2010.06.12 土曜の午後は
あと三十分くらいで仕事が終わり、ってころにショーファーさんが顔を出してくれた。 ホントならそのまま俺んちで宴会ってのがいつもの流れなんだが、今日は午後からナオミと一緒に、ポンちゃんの店、『REV STEAK(レブ・ステーキ)』でランチを食うことになってた。その旨を話すとショーファーさん、肩をすくめて 「いやぁ、お肉は最近、喰えなくなっちゃったんですよ。吹き出物も出ちゃうんで」 つわけで、仕事終わりにちょこっとだけ話をして、残念ながらココで解散。
この写真ではわかりづらいけど、ショーファーさんも、いつの間にかものすげぇやせてた。 どいつもこいつも裏切り者め。
ショーファーさんと別れた後は、とっとと家まで帰り、ナオミを積んで走り出す。 新しくつけたバックレストは、非常に好調のようだ。「パッドがまだ新品で硬いから、そこが腰に当たって痛くなる」とは言ってたが、残念ながらそれはシシーバーのせいじゃなくて、俺の運転のせい。加速をも少し穏やかに走れば、たぶん全然問題ないと思うよ。
三十分くらいかな、レブに到着すると、ポンちゃんがニコニコしながら顔を出してくれる。 が、ここで衝撃の事実が判明。ポンちゃんはこの間の事故で首を痛めてて、土日のランチはしばらくお休みしているらしい。なのに、そんなコトひとっことも言わないで、普通に迎え入れてくれた上に、イキナリ、「これ、写真撮ってたんだけど、撮り終わったから喰いなよ」つって
新商品サイコロステーキを食わせてくれた。 到着と同時にステーキが出てくるステキタイミングに、思わず歓声を上げつつ、早速、サイコロステーキをいただく。いつもの『さがり肉』より、ちょっとハラミ寄りなんだそうだ。やわらかくて、妙な脂っぽさが一切なくて、ご機嫌に美味いのは、もはやいつものこと。 「うめぇ、コレうめぇよポンちゃん!」 大騒ぎしながら喰ってると、ポンちゃんも横に座って、三人でしばらくダベる。 すると、表を見たポンちゃん、「あ、はじめやがった」とニヤリ。なんだ? と思って振り返ると、レブの前の道でシートベルト検問を始めていた。「点数稼ぎか。この暑いのにご苦労様だなぁ」なんて言いながらぼんやり眺めてると、
「おぉ、あのオマワリ、女の子じゃん! なんかちっちゃくてカワイイぞ」 そんなバカ話をしながら店の中でステーキをつまみつつ、レブ名物『レモン水』を飲んでると、やがて警察が撤収したのを見て、「よし、いなくなったな」とつぶやいたポンちゃんが、表に出て俺を手招きする。なんだろうと出てみるってーと 「かみくん、かみくん、今日はオモテが気持ちいいよ」 つわけで、日焼け対策をしてこなかった哀れなナオミは店の中に放置し、ふたりで店の外のテーブルで『レモン酔』……ちがった『レモン水』を飲みながら、太陽と風を浴びる。もんすげ ぇ気持ちのいい風に吹かれながら、俺は改めて実感した思いを素直に吐いた。 「いや、ホントこの店が近くなくてよかったよ。徒歩圏内なら毎日、ここでクダ巻いてるね」
じりじり照りつける太陽は、気持ちいいけどちょっと暑い。 「こりゃサマーベッド持ってきて、寝転がって日光浴しながらビール呑みたいなぁ」 「ココで呑むのは気持ちいいよー! こないだ、しまへいもココで飲んでてさ」 ポンちゃんとふたり、日光浴しながら話しこんでいると、『位置的にどうしても目に付くもの』がある。
TZR250(1KT)だ。 「いいなぁ、2stは楽しいよね」 「いいよー! マジでいいよ。って言うか買わないの?」 「なんだよー! 俺を誘惑するなよー! そういうの、めちゃめちゃ弱いんだからさ」 「かみくんも買っちゃいなよ」 「SDR手放したのに? つーか俺はもうインジェクションの単車しか乗らんのだ」 なんつってるとポンちゃん、わざわざTZRを引っ張り出して、俺のほうに向かってニヤリ。 「ちとまたがってみ。ポジションもいいし、速いし軽いし、いいよー!」 そんな誘惑に勝てるはずもなく、「そりゃありがたい」と早速、またがらせてもらうと…… すげぇ、ポジションが楽。 よく見てみれば
