2010.05.15 Caruma会

 

Caruma君の結婚披露パーティがあるつーんで、ナオミと顔を出しに行ってきた。

前日、お泊まりしてたなっこが送ってくれると言うので、ありがたく便乗して向かった先が。

六本木。

日本に数ある街の中で、これほど俺に似合わない、むしろ居ちゃいけない街も少ない。当然のように渋滞する首都高をなっこのクルマで送ってもらい、無事、六本木に到着。降りてから、 クルマの中に上着を忘れたことに気づいて、あわてて呼び止めたりは、うっかりかみさんの基本。

すこし迷って、なんとか会場に到着する。

会場は地下にあるクラブなので、急な階段を下ってゆくと、受付に女の子がふたり。

「お名前は?」

「かみです」

フルネームを言ってリストを調べてもらっていると、入り口からぬうっとデカイ男が出てくる。ものすごく不機嫌そうなその男が、のそり横を抜けてゆくのを、ナオミが すっと手を出して止めた。ナニゴトかとナオミをにらんだその男は、次の瞬間、くしゃくしゃっと笑う。

最近、R750を降り、新しい戦闘機を物色中の、じゅんだ。

「よう、じゅん! どーしたんだ?」

「いやー、Caruma許せねーっすよ!」

理由を聞いてみると、どうやら来客リストに載っていない上に、座る席もないとのコト。いや、立食パーティだから席がないのは当たり前なんだが、会場ぐるりと囲むように置いてある椅子に、ずらっと人が座っちゃってるので、立ってるのがかなり アレな状態なのだ。

あとでわかったのだが、リストのモレは会場側の手違いだったらしい。

どうやら俺とナオミの名もリストになかったようなのだが、目の前でデカイ男がプリプリ怒ってるから、受付の女の子も身の危険を感じたのだろう。名前がないとは言わず普通に受付をしてくれた。ぷりぷりじゅんは、「もう、会費も祝儀も払ったから帰る」と、今にも帰宅しそうだ。

(おやおや、いきなり面白い展開になってきたな)

とニヤついてたら、ヒロシくんとヤマグチ君(どちらも俺のレポではお初だが、ナリさんが一度、俺の家に連れてきてくれて意気投合した、面白れぇオトコたち)、それにニンジャ乗りのミサイルくんが顔を出した。みんなやはり、「ずいぶん混んでる上に、座るところがない」と言う。

俺とナオミもためしに店内へ入ってみたのだが、たしかに座れそうもない。

脚が脚だから、座れないまま二時間以上ってのは厳しいし、だいたいそのまえに、『ソファがあって、おねぇさんが酒をついでくれる方のクラブ』ならまだしも、若者が集う方のクラブってのがどうも、俺としては精神的に居場所を見つけられない。

なのでCaruma君に帰る旨のメールを入れ、当初パーティ後に訪れるはずだった場所を目指す。

ナリさんの店、「しんのす」だ。

 

さて、ナリさんのところに行くのはいいけど、ヒロシ君が乗ってきたクルマに六人は乗れない。

「んじゃ、俺たちタクシーで行くよ」

俺が言うと、ヒロシ君とヤマグチ君がニヤっと笑って。

「いや、大丈夫ですよ。ミサイルをトランクに詰めますから」

と、どこの武装勢力だ的なセリフを吐きながら、ふたりはトランクを開ける。ところが……俺はクルマの種類つーのがよくわからんのだが、そのトランクには、明らかにそんなスペースが見当たらない。リアシートの後ろのスペースに蓋のあるだけの、スポーツ車にありがちなトランクだ。

そこへ大の男ひとりを迷いなく、容赦なく詰め込んでゆく、ヒロシ君とヤマグチ君。

「ぎゃはははっ! 死体じゃねーんだから!」

もちろん、見てる俺やナオミ、じゅんは大爆笑。

ミサイル君を詰め込み終わると、ヒロシ君の運転でクルマが走り出した。

とたんに「むぐっ」と後ろの方から聞こえる、くぐもった悲鳴。俺たちは笑いをこらえながら、いや、むしろ爆笑しながら、ミサイル君の悲鳴を無視して会話する。すると今度は、ちょっとしたギャップで、じゅんとヤマグチ君が天井にアタマをぶつけて「痛てっ!」と叫んだ。

ミサイル君をいじめた、バチが当たったのかもしれない。

運転のひろし君と、ギプスのおかげで助手席だった俺、まかり間違っても天井にアタマをぶつける心配のないちびっこナオミはもちろん無傷。ひろし君は加速、減速の時に「うわ、重てぇ!」言いながら苦笑し、それを聞いてみんながまた笑う。そしてギャップやコーナリングのたびにトランクから

