2011.01.28 美味い酒

 

「金曜日、かみさんちに遊び行っていいですか?」

そんなメールが、茨城の暴れん坊、よしなしから送られてきたのが数日前。

んで、当日の金曜日に仕事してると、終わり間際によしなしがやってきた。俺がさんざん、「家で仕事させるな」と文句言ってきたので、「治療してもらおう」と言うハラがあるときは、黙ってても整骨院の方へ顔を出すようになったのだ。ま、患者への教育力の高さは、俺の売りだからね。

長く休み取っても、ウチの患者さんはビタイチ文句言わないつーか言えないし。

 

んで、よしなしを治療したら、ユリシーズとGSで柏の俺んちまで。

いつもよりはオトナし目に、裏道をひょいひょい走って家へ向かう。途中の信号待ちで、よしなしが苦笑しながら、「テールランプがまぶしい」つーんで、こっちも笑いながら、「おめーのHIDのがよっぽど眩しいっ!」とやり返したり。笑顔で走ってれば、家なんかあっという間だ。

家に着くと、すでにろろちゃんが来ていた。

 

社外のマフラーに交換した、ろろちゃんのBMW。

 

まずは風呂に入り、さて、呑んだくれようか。

今日の肴は、ろろちゃんが買ってきてくれた、『サイボクハム』のハムと肉。

焼肉プレートのスキマがちょっとでも空くと、ナオミさん、すかさず肉を足す田舎のばあちゃん状態。「おめーよ、いいから座って落ち着いて喰えよ。それともアレか? あるだけ肉を焼いちゃって、役割を終わらせてからゆっくり呑もうってか?」つーと、フツウに「うん」と答える、我が相方。

面倒見がいいのは評価できるが、それもメンツによる。

「誰も世話焼けたぁ言ってねーべな。喰いたきゃ勝手に焼いて食うから、おめーも好きにしろ」

つわけで、そのあとはナオミも『喰って飲んで』に専念。もちろんこちらも、負けじと呑んで喰ってしいしい、バカ話やちょっとアカデミックな話に花を咲かせる。アカデミックつーか、栄養学とかそんな感じの話だったか。ま、みんな健康には気を使わなきゃならん年頃だしね。

哀しいけどこれ、現実なのよね。

 

納豆がいかに優れた食品かつーのを、まるっきし聞く気のないよしなしに延々と聞かせてると。

ウチの玄関の扉が、トツゼン、ガチャガチャと音を立てる。こんな風に、『ココのカギが開いてる前提で入ってこようとする』のは、ヒャクパー俺のダチに決まってるので、ニヤニヤと笑いつつ、「だれだ?」とつぶやきながら扉を開けると、 開けた先にはでっかいオトコが立っていた。

群馬のキチガイクルーザ乗り、eisukeさんだ。

「おぉ! いらっしゃい! 寒くなかったすか?!」

「いやぁ、あんなフリされたら、来ないわけには行かないじゃん?」

何のコトかつーと、mixiのボイスでeisukeさんが、「要らん仕事させられてる」とぼやいてるのを見て、「んじゃ、柏には来ないんですか?」とアオってみたら、速攻で釣れたと言うわけだ。ゆっちょむのセリフじゃないがクルーザ乗りは基本的にちょろい。アオるとすぐ乗る。ちょろすぎ。

もちろん俺も含めて、な。

 

シールドが真っ白に曇るほど、クソ寒い中を走ってきたeisukeさん。

自分用の缶ビールを買ってきてるのだが、すっかり冷えちゃっててビールなんぞ呑めるとは思えない。なので、正月に弟が持ってきてくれた樽酒、『賀茂鶴』を湯飲みに注ぎ、電子レンジで熱燗をつけて渡す。するとヒトクチ呑んだeisukeさん、ニヤっと笑って

「うめぇ! これはうめぇ」

と喜んでくれた。手放しの喜びように、こっちも嬉しくなって、てめぇの酒を燗つけちゃぁ、ガンガン呑んだくれる。つっても、せっかくeisukeさんまで来てくれたんだし、ここで泥酔してつぶれちゃもったいないので、一応、おとなしくセーブしながら呑んだ。

かみさん、ちょっと大人になった(もっともっと大人になりましょう)。

 