「ちょ、ポンちゃん! ハンドルクランプ、半分しか喰ってないじゃん!」 「ああ、それ? ○○式(○○はポンちゃんの本名)」 「ぎゃははははっ! ○○式じゃねーっつの。でも、確かにすんげぇポジションが楽だねぇ」 「今は、コレがイチバン楽しいね。こないだもナリさんトコ行ってさぁ、途中でハデな音がしたから、『やべぇ、チャンバー割れた』と思って覗き込んだら、割れたんじゃなくてスプリングが飛んで外れただけだった んだよ。んで、見てみたらもう片方のチャンバーにバネが二本ついてたから……」 そのスプリングで応急処置をして、ナリさんのところへ行ったそうだ。 「でもさ、その日は新しいグローブおろしたてでさぁ。赤白のグローブが真っ黒になっちゃって、とりあえずナリさんのトコについた瞬間、『ナリさんごめん。グローブ洗わせて』って言っちゃったよ」 なははは。いきなり『グローブ洗わせて』じゃ、ナリさんも驚いたろうなぁ。
太陽の元、そんなバカ話をしながら笑いこけていると、 フューリィを見てたポンちゃん。 「かみくん、またがっていい?」 「おー! もちろんだよ」
やべぇ、ナニヤラものすげぇ似合うよ、ポンちゃん。 「がはは、俺よく言われるんだよ、ハーレーが似合うから買えって」 「ちょっと、ひとっ走り乗ってきたら?」 言いながらキーを渡すと、ポンちゃん、ニッカリとわらって嬉しそうにヘルメットを取りに行く。ジェッペル持ってきてまたがると、キーをオンにしてエンジンスタート。のんびりとUターンし反対車線に出たら、次の瞬間、アクセルをワイドオープン。
ばるばるばるっ! ばたばたばたっ! ばたたたたたたっ!
俺、自分で端から聞いたことなかったから、今日はじめて知ったんだけど。 俺のフューリィ、クソうるせぇ。 ポンちゃんがまた『わかって』て、ギアを早めにシフトアップして低回転からガバっと開けるもんだから、irohaをして『違法トラック』と言わしめた爆音が、あたり一面に響き渡る。偶然、そのあとを追うように出て行ったゴキバイのオマワリを見ながら、ナオミとふたり顔を見合わせて 「大丈夫かな、アイツ?」 と、思わず苦笑してしまった。
ポンちゃんがフューリィの試走をしてる間に、俺はTZR、ナオミはCBR1000Fを鑑賞。
ナオミと比べると、ホントに『船』だね。 さすがにでかいから、『首○高あたりで振り回すのはイヤだ』つってた。 やがてポンちゃんが帰ってくる。 「こういうのも面白いねぇ」 「つーかポンちゃん、ムダに似合いすぎだ。ハーレィ乗れば?」 さらに店の中に入って話しこみ、気づけばランチの時間を大きく過ぎている。ただでさえやってないトコに顔を出して喰わしてもらってるのに、さらにポンちゃんの時間を削ってしまうのは忍びない。俺は休みだけど、ポンちゃんはこれから仕事なんだしね。
つわけで、コーヒーお代わりしそうになったナオミを止めつつ、 「ポンちゃん、そろそろ帰るわ。仕事の準備もあるだろうし」 「えー? もう帰るの? つーか仕事ねぇ……もう眠いからしたくないなぁ」 「んじゃ、店を閉めて俺んちで飲もう」 「ぎゃははははっ! いいねぇ」 楽しく笑いあったところで、本日の呑んじゃうもん倶楽部(呑んでなくても、走ってないダベりは、『呑んじゃうもん倶楽部』に入れることにした)は、ここでおひらき。ポンちゃんと過ごす時はいつもだけど、今日もいつも通り、笑いの絶えない楽しい時間を過ごせた。 店を出てフューリィにナオミを積みこんだら。 「混んでるっぽいから六号行かないでコッチから帰るわ。ナオミ、帰りは迷うからな?」 「ぎゃはははっ! 迷うの前提かよ、かみくん?」 「迷ってから言ったら怒られるから、先に言っておくんだ」 最後までバカ話をしながら、俺はポンちゃんにアイサツして走り出した。
ポンちゃん、今日もごちそうさま。 今更もう、美味いことには驚かないけど、相変わらず笑いの絶えない楽しい時間をありがとう。 そのうちタイミング合わせて、また一緒に走ろう!
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