「痛て、痛て、痛て!」

「刺さる、なんかわき腹に刺さる!」

などと風に乗って聞こえてくる不思議な声に、もちろん爆笑。『クルマに詰め込まれて揺れるたびに大騒ぎ』と言うシチュエイションに、じゅんが、「大学生だ、大学生!」と、さっきまでの不機嫌はドコへやら、ケタケタ笑いながら叫ぶ。も、ただの移動がめちゃめちゃ楽しい。

やがてクルマは無事に、なりさんのお店に到着した。

期待に胸を膨らませた俺たちが、ワイワイやりながらトランクを開けると。

ミサイル撃墜。

しかも、ようやく出られると思った矢先に、「写真撮るから、そのまま」と言われて撮影会。

哀しい武装勢力だった。

 

店に入るとナリさんが、「おぉ! どうした?」と目を丸くする。

状況を説明しつつ、店を入った右手の座敷に六人で陣取ったら、さぁ、宴会のスタートだ。

運転のヒロシ君以外は生ビールをひっかけ、まずはじゅんが、「まったく、Carumaのやつ、許せん!」と、実はもうそんなに怒ってないくせに、怒ってるフリをしてメールや電話を無視する。もっとも、Caruma君の方は、それでなくてもでかいパーティで忙しいだろうから、こっそり

「大丈夫、誰も怒ってないから。そっちを優先して」

と、メールしといた。正確にはナオミに送れって言われた。

つーか、俺ももちろん怒ってないけど、当初は、『もしCaruma君が顔を出したら、じゅんに乗っかって怒ってるフリをしよう』とか思ってた。その方が面白いから。だが、「大人数のパーティで忙しいに違いない」とナオミに指摘されて、思いとどまったのだ。

じゅんとミサイル君。もうすっかりご機嫌で、怒りのイの字もない。

 

呑みながら馬鹿話してると、いきなりヤマグチ君が

「俺、明日が誕生日なんだよね」

それを聞いたナリさん、すかさず「おめでとう」と日本酒を出してくれる。

これが十四代つー、さっぱりしたフルーティな酒だったので、みんなでおすそ分けにあずかり、突然の試飲タイムをぞれぞれ楽しんだ。香りをかいで、「おぉ、すんげぇフルーティ」だの、ヒトクチ呑んで「あ、コレはヤバイ。呑みやすすぎる」などと大騒ぎしてると、ナリさん。

「うまいよねー! 果物の絞り汁の感じがいいよねー!」

や、しぼりじるて。

 

近況報告、バカ話、シモネタ、そして単車の話。

話題の尽きることがない。

そして出てくる食い物の、美味いこと美味いこと。

写真はまだ前菜のサラダだけど、これがすでにやたら美味い。さらに和風のオムレツみたいなプレートや、鳥のカラアゲ、甘酢あんかけだのイロイロ出てくる。特に揚げだし豆腐は絶品で、ナオミは酔いも手伝ってか、軽く狂ったように、「このダシ、んまーい! うどんにかけたい」と大喜びしてた。

いずれチャレンジするらしいので、ちょっと楽しみだ。

 

そのうち酔っ払ったヤマグチ君、「アンダーラインも呼ぼう」と言い出し、しばらく電話で話したあと、

「なんか、今日は、ナントカガセキで仕事があるみたいで来られないって」

「ナントカガセキ……そ、それ霞ヶ関のこと?」

「あー、それ!」

こともなげに返事をするヤマグチ君に大爆笑。さらにしばらくして、同じような話の流れで誰かが、「アンダーラインは?」つーとこの天才、しれっとした顔で、「あー、なんかねー、ナントカナントカで仕事してるって言ってた」と、当たり前の顔で答える。もちろん、すかさず、

「さっきは、『ヶ関』まで言えてたじゃねーか。何でまるっきし言えなくなってんだよ!」

「どんだけカワイソーな子だよ!」

突っ込み&大爆笑。ナオミも腹を抱えて転げながら、

「ちょっと、ヤマグチさん! 私と同い年でしょ! もー、いろいろガッカリだよ!」

ところが今日のヤマグチ君は、まだまだ止まらない。

左から、ヒロシ君とヤマグチ君、右手前がナオミの後頭部。

なんかの流れから、ここにいる連中のうち、『俺だけが巨乳好き』だつー話になると、ヤマグチ君が身を乗り出しながら、「かみさん、巨乳とか貧乳とか 、そういうことじゃないんだよ! そうじゃなくてえーと、あのね……」ヤマグチ君の言葉に、みなが期待しながら待ってると……

「つまり俺は、女の子はみんな好き、ってことだよ!」

いろいろと、どうなんだ?

