2010.09.10-20 火の七日間

 

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■六日目 19日日曜

―GO なっこ しんご たかし ○木さん―

 

「かみさん、遊びに行っていいですか?」

起きると、たかしからメールが来た。この日は来週NZへ旅立つなっこが遊びに来ることになってたのだが、そのほかのメンツとしてGOの他にたかしの実兄、しんごも来ることになっていた。(どうやら兄貴が来ること知らないな)と思った俺は、たかしにOKのメールを返しながらほくそ笑む。

それから思い出して、○木さんにもメールを入れる。

前に治療院で話したとき、しんごのビール好きを知ってる○木さんが、「今度しんご君が来る時は、呼んで下さい。面白いビール手に入れたんで」と言ってくださってたことを思い出したのだ。ま、○木さんにしたって、味のわかるしんごの方が飲ませ甲斐があるしね。

昔はNSR乗りだったけど、今は乗ってない○木さんと、現役ランナーのしんご。

そのほか、本来なら出会わないだろう人々を繋げたことは、俺の誇りのひとつだ。

 

つわけでまずは、たかしがやってくる。

ちょろっとくっちゃべってるうちに。

 

なっこがやってきて。

 

前後どっちだったか忘れたけど、GOもやってくる。

あっという間に、ついこの前と同じメンツがそろった。

 

単車乗りがそろって、しかもオモテが明るい。

ならば、俺の新しい相棒をお披露目しておこうか。

写真は、なっこが撮ってくれた。俺の身体がよれてるのは、もちろん足がつかないから。

 

GO代わりと余裕だね。不愉快だね。

ユリシーズの足つきのアホさを堪能したら、戻って呑んだくれようか。

この日を最後に、しばらく遠くへ旅に出るなっこは、「今日は呑みます」モード。あっという間に部屋着に着替えて(GOとなっこは、俺の家に部屋着を常備してるのだ)呑んだくれたら、ものの数分でゴキゲンなっこさんの出来上がり。いつものように、ちぃ兄ちゃんにからみだす。

「ごーさんごーさん、マンガ読んでないで遊ぼうよー♪」

「う〜ん、どうしようかなぁ……」

言ってるうちに。

飽きた。

わが妹ながら、いや、わが妹らしい羨ましいほどのフリーダム

そんな風に明るいうちから呑み始め、大騒ぎしてると。

しんごと○木さんもやってきた。

さぁ、それじゃあ、さらに呑んだくれようか。

今日はポンちゃんも来るって言ってたから、まだまだ増えて大騒ぎになるぞ。

左からナオミ、しんご、○木さん、GO、なっこ、たかし。

そして、ビール各種、芋焼酎、ワイン、梅酒。

さらに、なにより大事な、大笑いとバカ話。

餞別代りだと、兄ふたりにイジメられる、なっこ。泣きまねするなら、笑った歯を見せちゃだめだ。

 

腰の悪いGOは、長く座るときは正座をする。

なので時々こういう、『説教されてる風の絵』が撮れる。

ま、笑ってるから説教風景には見えないけど。

 

なっこはナオミが大好き。

最後だってんで、たくさん話したいコトがあったんだろうが、ごらんのように酔っ払ってるので。

ただのレズビアンになってる。

ナオミさん笑ってるけど、ちょっと身体が逃げてるね。

や、まぁ喜んで迎え入れられても困るけどね。

 

なんつってる俺は、もちろん真っ先に出来上がってる。

ムダに幸せそうで、シラフで見るとちょっとムカつく。

 

日付の変わる前くらいだったか、ポンちゃんからメールがあって来られないとのコト。

残念だが、客商売では仕方ないことだ。

次回の宴会を楽しみに、今は今を楽しもう。

 

とにかく、好きなときに、好きなことを、好きなようにやるのがマーマレードスタイル。

バイクの話に、バカ話、ちょっと真面目な話だったり、気が遠くなるほどくだらない話だったり。

とにかく、みんなで笑って呑んだくれるってのは、幸せな時間だ。

なっこはたぶん、俺と同じくらい出来上がってる。だから笑ってたかと思うと、

 

急に泣き出したり。ナオミももらい泣きしてるね。

なお、たかしは別に土下座してるわけじゃない。

身体を折って爆笑してるか、寝てるかのどっちかじゃねーかな?

