2010.07.19 ハッピーゴースデー

 

ツーリングから帰ってくると、愛機にカバーをかけて、「お疲れさん」とねぎらう。

俺は機械を擬人化して愛着を持つ方ではない(だから、次々単車を乗り換えたりする)のだが、このケーロクって単車には、なにか今までの単車と違う愛着を感じる。だがあまりそれを書くと 、この次に買い換えづらくなるので、この辺でやめておこう。

んで、テンションは上がってるものの、疲れた身体を引きずって玄関をくぐる。

いつもどおり、ブーツの金具を緩めて家に上がりかけたところで、異様な違和感を感じ、はっとして顔を上げた瞬間、目の前に広がるM字開脚。思わずビクっとすくんでしまう。そのまましばらく状況が把握できるまで呆然としたあと、俺はやっと事態を飲み込んだ。

「おー! ビックリしたー!」

とたんに爆笑。

俺、このM字開脚してるオトコ知ってる。そんで、その後ろで笑ってる女も。

「ぎゃはははっ! なんだ、おまえら? 来てたんけ?」

『M字開脚写真』を撮影しようとしたら、逃げられた。

M字開脚オトコ、略してM男がニヤリと笑う。ま、マンガ読みながら寝転がってて、その脚がたまたま、こっちから見るとM字開脚に見えただけなんだが。そしてその後ろ、俺のPCの前でマンガを読んでいたマンガ女、略してM女(開脚ナシ)は、ケラケラ笑いながら


「かみさん、家に入ってきて一回こっちを見たのに、何も言ってくれないから、リアクション薄っ! って思っちゃいましたよ。そしたら、そのあと急にビクってな ってから、やっと気づくんですもん。アタシと隊長がいるの、全然、気づいてなかったんですか?」

「イッコも。つーかなによ、どういう流れ?」

M男ことGO!!!と、M女ことなっこの顔を見ながら聞くと、ナオミが笑いながら答えた。


「GO!!!の誕生日会だよ。なっこが電話で『行っていいですか?』って聞くからOKして、しばらくしてピンポン鳴ったからドアを開けたら、GO!!!がいたの。驚いたけど悔しいから、『ああ、なんだ。アンタか』みたいな顔で、フツーに対応してやったんだよ」

そこで誇らしげに胸を張られても、褒めてはやらないが?

 

ま、状況は飲み込めた。

「 最近、騙された時の状況の把握が早くなったなぁ」と思いながら、とりあえず、ツーリングの汚れをシャワーで洗い流す。ボサボサ髪にジンベーを羽織って、ごろりと横になった瞬間、マルからナオミに電話。 あのあと、ちょっとトラブルがあったという報告だった。

んで、電話を切って自分の携帯を見ると、新潟に行ってるしんごからメールが来てる。

「かみさんち行っていいですか?」

あんだ、新潟から帰ってきたのかとOKメールを返信して、それじゃぁ飯はどうしようか。

「ボクは何でも」

「アタシも何でも」

「しんごもきっと、『何でも』つーだろうなぁ。んじゃ寿司でも取んべか」

テキトーに寿司を注文して、待ってる間にバカ話。俺は今日行ってきたツーリングの話、なっことゴーは、前日に行ってきた富士山の話、『しんごは、なんでなっこに冷たいのか?』、てな話で大笑いしたり、はたまた、それぞれ好き勝手にマンガ読んだり。

「あんだおめーら、真面目に話してるっぽい絵だな」

「アタシとなっこは、結構、真面目に話すんだよ」

「俺だって、なっこと語り合ったことあるよな? 内容は覚えてないけど」

「きゃはははっ! 覚えてないんですか」

「かみさんは覚えてないんじゃなくて、覚えられないんだよ」

「なにをぅ!」

いつもの家族団らんだ。

 

