2010.11.26 参拝、走行、駄弁

 

土曜日の仕事帰り、あんまし天気がいいので、ちょっと寄り道。

年頭に厄払いしてもらった、近所の神社だ。

美しく色づいた紅葉を眺めながら、よたよたと境内へ向かって歩く。

 

単車すっ飛ばして来て、ちょっと逸(はや)ってた心が、神域を見ながら歩いてゆくうち、段々と穏やかに落ち着いてくる。も少し歩調を緩め、深呼吸しながら中に入ってゆくと。

 

鮮やかな木々の姿に、思わず表情が緩む。

 

境内はひっそりとしていて、心の中まで静謐(せいひつ)になってゆく。

 

穏やかな心でお参りを済ませたら、家に戻ろう。

 

とは言え、邪気と邪念のあふれっぷりでは、人後に落ちないかみさん。

せっかく心洗われようとも、天気のいい昼下がりにまっすぐ帰れないのはいつものこと。

ちょっと遠回りして、クネクネあちこち走り回る。

 

家にたどり着き、服を着替えて寝転んだ瞬間、携帯が鳴った。

変態ウイリーキング、ポンちゃんだ。

「もしもし、かみくん? 仕事中?」

「お疲れちゃん。もう家に帰ってるよ」

「マジ? もう飲んじゃってるカンジ?」

「まだ呑んでないよ」

「あ、ホント。んじゃあライコ集合で」

「ははは、りょうかーい!」

つわけで、再び着替えてユリシーズに乗ると、ライコへ向かう。

 

寒いからだろうか、週末の割には、まあまあ空いてるライコへ到着すると。

ポンちゃんが、Rナナハンの前で待っていた。

「うぃーっす! ガラの悪りぃのが居るなぁ」

「なに言っちゃってんの? どう見ても一般人じゃん」

一般人は延々と前輪を持ち上げて走らないよ、ポンちゃん。

 

「お、これがウワサのビューエルか」

「またがってみなよ」

「いいねー、オモシロそう」

「面白いねぇ。マジで面白い」

「取り替えようよ」

「ヤだよ、そのまま売っ払う気だろ。つーかね、シフトチェンジしづらいから乗れないと思うよ」

こないだオークションで落としたシフトレバーを、グラインダで短くカットしてペダル部分をつけ、幅広なツアラテックのステップに対応させていたのだが、あまりにもニュートラが出しづらいので、今は元に戻している。なので、ものすごくシフトしづらい状態なのだ。

「なにこれ。ステップのココ、要らないよね?」

と、ポンちゃん。

「そうなんだよ。ま、来年メリケンから調整式のシフトレバーがくるから、それまで我慢だ」

しばらくユリシーズに座って、イロイロやってたポンちゃん。こっちを振り返ると笑いながら

「ビューエルってさあ、試乗したことあるけど、ずーっとウイリーできるよね」

「ぎゃはははっ! 試乗でナニしてんだよ。つーかそんなコトより、前から聞こうと思ってたんだけど、キミはRナナハン、いったい何台持ってんのよ?」

ポンちゃん、照れ笑いしながら指を三本立てる。

「ぎゃはははっ! 三台! さすがに持ちすぎだっつの」

「一台は、部品取りなんだけどね。中華カウルでラッキーストライクにしようと思ってんだ」

「おお、いいねぇ。シュワンツか」

ポンちゃんは、メットもシュワンツレプリカ。ラッキーストライクじゃなくてペプシだけど。

 

バカ話して笑ったら、とりあえずライコの中を探索する。

探索しながらもバカ話は続き、やがて階段の踊り場へ差し掛かった瞬間。

ポンちゃんがニヤっと笑った。

その視線の先には……

「いいねぇ」

とつぶやきながら、ヤツがコレに近づくと同時に、俺はカメラを取り出す。

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぎゃははははっ! やると思った!

 

ライコでパーツやグッズをひとしきり見たら、オモテに出てまた一服。

すると、けたたましい音を上げながら、ビッグスクータがやってきた。

ロンスイにエアサス、極太ホイールにクルマ用タイアまで、気合の入ったカスタム。

「あー、かみくん知ってる? このサイレンサー結構高いんだよね」

「知ってる知ってる、前にロケットスリーに入れようと思ったら、高いんでやめたんだ」

「へえ、ちゃんとタイヤ引っ張ってるんだな」

「ちゃんとの意味がわからん。つーか見てみ。ミラーがポンちゃん式になってる」

「いや、こっちの方がえらいね。メッキだもん」

「ぎゃはははっ! 大事なのソコなんだ」

 

ひとしきりビッグスクータを観察したら、もどってまたダベリング。

「かみくん、明日ツーリング行こうよ」

「行かないよ。明日は家を見に行くから」

「なに、引っ越すの?」

「いい家があればね」

ここでしっかり、ポンちゃんは明日ツーリングだって聞いてるのになぁ。(伏線)