ナオミが豚汁うどんをつくって、さらにeisukeさんを暖める。

「美味いなぁ。芯からあったまるなぁ」

「もちっと早く来れば、ろろちゃんの買ってきてくれた肉があったんですけどね」

「えぇー! とっといてよー!」

「だったら、先に連絡くださいよ。急襲とかするから、喰い逃すんですよ」

「だってさぁ、その方が面白いじゃん」

俺の周りには、『ウケるために色んなものを犠牲にする』人間が多すぎると思う。

 

ナオミが見つけて、ろろちゃんが即購入した、スピーカ付きパーカー。

「これさぁ、紐が長すぎるんだよねぇ」

なんてろろちゃんのインプレを聞きながら、「俺も買おうかなぁ」なんて考えてると、携帯の着信音が響いた。「誰かのケータイが鳴ってるよ……ってああ、アタシのだ」と、かわいそうな人間ぷりを発揮しながら携帯を開いたナオミさん、眉をひそめて

「あれ、管理人さんだ。もしかしたら、バイクの置き方かもしれない」

と電話に出る。案の定、『バイクの置き方が、翌日の工事に影響する』的な話だった。つーか、管理人さんの中では、『この周辺で単車的な何かがあったら、とりあえずかみに連絡』と言うコトになってるらしい。ま、それは確かに100パーセント間違いないんだけど。

 

「みんな、申し訳ないけど、バイクを動かして」

ナオミさんの指令によって全員がキーを持ち、自分のバイクのところへ向かって、エレベータに乗って降りてゆく。俺もなにか手伝おうと、一緒に降りていったのだが、エレベータに乗った瞬間、思わず吹き出してしまった。ゲラッゲラ笑いながら、カメラを取り出すかみさん。

「ぎゃはははっ! なんかものすごく、画的にダメだ」

左から群馬の巨人、埼玉の天才、茨城の狩人。

写真撮影は、こんな連中と一緒に密室へ詰め込まれて泣きが入ってる、千葉のテロリスト。

オモテに出たら、いつもの場所においてある単車を、駐輪場へ移動。

よしなしのGSが、キーをひねらないとブレーキの効きが悪いことにビックリしたり、eisukeさんのVTXを眺めて、「うぉーやっぱVTXはいいなぁ。クルーザ買うなら、やっぱコレだな」と再認識したりしつつ、段差があって入れづらいウチの駐輪場に、みんなの単車をつっこむ。

「にゃははは、こうやってみんなの単車が並ぶと、なんかいいねぇ」

などと、能天気なセリフをはきながら、寒空の下、みんなで単車談義してると……

すとととととととととととっ!

三台のバイクがこちらに向かって走ってきた。

「おいおいおい、なんだなんだなんだ?」

驚く我々の元にやってきたのは通称ゴキバイ、原付オマワリだ。

「あーすみません、このあたりでケンカがあったという通報があったんですが……」

「見ての通り、してませんよ。仲良くしゃべってますが」

「ですよねぇ……いや、すみませんです。おい、あっちを見てみよう!」

来たとき同様、あっと言う間に退場する、黒い三連星。

しばらく顔を見合わせた俺たちは、やがて盛大に吹き出した。

「ぎゃははは! そりゃまぁ、このメンツを見たら『ああ、これだ』と思うだろうねぇ」

「間違いなく、乱闘してそうな顔ぶれだからねぇ」

ゲラゲラ笑いながら部屋に戻り、そのままバカ話&大宴会に突入。

 

呑み疲れてグダグダしてきたところで、ろろちゃんがROCK TUBEを操作して見始めた、YOU TUBEの事故動画を見ながら、歓声を上げつつ呑んだくれる。さらに、『ナオミさんを喜ばせよう』という大義名分をかかげたろろちゃんを筆頭に、ナオミへ嫌がらせを仕掛けて、みんなで大笑い。

有名なMEGWIN TVの北海道ツーリング動画を見たりして、ダラダラと楽しくすごす。

今回、俺は潰れずに頑張ろうと、ひそかに決心していた。なので、途中で呑みすぎを自覚したと同時にコーヒーやお茶に切り替えて、記憶や意識を保ったまま、楽しく呑んだくれた。とは言え基本的にはガブ呑み大好きダメ人間なので、日付が変わるころには限界。

「俺、明日も仕事なんで、もう寝ます」

みんなにアイサツすると、ベッドにもぐりこんだ。

 

明けて翌朝。

いつもの時間に起きてみると、みんなまだ寝てる。なので起こさないように用意をしていたのだが、eisukeさんが目を覚まして、「おはよー!」「あ、おはようございます」すると、よしなしも起きてきた。そこでちょろっとしゃべりながら、いつも通り10分で準備を済ませて出発。