やがて、しんごがやってくる。

「ちょ、短パンかよ」

「し、しんごくん! 火傷してる!」

「あ、大丈夫です。こないだ某所に行った時、このカッコで走ってて火傷したんです」

「ははは、Rから聞いたよ。わざとナメられそうなカッコで、すっ飛ばしてきたんだろ?」

「いやぁ、走る前はナメられまくりでしたよ。面白かったぁ」

「ぎゃはははっ! タチ悪いオトコだね、まったく」

「やだやだ、怖い怖い」

「ホントですよね、隊長」

「そんなこと言って、君もすり抜けするじゃないか……あ、思い出した!」

イキナリ座りなおして正座したGO!!!、なっこに向かって

「昨日はすいませんでした、なっこさん」

「な、なんですか?」

「すり抜けしないで走っ て置いていかれたから、『なっこさん』って呼ばないと」

「アレだ。マルがゆりあんを『ユリアさん』って呼ばなきゃならないのと同じシステムだ」

「はははは」

「やめてくださいよー!」

「かみさん、今日のリハビリツーリングはどうでした?」

「あん、フツーに走れたよ。まぁ、まだまだカンペキとは言えないけど」

「いいなぁ、行きたかったなぁ」

「そのうち、マルあたりと走りに行こうぜ」

こいつらがここでこうしてる絵が、俺にとってはもう、日常にして至福の時間。

 

なっこが電話してる。

「あんだおめ、デートけ?」

「ま、そんなようなモンです。連絡待ちなんですよ」

「わかった、電源切っちまえ。んで、梅ワインでも飲め」

「切りたいー! 飲みたいー!」

「そういえばなっこ、しんごに聞きたいことがあるんじゃないの?」

「なんですか?」

「しんごはいつから、アタシを底辺レベルとして扱うようになったんだっけ、って話」

「そうそう、いつからだっけ?」

「ああ、……って話があったじゃないですか? あんとき、『コイツ本当にバカだなって思って、それから俺の中で一気に底辺まで行きましたよね」

「ああ、やっぱりアレか」

「…………」

しんごの容赦ない発言も、まぁ、ある意味心を許した連中同士だから許されるんだろう。それでも、なっこがちょっとだけキズついたような顔をしたので、ちょこっとフォローを入れる。

「んでもなっこ、一年前に比べたら、全然、大人になったよな」

「あざーっす」

「そうそう、酔っ払ってウザくからまなくなりましたよね」

「おめ、それは最近なっこと会って飲んでねーからだろ」

「なっこ、お酒の飲み方がわかってきたんだよね」

「いやー、そうですかねぇ」

「ひゃははははっ!」

しんご、鬼発言連発。隊長、鬼笑い。

そんな風に、キツい言葉も笑いあいながら、楽しい時間を過ごしてゆく。

 

と、俺の携帯が鳴った。

「もしもしー、おぉ、ポンちゃん! どした?」

「今日、仕事が終わってから、行けたら遊び行っていい?」

「もちろんだよー! 待ってるよー!」

電話を切って、みんなにポンちゃんが来る(かもしれない)ことを告げる。

それからも、単車の話やバカで気持ちいい連中の話。昔の話に、これからの話。寿司を食い、酒を呑みながら、色んな話をして笑いあう。しかし、ここで本日の主役に異変が起きた。しんごが持ってきた甘い酒を、『それじゃ、ヒトクチ』言いながら呑んだ隊長が、酔っ払い始めたのだ。

ここを読んでる奇特な読者ならご存知の通り、GO!!!隊長は酒に弱い。

そしてクダを巻いたりは一切せず、ただただ、眠くなる

「GO!!!、もう、眠いんじゃないの?」

「眠くないですよぉー」

「GO!!!さん、眼が開いてないじゃないですか」

「眠いんだよぉー!」

どっちだよ。つーかなんでキレてんだよ。

隊長の傍若無人なキレっぷりに、みんなで大爆笑。

まぁ、今日はGO!!!の誕生日だから、ナニ言ってもいいよね。

 

GO!!!の酔いっぷりに笑ったり、バカ話したりしながら、楽しい時間を過ごしてると。

やがて、なっこがタイムオーバー。

「それじゃ、帰ります」

「寂しいなぁ。電源切って呑んじまえよ」

「今度、花火大会があるからおいで」

「そんなのあるんですか?」

「俺んちの上で、呑みながら花火見るんだ。ま、あんま近くじゃないんだけど」

「……眠い」

やがて俺の誘惑を振り切って、妹は帰っていった。

大笑いのサプライズ、ありがとな。また近いうちに来るだろうけど、そんときは、ガッチリ呑もうぜ。

 

