solo run
夏ツーリング
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2012.07.18 五日目(後編) 由利本荘〜湯沢 〜アプリリアに乗る男〜
スポーツスターやビューエルの話で盛り上がってると。 単車が一台、道の駅に入ってきた。 F800GS。スタイル的にはバツグンだと思う。性能とか乗り味は、乗ったことないから知らない。 このGSのひともソロツーリングが好きらしく、考え方が俺と似てたので話してて楽しかった。 んで、今日の行き先を聞かれたので、「川原毛へ行こうと思ってるんです」と答えると、俺が予定していた道からだと、『川原毛地獄』へは行けるけど、『川原毛大湯滝』へは行けないかも知れないという情報を教わった。そのあともしばらく単車と旅の話をしたら。 お互いの安全を祈りつつ、彼とはここでお別れ。 俺は川原毛大滝湯へ向けて走り出した。
下記地図の左からきて、右下の矢印で示した■のところへ行くのだが。 せっかくGS乗りのひとが教えてくれたのに、俺は教わった道を行かず、当初のルートを取った。 赤色の道が教わったルートで、水色のラインが俺の選んだ道。 まあ、理由は一目瞭然だと思うが、もちろん曲がりくねってるからだ。 ところが、この水色の道は■へ繋がってない。なので川原毛地獄という、源泉の沸いている場所へ単車を置いて、徒歩で下って行くのだが、川原毛地獄は有毒ガスが出ることがあり、その場合は立ち入り禁止となるので、緑色の道をまわってゆくことになる。 「せっかく狭くて走りづらい道を上がっていったのに、立ち入り禁止じゃガッカリだから」 という理由で彼は赤い道をオススメしてくれたのだが、当然ながら俺のアホっぷりは考慮されていない。地図を見た段階で俺の目的はすでに、川原毛大滝湯から水色のクネクネ道へシフトしていたのだ。つわけで二倍ちかい遠回りをしつつ、大滝湯へ向かうかみさん42歳。
国道を南下し、クネクネ道へ入った。 山間をゆく舗装林道だが、クルマがほとんど走ってないので、実に気持ちよく登ってゆける。
せまっくるしい低速コーナーを、これでもかと曲がり倒していると。 どうやら、それっぽいものが見えてきた。
やがて硫黄のにおいが強くなり、川原毛地獄へ到着。 荒涼とした雰囲気は俺の好みだが、立ち入り禁止の看板が見える。 どうやら、ここを下ってゆくのは無理そうだ。
案内看板を読むと、極楽もあるらしい。 まあ、俺にとっては曲がった道がすでに極楽なんだけど。
もっとも、たとえ立ち入り禁止じゃなかったとしても。 こんなトコを下ってゆくガッツの持ち合わせはない。 かみは歩かない。
川原毛地獄をバックにユリシーズの写真を撮ってみた。 非常に残念な結果だが、ただの採石場にしか見えない。 川原毛地獄には、猛省を期待したいところだ。
これは『血の池地獄』になるのかな? 血つーよりもペパーミントって雰囲気で、むしろ涼しそうだ。 もっとも、この辺は源泉で90℃以上あるらしいけどね。
ぐるりと回りこみながら下ってゆくと、湯気の出ている岩場があった。 ここは『泥湯』と言うんだそうだ。 どんだけ身体にいいか知らないけど、俺は入りたくない。
緑の道をまわって■へ向かう林道へ。 地図ではさらっと書いてるが、ここの曲がりっぷりは水色のところより強烈だった。曲がり道つってもブラインドすぎて楽しめなかったから、写真は撮ってないけど。その上、さすがに有名な場所だけあって、数台のクルマが走っている。えらい狭くて、抜かすのに苦労した。 ここは一回走れば充分かな。
狭く曲がりくねった道を、えっちらおっちら登ってゆき。 川原毛大滝湯の駐車場へついた。
ここからは遊歩道を歩いて滝を見に行く。
川の色が強烈だ。
強い酸性泉だからなのかな。くわしくは知らないし調べてない。
遊歩道は最初こそこんな感じで、「なんだ楽勝じゃん」と思ってたのだが。
やがて山に入り、だんだん坂が厳しくなってくる。 「これ、降りたら登ってこなくちゃならないんだよな?」 と、かなり不安になりながら、急斜面を下ってゆくと。 見えてきた。 これで少し元気が出たので、あとは一気に下りきる。
落差20メータくらいから、豪快に流れ落ちる泉水。
滝つぼから流れてゆくところ。 奥の階段をあがってゆくと、温泉に入れるらしいのだが、俺はハナから入る気ない。 上の写真の手前が↓ 源泉地の川原毛地獄では90℃以上あるらしいが、ここまでくるとすっかりぬるい。 もっとも先日、雨が降っていたから、そのせいもあるようだ。 乾いた日が続くと40℃くらいになるらしいよ。
川原毛温泉〜かみは歩かない……のに(1分8秒)
川原毛温泉を堪能し、山道を軽く一生ぶん歩いたかみさん。 すっかり意気消沈しながら、狭い舗装林道をちんたら下り、県道へ出たところで一気に加速。 すっ飛ばして、なんとか陽があるうちに、道の駅『おがち』へ到着した。 今日これから『野宿場所を探す元気』なんぞ、もちろんビタイチない。 なので久しぶりに、道の駅で一泊することにした。 途中のコンビニで買い込んだ飯も、ガッツの衰えをカンジさせるラインナップだ。
