solo run
夏ツーリング
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2012.07.17 四日目(後編) 十和田湖 〜奥入瀬渓流〜
発荷峠をくだってゆくと、道は十和田湖を周遊する国道へぶつかる。 そこに駐車場と桟橋があったので、ユリシーズを滑り込ませた。
駐車場から続く桟橋を少し歩いて、湖の写真を撮る。 相変わらず美しい十和田の景観にしばらく見とれたら、いよいよ奥入瀬へ行くのだが、そのまえに片付けなければならない問題が発生した。十和田へ向かってる段階では時刻が早かったので、酒も食い物もなんにも買ってないのだ。 しかし湖を見た瞬間、今日はここで野宿すると決めたので、買い出しをしなくちゃならない。 「あ、そうか。奥入瀬渓流を走って街へ出て、買い物を済ませて戻ってくりゃいいんだ。街へ向かう道すがら撮影ポイントをチェックしておいて、帰ってくるときに写真を撮れば、面白い場所を見逃さないで済むわけだし。う〜む。やっぱ俺、天才かも知れん」 とまあ方針が決まったので、奥入瀬へ向けて走り出す。
が。 さすが日本一と言われる奥入瀬渓流。 走り始めてしばらくすると、観光客の乗ったバスやマイカーでごった返し、なかなか思うように進めない。それでもいちおう、良さそうなポイントをチェックしながら走るのだが、この調子だと、街へ出るまでエラい時間がかかってしまう。どうしたもんかと思いながら、バスの後ろを走ってると。 渓流を抜けて道が広くまっすぐになったところで、観光施設を見つけた。 「みやげ物が売ってンなら、酒や食い物もあるだろう。多少は高くても、ここで買い出しして戻ろう」 駐車場へ飛び込み、地ビールと地酒、氷下魚(こまい)の干物と生ベーコンを買い込む。 「おし、これで準備はOKだ。奥入瀬の写真を撮って、湖畔で呑んだくれよう!」 実に輝かしい未来予想図が描きあがったので、ゴキゲンで走り出す42歳。
さて、ここからしばらく、俺と一緒に奥入瀬渓流を走ろうか。 北から奥入瀬渓流へ入ってゆくと、まずは美しい緑が迎えてくれる。
渓流は岩がゴロゴロしてしぶきを上げている部分と、おだやかに流れる部分がある。 前日までいいだけ雨が降ってたからか、水自体は若干にごっていてそれが残念だった。
往路でチェックしてた、雲井の滝。 せっかくなので単車を降りて、滝のそばまで歩いてみた。 いつもの水量はわからないが、この日はなかなか盛大にしぶきを上げていた。
ちなみに単車を停めた場所からだと、こんなカンジの場所を歩く。 普段歩かない俺には、あんまし向いてない道だ。
走って、停まって、写真を撮って、また走ってを繰り返すのだが。 なんつってもカメラがスマートフォンなので、いちいちグローブを外すのがメンドーだ。 なので、左手はグローブをはずして走った。 走りながら何枚か撮影してみたが、スマホは走行写真に向いてないね。
水が激しくしぶきを上げ、夕方の太陽がナナメにそれを照らす。
これは奥入瀬川と反対側の斜面。苔むしていい雰囲気が出てる。
こんな風に、おだやかに流れる場所も美しいのだが、やはり水の濁りが気になる。 次は数日晴れたときに、また写真を撮りに来たいなぁ。.
これも川と道路を挟んで反対側の斜面を流れ落ちる、滝っぽい水流。
丸木橋がかかってたので、橋の途中まで歩いてって写真を撮った。
これは同じ丸木橋の、反対側の流れ。 渓流散策なんて若いころはビタイチ興味がなかったけど、やってみると悪くない。 いや、俺のを『散策』と呼んでいいのかどうかはともかくとして。
銚子大滝。奥入瀬の写真というと、必ず出てくる有名な場所だね。
奥入瀬渓流を充分に堪能したら、さあ、十和田湖へ戻って酒を呑もう!