なっこが帰ってしばらくすると、今度は、しまへいちゃんと、ポンちゃんが、タンデムでやってきた。

しまへいちゃん。写真が思いっきりぶれて、スカイフィッシュみたくなっちった。ごめん。

 

ポンちゃんは今日も絶好調。

「この人、めちゃくちゃですよ。タンデムで俺を乗っけてるのに」

「なにが? おめーが飛ばせって言ったんだろう……あ、ゴー君あけましておめでとう」

「え、あ、おめでとうございます」

「あけまして、なんだ」

「ぎゃははは、あけてねーよ。誕生日だっつの」

「何歳になったの?」

「35です」

「あーそう。あ、しんご、ひさしぶりー!」

「はははっ、お久しぶりです」

「ぎゃはははっ! GO!!!の誕生日、まるっきり興味ねぇんじゃん」

出バナっからすっ飛ばす、相変わらずのポンちゃん節に、みんなヤラれっぱなし。

 

「あ、ポンさんにあげる用の梅ワイン、持って帰る?」

「お、ありがとう」

「おー、これがウワサの……ゴクゴクゴク」

「おまえ、ナニ呑んでんだよ! これは俺がもらったやつだろ!」

「ちょっとくらいいいじゃん、ゴクゴクゴク」

酒豪のしまへいちゃんにかかったら、梅ワインなんか水と同じだ。見る見る減っていく、梅ワインのペットボトルを、ポンちゃんが見かねて取り上げる。それから写真を撮ってたので、嫁さんにでも見せるのかと思ったら、レブのブログ用だった。ポンちゃん、更新、真面目にやってるねぇ……

……って、隊長!

GO!!!、いつの間にか寝オチ。

つーか先ほど一回オチかけて、カメラを向けたら目を覚ましたりしてたんだが、ついにチカラ尽きたようで、カメラを向けても気づかずに、気持ちよく寝てらっしゃる。まぁ、これはこれで、なかなかステキな誕生会になったんじゃないだろうか。本人寝てるから、わからないけど。

やがて。

「終電なくなるんで、帰ります」

GO!!!隊長、誕生日おめでとう! また近いうち、つーか今週末だっけか。遊ぼうね。

 

残ったのは、俺としんご、ポンちゃんとしまへいちゃん。

このメンツで呑みながら話せば(ポンちゃんは運転だし、元々酒好きってワケじゃないから呑んでないけど)、単車の話や乗り手の話は当然として、さらにポンちゃん得意のバカ話、エロ話まで発展するのに、それほど時間は掛からない。

や、違った。

今回はエロ話じゃなくて、『恋の話』だったっけ。

みんなで恋の話に花を咲かせていたのだが、この辺で俺の挙動がだいぶん怪しくなる。

昨日の夜も、Rといいだけ呑んで酔っ払って二日酔いだったうえに、栃木までツーリング(それも、あのメンツでだ)してきて、さらに帰ってきてからもずーっと呑んでいたので、さすがに身体の方が限界だったようだ。それでもテンションが上がってるから、なんとか話をしようとする。

が、力尽きて寝オチしそうになったりするうち、それを見てたポンちゃん。

「んじゃ、しまへい。そろそろ帰ろうか」

「わかった、ゴクゴクゴク」

「俺も帰ります、ご馳走様でした」

帰ってゆく皆の背に、半分オチかけながら起き上がった俺は、

「たのしかったよ〜! またあそぼうねぇ〜!」

声をかけ、そのままベッドへ倒れこんでしまったところで。

本日のCrazy Marmalade 呑んじゃうもん倶楽部は、無事に閉幕。リハビリどころか、えらい楽しいツーリングして帰ってきたら、嬉しいサプライズがあって、そのうえ、俺の家族みたいな連中や、気の会う楽しい連中と呑んだくれた、ホントにステキな一日だった。

 

弟、妹、気の会う楽しい連中。そして、備品。

 

みんな、ありがとう。

また近いうち、呑んだくれて騒ごうぜ!

 

index

inserted by FC2 system