ的には予定調和でも、俺はホンキで忘れてないつもりだったわけで。 それなりにガッカリしてるところへ、この日はアホみたいな晴天。出発前はその天気の良さが嬉しかったのに、いったんテンションが下がってみると、ただクソ暑いだけの鬱陶しい天気にしか思えない。地図を見て行き先を考えるのさえ、なにやらめんどくさい。 北へゆくのは決めてたので、とりあえず何も考えないで走れる、筑波山行きのルートを取る。 とは言えこの晴天に、好きなロングへ走り出したわけだから、機嫌の悪いはずもなく。 暑さに少々ヤラれ気味だったものの、気持ちはだんだん沸き立ってくる。 無意識で走れるルートを軽快に駆けてゆくと、筑波山が見えてきた。
いつものコンビニで休憩を入れつつ、写真を撮ってミクシィにアップ。 が、土曜の午後だからか観光客が多くて、筑波山を上がる気にならない。 「どうせ今日からしばらく、ワインディング三昧の生活だしな」 つわけで、筑波山には上がらず、そのままビーフラインへ向けて走り出す。
普段ロングのときは、知ってる道をさけて、あちこち寄り道してみたくなる。 だが今日はあまりにも暑いので、好奇心より身体を優先した。 筑波から北へあがり、茨城を東西に走る国道へぶつかったら東へ。 しばらく行ったら左手に見えてくる県道1号。 ここを入って数百メータほど走れば。 ビーフラインの入り口だ。 「このままビーフラインを抜けて、北茨城の高萩あたりで野宿しよう」 漠然とそんな風に思いながら、ホームコースとも言うべき慣れた道を流す。 どっかん直線は120スピード(1スピード=500m/h)前後で景色を眺め。 曲がった道は、そのまま速度を落とさずに飛び込んで、コーナリングフォースを満喫。 トルクフルなOHVが、ドコドコっと立ち上がるのを小気味よく感じながら。 ビーフラインを抜けても曲がった道を繋ぎ、袋田の滝へ続く県道を北上。
竜神大吊橋や竜神ダムを横目に見ながら、国道461号の林道区間へ入る。 ほんの2キロくらいの、ツイスティつーよりトリッキーな狭い舗装林道を抜け。
いつものコンビニで軽く休憩し、ついでに食料と酒を買い込む。
酒とツマミをバッグに仕舞ったら。 さっきの林道と同じ国道とは思えない、461号の高速ワインディング区間へ突入。 この頃には、いくぶん暑さも和らいで、実に気持ちよくすっ飛ばせた。
それなりのアベレージでワインディングを抜け、さあ広域農道だと気合を入れると。 県北東部広域農道は、どうやら通行止めのようだ。 それじゃ、このまま先へ行こうと、走ったことのない(もしくは覚えていない)、国道の残り区間を駆け抜ける。走りながら、『野宿できそうなポイント』をいくつか目の端に入れておいて、知らないワインディングを5キロほど楽しんだら、県道にぶつかるT字路に出たところでUターン。 目星をつけておいた公園の駐車場へ、ユリシーズを滑り込ませる。
花貫さくら公園は、花貫ダムのそばにある、高萩の市立公園。 もちろん公園内で野宿するのは、良識ある俺としては、大変はばかられる。 ま、良識つーか駐車場と公園が離れてて、荷物を運ぶのがとてつもなくメンドーだったので、そのまま駐車場でキャンプすることにした。すみっこのジャマにならないところで大人しく呑んだくれ、朝イチで出発すれば、そうメイワクになることもないだろう。 いや、見た目がメイワクとかそういうのは、俺が傷つくから言わんでよろしい。
横に川が流れ水音が響く、気持ちのよい駐車場で、寝場所を物色。 いちばん奥のいちばん端っこへユリシーズを突っ込んで、今日の野宿はここに決定。
せせらぎというより、ちょっとした濁流にちかい水音をバックに、とっとと荷物を解(と)いてゆく。 テーブルとコット(キャンプベッド)を組み立てたら、『今宵の宿』はコレで完成だ。
コットの上にドカっと座り込んで、まずはタバコを一本。 暮れて優しくなった太陽の光が、木々の隙間を抜けてキラキラとかがやく。
とまあ、センチメンタルカンガルーはこのへんにして、とっとと酒を呑もうじゃねぇか。 コンビニで買ってきたツマミを取り出して、黒ビールのプルタブをプシュっと開けたら。 夏ツーリングのスタートを祝して、ひとり宴会の始まりだ。 おっと、忘れてた。 酔っ払ってメンドーになるまえに、虫除け対策をしておこう。 今回はジェルタイプを買ってみたのだが、思いのほか使い勝手がよかった。 ただし、行く場所がディープウッズなところばかりだったので、効果のほどは今ひとつわからない。
ジェルを塗りたくって虫除けしたら、こんどこそカンパイだ。 もともと好きな上に、ぬるくても美味しく呑めるから、俺は選択肢があれば黒ビールを選ぶ。山の中で野宿するとなると、最後の酒屋から距離があったりすることも多く、買い込んだビールがぬるくなってるコトもしばしばなのだ。ぬるいピルスナー系ビールってのもゾッとしないだろ? その点、黒ならぬるくても美味いからね。
ひとりで呑んだくれながら、動画を撮ったりして遊んでると。 観光客がやってきた……のだが。 おじいちゃんおばあちゃんを含めた、三代の家族連れだったので、話しかけなかった。 いや、おじいちゃんおばあちゃんは俺を見てニッコリ笑ってたけど、嫁さんらしき女性が、微妙な表情で子供たちをせかしてたから。せっかくお互い楽しみに来てるんだし、嫌な思いをすることはない。だけど、だからって俺のガラの悪さや見た目は変えられないしね。 場合によっては、『コミュニケーションしないこと』が気づかいになることだってあるのさ。
んで、家族連れは公園に入ってゆき、俺は呑んだくれながらビデオ撮影。 一日目 ひとり宴会(01分16秒)
やがて彼らが帰ってゆき、あたりにヒトの気配がなくなってくる頃。 太陽もほぼ、姿を隠した。
逢魔ヶ刻(おうまがとき)、誰彼刻(たそがれどき)、あるいは彼誰刻(かわたれどき)。 夕暮れ時より少し暗くなった物悲しい時刻に、ざあざあと水の音だけが響いている。 もっとも、こっちは呑んだくれて絶好調だから、そんなしんみりした雰囲気は皆無なんだが。
とは言え、午前中の仕事と、午後から酷暑の中を走った疲れが出てきたのだろう。 真っ暗になる前に、どうにも目が開けてられなくなり、俺はシュラフシーツにもぐりこんだ。 その「もぐりこんだ」という記憶を最後に、意識が途切れる。 こうして夏のソロツーリング一日目の夜は、水音とともに更けていった。
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