2010.09.01 古き友、新しき友

 

「かみさんにいつでも遊びにおいでって言っていただいたのに 、行かないのも失礼だなぁーって思ってるんだけど、何か用意してかなきゃいけないなとか。また、いつでもってのが自分には難しくて、平日お邪魔しちゃっていいのかとかいろいろ考えちゃって」

 

mixiにツッコミどころ満載の日記を上げてたのは、しんごの弟たかし。

ハタチの彼はちょうど俺の20コ下で、いよいよ俺のダチも、「高校生んトキうっかり作ってれば」的な『条件』なしで、フツーに「ムスコ娘の年齢」なヤツが出てきたよ。 なにやら人生が、ますます面白くなってきた。でまぁ、それはともかく、気ぃ使いすぎなことをツッコむ。

 

「どあほう。俺はおまえの兄貴(※しんごのこと)を弟だと思ってるから必然的におまえも弟だ。よけーな気は使わんでいいよ。逆に、忙しいのに無理して来なくたっていい。来ないからって失礼なんて、ビタイチ思わないよ。家主の俺が一番、ギリだの社交だのが苦手なんだしw 」

「ヒマで気が向いたら。これがウチの不文律だぜ」

 

てな感じでレスしたところから話が始まり、「んじゃ遊び行きます」つー展開になる。

水曜日は半日仕事なので、仕事がハネて帰ってきてから、 「夕方6時ころ行きます」 つーたかしを待ってると、10年来のダチ「うわば」から連絡があった。

「今日って、行っていいです?」

「単車乗りの若い男の子が来るけど」

「俺はかまいません」

「だろうな。んじゃ待ってる」

なじみのバカは話が早くていい。

 

待ってる間に、いつの間にか昼寝。

ナオミの「きたよ」に起こされて、ベッドから居間へ行ってみると、久しぶりのたかしがニッコリさわやかな笑顔で立っていた。「おー! 久しぶり!」「おひさしぶりです」挨拶を交わしたら、たかしがコンビニ袋からビールを取り出した。

「かみさんとこ行くなら、飲まなくちゃと思って」

「ばっかおめ、俺は『呑め』なんて言わないぞ? おめーの兄貴には言う時あるけど」

なんて感じで話し始めながら、まずはカンパイ。

「お疲れちゃん! つーかよ、おめぇあ気ぃ使いすぎなんだよ」

「しんご君もたかし君も、よく気が付くよね。体育会系って感じで」

『同じこと』で、俺に突っ込まれると同時にナオミに褒められ、たかしは苦笑するしかない。

 

別に気が利かないからダメだとか、気が回るからえらいとか、そんなことを言うつもりはない。少なくとも、俺に関してならそこで扱いが変わるとかはない。ただ、ウチみたいな『特殊空間』じゃなく、一般的な席では、気が回る方が可愛がられるだろう。

そう言う意味では、たかしはオトナと言うか、可愛がられる要素がある。

ま、あまりに素直なんで、ナメられる感は若干、あるかもしれないけど。兄貴の方がちょっと毒っ気があって、同じ可愛がるんでも気が抜けないつーか、油断してるとバックリやられる感があるね。そこがしんごの良さだ。そして、もちろん俺は、この兄弟のどっちも好きだ。

 

たかしと単車の話でもしようかと思ってた矢先、バカが湧(わ)いてくる。

うわばんこと、うわば。単車は乗らない。

10年まえ、俺がネットを始めたばかりの時に出会ったダチだ。せいぜいPCとかアニメくらいしか共通話題はないはずなんだが、気づけばもう10年の付き合いになる。ま、俺と10年も付き合ってるんだから、もちろん筋金入りのバカだ。あ、そう言や、共通話題があった。

共通の思い出、昔話だ。

弟のライブに行って、俺が泥酔して@ねぇさんとケンカしたり、同じく泥酔して弟と取っ組み合いし、TVの取材をパーにしたり、懲りずに泥酔してモニタースピーカを壊し、 弟のバンドが危うくライブハウス出入り禁止になりかけたりしたとき。

そのほぼすべてに居合わせて、笑ってたり、面倒見たり、尻拭いしてくれた男だ。

 

「土産です」

言いながら、相変わらずアホな物を取り出して並べてゆく。

すだち酒、 カレーラー油味のポテチ、『感染(うつ)るんです』のストラップ、そして『悪魔の実』。

「がははは、おめーはホント安定したバカだな」

笑いながら話し始める。

もっとも、うわとバカ話ばかりしちゃってると、たかしが話しに入ってこれない。いや、入ってこれないだけなら、入ろうとしないのが悪いんだが、そうじゃなくて、今日は『俺が』、たかしと単車の話をしたいのだ。なのでうわとバカ話をしつつも、たかしに話を振る。

もっとも、 うわは自分が入れなければ、ナオミと話したりマンガ読んだり、放っておいても好き勝手にやるから問題ない。伊達に10年も付き合ってるわけじゃないのだ。ナオミがまるきし気を使わないってのは、こいつ以外じゃマルとGOくれぇだろうか。