十和田湖を周遊する国道103号線を、しばらく南へ走っていると、公園らしきものを発見する。 「ここでキャンプできるなかな?」と思い、駐車場へ単車を入れると。 テント設営はしちゃいけないようだ。 それなら他の場所を探……おおう! テント張らなくても、ステキな屋根があるじゃないか。 つわけで、本日の宿は、二日続けて東屋に決定。
早速、荷物をほどいて、いつもより盛大に、すべて引っ張り出す。
せっかく強烈な太陽が出てるので、濡れたものをすべて乾かしてやるのだ。
準備が出来たら、ようやくお楽しみの宴会タイム。 観光施設で買い込んで来た、奥入瀬ビール四種類。 夏小麦から順番に、ピルスナー、ヴァイツェン(白ビール)、ダークラガーの順で呑み比べ。 これでしっかりエンジンをあっためたら、いよいよ本番。 辛口の酒、『ねぶた』をチタンカップに注いで呑んでみる。 チタンはあまり味が変わらないとは言うが、やはり、酒を呑むにはちょっと金属的な風味が気になる。温泉やグルメにはあまり興味がないけれど、地酒は色々楽しみたいと思ってるから、これからは酒を呑む専用の器をひとつ、持って行ってもいいかもしれないね。 ま、俺以外の人間にはどうでもいい話だけどね。
氷下魚(こまい)はタラの一種。 コレはもう充分に焼かれてる製品だから、いまさらあぶる必要ないんだが、まあ、こういうのは雰囲気だからね。ついでに網とチタンカップで熱燗でもつけてやろうかと思ったが、この段階ではまだ太陽のやる気がマンマンだったので、冷やで飲むことにした。
いい調子で呑んだくれ、ある程度できあがったところで、いよいよメインディッシュ。 生ベーコンだ。 見た目ですでに美味そうな、いい香りのする半生肉を、愛刀ガーバーで刻んでゆく。
どーよ、この色味と柔らかさ。こんなのマズいわけねぇって話だ。
つわけで、まずは一切れ焼いてみる。
もちろん、むっちゃくちゃ美味い。 柔らかい肉に歯を立てると、ブツっと切れた次の瞬間、口の中にスモーキィな脂が広がる。 思い出してもよだれが出るよ。
それから、残りのベーコンを焼いてる間に。 乾いた荷物を仕舞ったり、ちょっと散歩をしたりして時間を過ごす。 四日目 十和田湖畔(1分47秒)
こうして四日目は、おだやかに流れる時間を満喫しながら、湖畔の風に吹かれて過ごした。
と思ったら。 夜になると、どこからかカラオケの音が聞こえてくる。 ゴキゲンな調子で流れてくる演歌は、えらく気持ち良さそうで、やかましいと怒る気にもなれない。どうやらこの先のキャンプ場か民宿か、そのへんで宴会をやってるようだ。こっちはそういう施設に金を落とさず公園で野宿してる身だから、文句を言えるスジじゃないわけで。 だが、今回は、こんな時の秘密兵器を持ってきてある。 100均って買った耳栓をすると、シュラフシーツにもぐりこんで、今度こそ夢の中へ……
ビタイチ眠れない。 とにかくクソ寒いのだ。 涼しいとかそういうレヴェルじゃなく、シャレにならないくらい寒い。 このままだと、夢の中つーか永遠に夢から覚めないコトになりかねない。仕方なく起き上がって、ダウンジャケットを引っ張り出す。上高地や乗鞍で、真夏でも冬装備を持つべきだと知ってはいたが、ヘッドライトに照らされた自分の息が白いのを見たときは、軽くめまいを覚えた。 ダウンを着て、シュラフシーツとカバーに包(くる)まると、ようやく今度こそ。 俺は幸せな眠りに吸い込まれていった。
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