単車の話やダチの話をして笑ったら、ポンちゃんはそろそろ仕事の時間。別れ際まで笑い話をしながら、俺はウラを抜けて柏へ。ポンちゃんは県道8号を南下して松戸へ。それぞれの目的地へ単車を向けた。走りながらも、バカ話を思い出してニヤニヤ。

すっかり気温の下がった夕方の裏道も、それほど寒く感じなかった。

 

ポンちゃんとしゃべってテンションが上がったのだろう。

「このまま、走り行っちゃおうか」

なんて気持ちを抑えつつ、芋焼酎を呑みながら、『自分のツーレポを読み始めた』のが、敗因と言うか間違いと言うか。結局、そのまま徹夜で読み続け、朝になってからようやくベッドへもぐりこむ。

がっちり寝こけて、目を覚ましたら昼前だった。

ナオミとふたり出かける準備をしていると、ピンポン鳴ってGOが登場。

今日は戸建の賃貸物件を見に行くのだが、そのまえに昼飯を食いに行こうつーんで、GOのクルマに乗って松戸へ向かう。そう、お察しの通り、昨日の会話をすっかり忘れたかみさんは、ポンちゃんの店にステーキを食いに行こうとしてたのだ。

珠玉のうっかりっぷり。

つーかイイワケさせてもらえれば、単車のそばに立ってる『単車乗りのポンちゃん』と、レブステーキのマスターである『ステーキ屋のポンちゃん』が、俺の中で上手く一致してないのだ。いやまあ、何をどう言いつくろっても、俺がうっかりウカツなだけなんだけど。

車内でバカ話しながら、休日の混んだ国道を松戸へ向かい。

 

レブに到着。

 

当然、やってない。

ここでもまだ気づかない、圧倒的にうっかりな俺は、ポンちゃんに「開いてねーぞ」と写メを送った。するとポンちゃんから折り返し電話があり、「今日はツーリングだって言ったじゃん」とツッコまれる。その瞬間、昨日バイクに乗ってたダチと、レブステーキのマスターが脳内で重なった。

「あ、そうか。ごめんごめん」

つわけで電話を切り、その旨をGOとナオミに伝えて、冷ややかな視線を受け取る。

 

ま、レブが開いてない謎は解決した。

しかし、腹が減ってるという問題は解決してないので、レブの上にあるイタリアンレストランに入る。家族連れの大人数が居たので、ちょっと待たされた。俺は梅干のパスタ、ナオミはトマトとモツァレラのパスタ、GOはピッツア・マルガリータを喰った。

味は……美味しいけど、ビックリするほどじゃないかな。

 

レストランを出たら、GOのクルマのナビを駆使して、裏道からレッドバロン鎌ケ谷へ。

行こうとしてる不動産屋との約束には早い時間なので、近くのタクの店で時間つぶしがてらナオミの単車を見繕おうという算段だ。GOが不動産屋の住所を入れ間違えて(つーか住所が新しくてナビに入ってなかった)、ちょっと道に迷ったりしつつ、レッドバロンに到着。

「チビ女むきの単車、なんかねーか? セルと燃料計が欲しいんだと」

タクと四人で、ああでもないこうでもないと、単車を見ながらバカ話。

とりあえず、俺の脳が強烈にスカスカなのと同じくらい、ナオミの脚の長さも強烈にして圧倒的だということが、改めて確認された。つーか、エストレヤやルネッサがダメだったら、今の日本にナオミの乗る単車はないつー話だ。XRにバッテリとセル積んだ方が、話が早そうだよね。

メンドーだから、絶対やんないけど。

 

タクと色々話し込んで、そのうちケーロクの下取り見積もりをしてもらうことになった。

そう、ケーロクを手放すことにしたのだ。

つまり、俺の『ハイスピードラン』はいったん幕になる。いや、ユリシーズだって『のんびりだけ』のつもりはないけど、SSの世界を知ってしまった以上、200以下のワインディングをハイスピードとは言えなくなってしまったわけで。要するに、すっ飛ばしてもハイスピードとは言わないってだけ。

俺自身は、別になにも変わらない。

 

時間が来たのでタクに別れを告げ、三人で不動産屋に向かう。

つっても見に行った家は、二箇所どちらも気に入らなかったんだけど。

日曜つぶして行ったのに、残念。

 

帰ってきたら、あとはいつもどおりダルダル。

各自、好き勝手なコトをしながらすごし。

夕方には、柏に新しく出来たピザ屋からデリバリ。

ナオミとGOがえらいたくさん喰ってたので、ココはかなり美味いはずだ。

いや、俺ももちろん美味いと思ったけど、『俺の美味い』なんてレヴェル低いから。

ともかく、サルバトーレ・クォーモはオススメ。

 

腹いっぱいになったら、GOはネムネム。

ナオミはPCの前に座り、俺はまたも銀英伝の動画。

やがてGOが起き上がり、「帰るのめんどくさい」とブツブツ言いながら帰っていった。

 

そんな週末。

 

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