 

「たかしぁよ、いつもドコ走ってんだよ?」

「某所ですね。こないだは、ナリさんとも走ってもらいました」

「ついて行けたか?」

たかしは、目ン玉むき出して首を横に振りながら、「待ってて貰っちゃって」と笑う。その笑いの中に、ちょこっと悔しそうな色が見えた。そりゃそうだ。ハタチそこそこで、「今は彼女より就職より、とにかく速くなりたい」と言い切るオトコなんだから。もっと速く走りたくて、歯がゆいんだろう。

俺がハタチの時には、女の子のコトしか考えてなかったけどなぁ。

 

「んならよ、ナリさんや兄貴とたくさん走らねーとな。独りで走っても、やっぱ限界あるよ。俺も独りで峠に通いつめたけど、速いヤツと走る方が、独りの何倍も勉強になったし、実際、速くなれた ぜ。速いヤツと一回走るのは、独りのトレーニングの一週間から、ヘタすりゃ一か月分だな」

「速くなれますかね?」

「なれるさ。乗り続けてりゃ、必ず速くなれる」

その言葉に、たかしは嬉しそうに笑った。

もちろん漫然と乗ってるだけじゃダメだろうが、ヤツのテンションなら間違いなく速くなれるだろう。

公道でヤることのリスクや意味を、感覚的にわかってるみてぇだし。ま、ここからクローズドサーキットへ進むのか、それともあくまで公道でやるのか、その辺は本人自身もまだわかってないみてぇだから、俺の口出しする話じゃねぇかな。説教オヤジじゃねぇんだから。

「ま、俺んちはいつでも開いてるから、疲れたときは休憩しに来いよ」

「はい!」

 

そう、俺んちはいつでも開いてる。

オンオフ、大小、速い遅い関係なく、単車乗りの前で閉ざす扉を、俺は持ってない。

だから、もしも単車が好きなら。乗り手の話、乗り方の話、いじる話、行った場所の話、会ったバカの話、なんでもまとめて、一杯やりながら話そう。呑めないなら俺が呑むから、美味いものでも喰いながら話そう。大笑いしたり、アツく語ったりしよう。

俺はそのために、このサイトをやってるんだ。

 

「今は、とにかくすっ飛ばすのが一番だろうけど、ロングもオフも単車の楽しみはたくさんあるぜー」

「ですね。かみさんのレポ読んでたら、走りに行きたくなりましたよ」

速く走りたくなったら。そして、速く走りたくなくなったら。遠くへ行きたかったら。そして、遠くへ行きたくなくなったら。そんな時は俺んとこ来て、ちっと休んできゃいいよ。どんな時だって 、単車は変わらずそこにある。変わるのは人間だ。それは悪いことじゃないし、むしろ変わっていくのが当然だ。

だが、変わる時ってのはエネルギーが要る

そのエネルギーを蓄える間、俺んとこで羽を休めてけばいい。

好きな単車の話をしようじゃねーか。

まあ唯一、俺んちでやっちゃいけないことは、『ナオミを怒らせない』くれぇかな(´▽`)

 

調子に乗っていいだけ呑んだくれてるうちに、俺はだいぶんベロベロだ。

この10年を思い出しつつうわばんと笑い、これからの走りを思ってたかしと笑う。面白いほど対照的な思いが、俺の中に混在してて、えらく気持ちよく酔っ払える。まぁ、俺が気持ちよく酔っ払ってる時ってのは、たいていナオミが大変なんだが。

久しぶりに、『がははは』ってだけじゃなく、穏やかに微笑む飲み方ができた。

やがてうわばんが帰ってゆき、そこからまた、たかしとふたり単車の話、乗り手の話をする。R筆頭の某所組に、ポンちゃんたち千葉組、クルーザ組にオフロード。話すことは幾らでもあり、時間なんて幾らあっても足りない。なのにバカ呑みするから、かみさんそろそろダウン寸前。

ナオミが買ってきてくれたコーラを飲んで、そこらで意識が途切れる。

ちっともったいなかった。も少しセーブして、もっとたくさん話せばよかった。

ま、それができないのが俺って話もあるけど。

 

朝起きると、たかしはすでに起きてマンガを読んでいた。

「おあよー」

「おはようございます」

そこから10分で 出発準備を整えた俺は、仕事に向かうべくブーツを履きながら。

「んじゃよ、たかし。また呑もうな」

まさかそんな一瞬で出かけるとは思わなかったのだろう、たかしが「あ」ってビックリしてるトコに

「いいよ、ゆっくりしてけ。なんならもう一泊してってもいいぞ」

と笑って、俺は仕事へ向かう。

 

昨夜の楽しい宴会を思い出してニヤつきながら、俺は国道を景気よくすり抜けた。

たかし、うわばん、楽しかったよ。

また呑もうぜ!

 

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