いつものように、とっととベッドを組み立てて、野宿の準備を終えたころ。
ワンボックスが一台やってきて、中から初老のご夫婦が顔を出す。 「今日はどこまで行くんだい?」 「ご覧のとおり、ここで寝ます」 「あははは! そりゃそうか。ウチも今日はここで泊まるんだ」 「あ、そうなんですか。お隣さんじゃないですか。ヨロシクお願いします」 「ははは、面白いお兄ちゃんだなぁ」 「残念ながら、もうお兄ちゃんじゃないんですよ。40過ぎてるんで」
そんな風にバカ話して笑いあう。 ご夫婦は春日部だったかな? 埼玉からやってきたそうで、こうしてよく車中泊してるんだそうだ。奥様は静かな方で、ニコニコと笑ってる。奥様によれば、おじさんは人好きで、よくこうしていろんなヒトに話しかけるんだそうだ。苦笑しながら教えてくれた。 ご夫婦がいったんクルマへ戻ったところで、今度は単車のエンジン音が聞こえてくる。 アプリリアRSV1000ミレR。 Rはカーボン外装や、前後オーリンズ&ブレンボで固められたスペシャルモデル。 この旅で出会ったのはハーレィやBMが多かったので、スポーツバイクが来たのが嬉しくて、思わず了解を得る前に写真を撮ってしまう。それから、ヘルメットを脱いだ彼が笑ってるところへ、「すいません。スポーツバイクあんまし見ないから嬉しくて」とイイワケしつつ、近づいてゆく。
「これ、アプリリアのミレですよね? どうです、速いですか?」 「カワサキの9Rから乗り換えたばかりなんで、まだ、上手く扱えないんです。俺、地元はこのへんなんですけど、それで仕事の帰りに、ちょっと練習しに行ってきたところなんです」 「ああ、いいなぁ。このへんの道、面白いところが多いですもんねぇ」 「一年の半分くらいは乗れないですけどね。その代わりにスノーモービル乗るんです」 「ああ、そうか。雪で乗れないのかぁ。それはちょっと困るなぁ」
俺の口調がだんだん馴れ馴れしくなり、声が大きくなり、笑いが増えてゆく。 「今日はここに泊まるんですか?」と聞かれたので、酒をかかげてニカッと笑うと、さすが東北の男、彼も酒が大好きだとのことで、すっかり意気投合してしまった。単車の話、酒の話、東北と関東の違いだの、走ったことのある道の話だの、気のあった単車乗りとなら話題には事欠かない。 「俺、V型って初めて乗るんですけど、なかなか難しいですねぇ」 「ああ、四発から乗り換えると、違和感あるよね。それだったら試しに一速あげて走ってみたら? トルク重視で走ると、ぶん回す快感は薄れるかもしれないけど、体感よりも速く走れてることがあるよ」 「あ、なるほど! 明日、さっそく試してみます。いやぁ、イイコト聞いたなぁ」 「そんで遅くても、俺のせいじゃないけどね」 「あはははっ!」 道の駅で単車を囲んだり、ベンチに腰掛けたりしながら、さっき初めて会ったばかりCくんと、まるで長年のダチのようにバカ話して大笑い。俺はこちらのワインディングの多さをうらやみ、彼は通年走れる関東をうらやみ、でも、ふたりともホンキでやっかんでるわけではもちろんなく。 自分の地元を誇りつつ、相手の地元のよさを認める。 気持ちのいい笑いが、道の駅にこだまする。
心地よい風に吹かれながら。 俺とCは(このときすでに、俺は彼を呼び捨てにしていた)、飽きもせず単車の話で笑いあう。 するとそこへ先ほどのおじさんが、焼いた魚を持って来てくれた。 「これ、よかったら食べなよ」 「おぉ! ありがとうございます!」 「美味めぇ! C! これ美味めぇよ! おじさん、ご馳走様です!」 「いやぁ、楽しいなぁ。酒呑めないのがツライなぁ。さっきから呑みたくてしょうがないですよ」 「ぎゃはははっ! 心配するな! 俺が代わりに呑むっ!」 結局、すっかり日が暮れて夜になるまで、俺たちはバカ話をし続けた。
Cが帰ってゆき、ほっと気が抜けると。 かなり酒を呑みすぎていることに気づいた。 家にダチが遊びに来てくれたとき、嬉しくて飲みすぎてしまうのと同じシステムだ。そういやCも、「えらい買い込んでるじゃないすか。準備は万全ですね」なんつって俺が酒を買い込んでるのを笑ってたっけ。あれ? こりゃいかん、ウォッカがまるまる一本あいてるじゃねぇか。 「ちと楽しくて呑みすぎたなぁ。ジュースでも買ってくるか」 フラフラと立ち上がり、自動販売機の前までゆくと。 なんだこのジャストな製品は。ナイス新登場! まさに『こんなの欲しかった』だぜ! つわけで二杯ほど買い込むと、のどの奥へ一気に流し込む。 「うむ、なんか効いてきた気がする。よし、もう少し呑むか」 まったく学習していない。
こうして五日目の夜は、楽しい出会いとともに過ぎていった。
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