 

この対決する絵も、しばらく見れないと思うと、ちょっと寂しい。

ま、とりあえず、『日本のなっこさんここにあり』ってところを、ゲージンどもに見せつけてきてもらおう。生命に関わらない範囲で、いいだけ暴れてくるといい。最終的には、『強制送還』とかカッコいいと思うな兄さんは。あと、帰ってくるときは、お土産に包んでもらってね。

羊を一頭ほど。

 

妹の送別会を兼ねた、いつも通りの楽しい宴会で大騒ぎ。

そんな、六日目の話。

 

■七日目 20日月曜

―銀星 銀子 マル―

 

おきると、たかしはすでに帰宅していた。

GO、なっこ、しんごの三兄弟は、いつものようにまだ寝てる。

そのうち誰かが起きて来ては、また寝るのを繰り返す、かみ家の基本とも言うべき流れ。『起きてんだか寝てんだかわからない』状態のまま、みんなでダラダラと、正しい休日の過ごし方。つっても数年前まで俺は、休みつーと朝から晩まで遊んでたんだけどね。

GOの言うように、ナオミからグダグダビームが出てるのかもね。

 

つわけで、俺は朝からガツガツ飯を喰い、ナオミはPCの前に。

GOは起きてマンガ読むか寝てる。なっこもアイフォンいじるかマンガ読むか寝てる。

しんごは起きるのはイチバン遅かったけど、後は寝ないでマンガ読んでた。

前の晩、『シャカリキ』を読ませたのが勝因だろう(勝ち負けの意味がわかりません)。

 

しかし、昼近くなってからは、ちょっと珍しいパターンだった。

ナオミとGOとなっこは三人で、買い物がてらアジア料理の店に行き、「メンドーだから行かない」と、俺&しんごはお留守番。こちらもアジアの誇るカップラーメンで飯を済ませて、しんごは『シャカリキ』全18巻、俺はステキな通販サイトを見始める。

カンプピストルやダマスカスナイフ、挙句の果てに忍者武器

俺の漢(オトコ)が燃え上がる。

つーか、どっかのショップで、『ヘイトソング』を商品化してくれまいか。

 

やがて三人が買い物から帰ってきても、相変わらずグダグダ。

すると、ウチのそばで火事が起こった。

真っ黒な煙がもうもうと上がり、ゴムの焼ける匂いがする。調べてみると、どうやら駐車場でクルマが燃えているようだ。「爆発しねぇだろうな?」なんて言いながら、しばらく野次馬を決め込む、俺とナオミとなっこ。GOとしんごはいつものように冷めてて、家の中で読書してた。

こういうときは、性格が出るよね。

 

やがて消防車が来て放水が始まると、

 

真っ黒だった煙があっという間に白くなる。

その辺で安心した俺は、家の中に戻った。そして家の中にいるGOと目が合った瞬間、ふたりの間にカンペキな意思の疎通。次の瞬間、俺はベランダに通じる寝室の窓を閉め、GOは居間側の窓を閉めてカーテンを引き、鍵を閉める。

しかも、その前に写真まで撮ってみせる仕事人っぷり。

motoだのトモゾーだのが目立ってはいるけど、基本的に俺のダチは、ほとんど全員がいたずら好きだってコトがよくわかるね。バカばっかだからね。もっとも、このあとふたりが窓をコンコンってやったら、俺もGOも速攻でカギ開けたけどね。根性ないからね。

 

無事、家の中に戻ってきたナオミが、ふとPCから顔を上げる。

「そういえば銀子から電話あったよ。今日、銀たち来るって」

はい、今晩も宴会決定。

やがて、友人と約束のあるなっこが帰るのを潮に、GOとしんごも腰を上げる。

「それじゃかみさん、ナオミさん、行ってきます」

「おう、気ぃつけてな」

「帰ってきたら、またおいで。待ってるからね」

なっこは、新たな挑戦をしに、遠い異国へ旅立つ。俺たちに出来ることは、その無事を祈ることと、あいつの帰ってくる場所を用意しておくことかな。いや、用意の必要はないか。帰ってくればきっと、昨日からそこに居たような顔で、笑いながら座ってるだろう。俺の自慢の妹だ。