 

ここにいる全員を繋げた男がいる。そう、Rだ。

当然、Rの話も出るわけで。

みんなでミサイル君に、「Rさんをぶっちぎります、って言え!」などとからかったり。

さらに、単車を降りてるヤマグチ君に、

「ヤマグチ君! 『俺がバイク復帰したら、Rより速い』って言ってよ!」

「俺が復帰したら、Rより速い!」

「ぎゃはははっ! どこ見てる! 何でこっち見ねーんだよ! 遠く見るな!」

とバカ話の応酬をしつつ大笑い。

「……って感じじゃん? だから俺はR好きなんだよ。ってそう言えばRは?」

ヤマグチ君の言葉に、すかさずじゅんが「すでに連絡済みですよ」と答え、また呑んだくれていると、やがてツーリング先から帰ってきたRが顔を出した。Rがミサイル君とヒロシ君の間に座ったのを見届けて、もちろん、再度のカンパイ&バカ話。

 

程なくして、Caruma君と新婦のMちゃんまで、わざわざ顔を出してくれる。

左からヤマグチ君と、いつの間にか移動してるミサイル君。手前がMちゃんで右がCaruma君。

店側の手違いとは言え、「いや、ホント申し訳ない」と詫びるCaruma君に、もちろん、本当に怒ってるヤツなどひとりもいない。そこからはCaruma君たちの結婚式の話や、それに関連したRたちの福井ツーリングの話を聞く。もちろん、バカ話を挟みながらだ。

やがてRやヒロシ君、ヤマグチ君が単車の話や昔話をはじめ、Caruma君夫婦とじゅんが結婚式の時の写真をやり取りし、ミサイル君が飲みすぎてつぶれてしまった。宴も終焉が近いといった風だ。しかし、俺とナオミは、このときすでにかなり冷静ではいられなくなっていた。

むしろ、目が離せなくなっていた。

 

この日は貸切ってワケじゃなかったので、もちろん一般のお客さんもいた。そこへガラリと扉を開けて入ってきたのは、スキンヘッドに巨体を持った、女連れの怪しいオトコ。俺とナリさんは、その姿を見た瞬間にある男の名前を心の中で叫んでいた。

「ちょ、ショーファーさん!」

もちろん本人ではなくショーファーさんのバッタモンなのだが、これがまぁ、とんでもないヤツで。

よく似てるなぁと苦笑しながら、思わず目で追う俺とナリさん&ナオミ。するとこの偽ショーファーさん、のそりとカウンターに陣取るなり、ツレの女の腰を抱き寄せる。その脂ぎった感じに、俺らは顔を見合わせて苦笑しつつも、そっと成り行きを見守っていた。

やがて彼の手は、女の腰を離れ……

 

(ちょ、まてまてまて! いやいやいやいや、ないないないない!)

 

上着をめくって、さらにその下、直(じか)に下着の中へ。

カウンターでナマケツ。

あっけに取られた俺が視線を戻すと、ちょうどナオミと目が合った。

「ゆ、指……入ってるのかな?」

ちょう、にらまれた。

 

俺をにらみつつも、ナオミ、やはり気になって仕方なかったのだろう。

隣のMちゃんに、そっと状況を報告してる。そんな話を聞けば当然、Mちゃんもゆっくりとバレないように視線を移動して確認し、目を丸くしてこちらを向く。そのあとはもう、みんな笑いを堪えるのに必死だった。「いやー、ないわー」「なに考えてるんだろうね」なんつってるとMちゃん。

「ありゃぁ、ボウズだ。絶対ボウズだ」

あやまれ。全国の僧侶に謝れ。

ニセファーさんを睨んでるんじゃなくて、太った顔をごまかすために口を尖らせてる俺。

 

その後、まだまだ回る先のたくさんある新郎新婦は、ひと足先に帰る。

「なんだよー、帰るのかよー! じゃぁさ、あとでCarumaんち行くね」

「おー、いーねー! Carumaの新居で花火やろう!」

ワルノリするヤマグチ君やヒロシ君、Rたちに焦りまくるCaruma君。

「ちょ、やめろおまえら! 来るのはいいけど、花火はやめろ!」

「二時間待ってください。花火は私の荷物だけ運び出してからにしてください」

Mちゃんは、冷静に鬼発言

ふたりが帰った後も、呑んだくれ宴会は続き。

カンペキに酒が回りきったところで、どうやら俺とナオミは終電の時間がせまってきた。アツく語り始め、端(はた)から見たらまるでケンカしてるRとヤマグチくんや、それにはさまれ、ひとりシラフで冷静なヒロシ君、今回は大人の飲み方だったじゅんに別れを告げる。

ミサイル君は、もはや死体。

武装勢力、壊滅。

 

心地よい夜風に吹かれながら店を出て、ナリさんに駅まで送ってもらったところで、本日のCrazy marmalade呑んじゃうもん倶楽部は、終わりを告げる。最後の方は酔っ払いすぎてグダグダだったけど、笑って笑いまくった楽しい宴会だった。

またこんな風に、笑いまくれる楽しい宴会がしたいね。

 

じゃねーや。

 

Caruma君、Mちゃん、結婚おめでとう!

 

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