「いってらっしゃーい! 仕事頑張ってねー!」

見送られて部屋を出る、朝から家にダチが居てゴキゲンなかみさん

ニコニコでユリシーズをまたぎ、仕事へ向かった。

 

実は水曜日くらいに、「土曜の仕事がハネたらそのまま房総へ向かい、鹿野山の九十九谷公園に行って夕日を写真に撮ろう」と計画していた。なので仕事が終わった段階で、『みんな帰って誰も居なければ』房総へ、誰か一人でも残ってたら、家に帰ってグダグダしようと決める。

んで、クソ忙しい土曜の仕事をやっつけ、整骨院を閉めたらナオミに電話。

「みんな、帰っちゃった?」

「三人とも居るよ。みんなでラーメン食べに行ってる」

となれば、帰って昼日中から呑んだくれようじゃないか。

家に帰りつくと、みんなの単車が昨日と同じ状態で置いてあるのが、なんか妙に嬉しい。

わざわざそばにユリシーズを突っ込んで、写真を撮ってみたり。

いそいそと部屋へ戻ると、「おかえりー!」の声が迎えてくれる。

「どうせなら、かみさんの顔を見てから、帰ろうと思ってさ」

嬉しい話だ。

 

さて、それじゃあ気合を入れてグダグダしようじゃないか。

今日、帰るみんなはコーヒーやお茶で、俺はもちろん我が家のハウスワインの白、『牛久ワイン』をひっぱりだして、昼間っからガンガン呑んだくれる。ちなみに赤はもちろんオーストラリアの雄、ウルフブラスのカベルネソービニヨンだ。どっちも美味いから、ぜひ、呑んでみて欲しい。

俺とナオミの好きな味なので、当然、イッコも甘くないけど。

 

今回のろろちゃん、やたらナオミに気を使う。

いや、普段も普通に使ってくれてるんだけど、今回はワザと変な方向に使うのだ。しかも、得意の妄想を織り交ぜた『ろろワールド』を展開するので、ナオミは苦笑、俺やeisukeさん、よしなしはただただ、爆笑するしかない。

「かみさん、ナオミちゃんがさぁ、城のプラモデルを買って来いって言うんだよ」

「ろろちゃん! そんなこと言ってないでしょー!」

「でも見つからなかったから、これからネットで探すよ」

「ぎゃははははっ! 明らかにもてあます系のモノを押し付けようとしてるだろ、それ」

「ああ、これはいい。1メータの大和のプラモだったら、ナオミちゃんもきっと喜んでくれるよね」

「いーらーなーいー!」

こんな風に、たんたんと真面目な顔で、妄想と現実をごちゃまぜにして話すのだ。

わかんねーヒトには、まったく意味がわからないだろうけど、そういうのが好きな人とか、ろろちゃんワールドに慣れてるヒトは、簡単に腹筋を千切られるので注意が必要。俺が努力で創作するタイプだとしたら、このヒトは紛れもなく天才。天から授かった才能で世界を構築する。

だから飽きっぽいんだけどね。

 

バカ話は延々と続き。

「ダメだ。このまま居たら帰れなくなる! もっと話したいんだけどなぁ」

eisukeさんが嘆きながら立ち上がり、いつもの穏やかな笑みを浮かべて帰って行った。そのあとしばらく、みんなでバカ話したりマンガ読んだりしつつ、やがてよしなしとろろちゃんも立ち上がる。牛久ワインですっかり出来上がった俺も立ち上がって、皆を送り出したところで。

二日に渡った(二日目は俺しか呑んでないけど)呑んじゃうもん倶楽部も、無事、終了。

呑んで騒ぐのが大好きな俺が、酒を控えてさえ長く話してたい。そう思えるような楽しい連中との笑いに満ちた宴会は、そのくせ驚くほど自然にフェードして終わる。もちろん、後ろ髪ひかれる思いはあるけれど、どうしても、『このまま終わりたくない!』とは思えないのだ。

なぜなら、この連中とはこれからも、ちょいちょい呑むことがわかってるから。

それは予定でもなく、確定でさえない。

『俺が、あるいは他の連中が死ぬまでは、息を吸うように自然に行われること』

彼らと呑むってコトが、そんな風に思えて仕方ないのだ。

 

そんな風に思える連中と、『呑んだくれられる喜び』をかみ締めつつ。

さて、つぎは誰とドコで、どんな美味い酒を呑もうかね。

 

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