エレベータが閉まるまで、弟、妹、そして備品の三人を見送ったら。

さてナオミさん、銀が来るまで、ちとのんびりしようか。

 

ひとりき〜り〜で〜♪ 眠れない〜夜に堕ちても〜♪

寝室の方から、くぐもった『All the way』が聞こえてくる。

「あれ、マルゾーから電話だ。もしもし、どした?」

「……かみ先生。腰が痛いです」

「あきらめなくても試合終了です。ザンネン、さようなら」

「腰つーかさ、ハラの方まで痛いんだけど」

「ああ、腰痛から来ることもたまにあるよ。放散痛だ」

「どうすればいい?」

かなりホンキで痛がってるマルゾーに、電話でひととおりの対策を教えて、そのあとちょっとバカ話して電話を切った。さて、マルゾーのおかげですっかり目が覚めちゃったし、銀たちが来るまでマンガでも読むか。書類仕事、ビタイチ終わってないけど。

 

『皇国の守護者』を読みながら転がってると、夕方、銀と銀子の夫婦がやってきた。

「かみさん、コレ」

と言って渡されたのが、先日、ケーブルテレビが銀の店を取材に来た時の録画。

「おぉ、そりゃ早速、見てみんべよ」

俺の家としては珍しく、DVDを流しながらカンパイ。ケーブルテレビを見ながら、番組のチープっぷりやアナウンサーのイケてない具合に笑ったり、最近の店の様子や、仕事の状況を聞いたりしつつ、ビールをひっかけて話しこむ。そのうち銀が、

「マーマレードスプーンを見て、ウチの店に来てくれた若い子がいるんですよ」

「あん? だれだろ、板乗りかな?」

「いや、そうじゃなくて。まだかみさんには会った事ないんだけど、前からマーマレを読んでて、かみさんが書いてくれたウチの店の記事を読んで、食べに来てくれたんです。25くらいの男の子なんですが、いつか柏にも行きたいって言ってました」

「おう、連れてこい。若モンも年寄りも、男も女も連れて来い。特に女の子を連れて来い」

「あはは……」

「つーかおめ、こないだmotoとオーちゃんが行った時、気づかなかったらしいじゃねーか」

とたんに銀子が大爆笑し、銀が照れながら笑う。

そこでナオミが、

「motoくん、なにで来たの? ST1100?」

「カブです」

「あぁ、新車かぁ。それじゃわかんないよねぇ」

や、顔を覚えとけって話だ。

 

精神的にも肉体的にもすっかりたくましくなった銀星と酒を酌み交わしながら、何だか不思議な気持ちになっていた。初めて会ったのは北浦ツーリングだったか。M109Rで知り合った、テンションが高くて酒の呑み方を知らないワカゾーに、うれしくなって大笑いしたんだっけ。

ハイハイ言いながらヒトの話をイッコも聞いてなかったバカは、気づけば一国一城の主。

穏やかに飲み交わしながら、男同士の話を出来るようになったなんて、なんだかやけに感慨深い。「昔は、頑張っちゃいるけど空回り。アサッテの方向にばかり全力疾走してたのになぁ。や、空回りは今もか」なんて思いながら、銀と銀子の話を聞いてると、ケータイがなる。

「ありゃ? マルゾーだ。もしもし、あんだ?」

「かみ、いいかよく聞け。酒を呑むな。いいか、ぜってー呑むな」

「もう呑んじゃってるよ、銀が来てんだもん」

「それ以上、ぜってー呑むな。いいな?」

要するに、これから治療してもらいに行くから、『それまで酔っ払うんじゃねー』ってことらしい。休日に来て、俺に仕事させようってのがすでに大犯罪なのに、更に『酒呑むな』とは、信じられないほど身勝手な言い草だが、ま、仕方ないから呑まないで待っててやろう。

つわけで、呑んでる連中のそばにいるとしんどいから、PCの方に離れてマルを待つ。

その間にもナオミがふたりに、彼女の経験から来るアドバイスをしたり、お気に入りのネギ油を食わせたりしてる。俺はと言えば、『石垣を登る忍者道具』とか40センチオーバーのランボーナイフを、通販サイトの買い物カゴに入れたり出したり

 

やがて、マルゾーがやってきた。

「遅せぇよバカ。そっちアタマにして横になれ」

つわけで、始業12時間前から、お仕事開始。

治療しながら何度か確認しつつ、ひととおり痛みが取れたところで、ようやく酒にありついた。そこからはマルゾーも交えてバカ話。つってもクソマルはクルマで来てるからウーロン茶だけど。俺が呑むのを待たせたんだから、当然と言えば当然だ。

ま、どうせ酔っ払ってなくても、充分バカだしね。

 

銀の店の内装を見たときの話や、ウチのツクリがアレだから引っ越せだの、マルゾーの仕事関連から始まり、俺とマルが出会ったころの話に移行する。言ってもオッサンだからねマルゾーは。オッサンは昔話が好きなんだよ。俺は、俺の『輝かしい未来』の話が好きだけど。

近々プロデュースする予定のアイドルグループ、『KSW48』の話とか。

歌って(演歌とハードロック)、踊れる(柏おどり)ムサい単車乗りのオッサンをならべて、アイドルだと言い張る。ターゲットはもちろん、女子中学生と、そのお母さん。むしろお母さんメイン。ちなみに、KSWは『KASHIWA(かしわ)』の略で、48は最年長メンバーの年齢だ。

ま、KSW48の話は置いといて、しばらくマルゾーと昔話に興じる。

 

「金なかったからなぁ。俺が患者さんに貰った酒を、たまねぎをツマミに呑んだんだ」

「生たまねぎを『水に晒す』なんて知らないから、ものすげぇカラかったな」

「酒のこと知らない患者さんがくれたブルーキュラソーを、割るモノないからそのまま飲んだり」

「次の日、ビックリすんだあれ。う○こが青とか緑でよ」

バカな話だが、まぁ、俺にとっては大切な思い出だ。

 

「かみの住んだ中でも、やっぱ○和荘はイチバンすごかったな。伝説の○和荘だ」

「ぎゃはははっ! なんで俺のアパートの名前なんぞ覚えてるんだよ、クソマル」

「○和荘ってなに?」

「ナオミは知らねーっけか。俺が住んでた北千住のアパートだ。マルも何ヶ月か住んでた」

「便所と炊事場が共同で、風呂なし。そしてブレーカーがヒューズなんだよ」

オッサンの思い出話に、銀と銀子はケタケタ笑い、ナオミは苦笑する。

 

やがて、銀がマンガを持って寝床に行ったのを潮に、マルもワンピースを読み始める。

すると、マルの電話が鳴った。

「もしもし? ああ、治療は終わった。楽になったよ。もう少ししたら帰る」

嫁のTちゃんからの電話に、そう答えて切ったマルゾー、こっちを向いてアホ面しながら、「まだ帰らないよーだ」と舌を出す。「ぎゃはははっ! ガキか。バカじゃねーの」と軽くじゃれあい、あとは、まったりペースで時間が流れてゆく。ナオミと銀子は何かを話し、ヤロウ三人はすっかりマンガタイム。

やがて、俺が『皇国の守護者』から、『RED』に移行したあたりで。

「マルさん帰るってー!」

ナオミに呼ばれて起きてくと、マルゾーが玄関に立っていた。

それを見てまた、ちょっと感慨深くなる。

(もう、死ぬまで単車乗ってるんだろうな、俺ら)

なんて思いつつ、「じゃーよ、またな」と送り出す。

一番新しいダチ、たかしから始まった大宴会週間は、一番古いダチで終わりを告げた。

 

今月はまた、ずいぶんと呑んだくれたが、体調を崩したのに見合うどころかそれ以上に、楽しい時間が過ごせた。しょっちゅう顔出して、家族みたいな付き合いのヤツも。まだ会ったことなくて、今、PCの前でこれ読んでるやつも。次の時は、一緒に楽しく呑んだくれようぜ。

ま、その前にいい季節になってきたことだし。

まずは単車をまたいで走ろうか。

 

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