Buell
XB12X <2007> | XB9R <2003> |
XB12X
はじめに、断っておくことがある。 俺は、ユリシーズを買って500キロにも満たないうちに、事故を起こして大破させた。そのあと、ライトニングのフロントフォーク を組んである。つまり、『まともなユリシーズに、ほとんど乗ったことがない』と言っていい。なので以下のインプレッションは、非常に変則的なものとなる。 ユリシーズを買おうという人には、イッコも参考にならんが(俺のインプレは元々そうだが)、ビューエルというメーカの単車に『共通するモノの片鱗 (へんりん)』くらいは書けると思うので、ニュアンス的な参考にしてもらえれば、そして、少しでも役に立てばと思う次第である。 なお、『ニュアンス的な参考』の意味は、俺にもよくわからない。
■外観 ユリシーズの外装が、他のXBシリーズと大きく異なるのは、フロントスクリーンだ。 後継機XB12XTよりは小さいが、他のXBに比べれば大きなスクリーン。 このスクリーンは、高速での疲労をかなり軽減してくれる。 XB12XTと自分のスクリーンを見比べたとき、「ずいぶん小さいスクリーンだな」と思ったのだが、今にして思えば、それでも充分にウインドプロテクションしてくれてたようだ。あえて二枚重ねになってるから、風の巻き込みも抑えられて居住性も高い。
ライトニングの顔だと。 高速道路で160スピード(1スピード=1/2時速)を超えると、首への負荷がかなりキツい。 ベタ伏せでメータ読み180が限界か。少なくとも俺は、それ以上出したくない。 ところが、それがユリシーズの顔だと、なんとか200まで引っ張れてしまう。もっとも、XBシリーズが〜と言うよりビューエルそのものが、そもそも高速道路をすっ飛ばすようなキャラクタではないので、ハナから200以上のことは考えなくていいと思う。 サーキットユースなら話は違ってくるんだろうが、そこは俺には関係ない。
ちなみに後日、XT用のスクリーンを手に入れた。 このトールスクリーンだと、巻き込みやフレは多少あるものの、基本的にXB最強。 どこまででも走ってゆきたくなる。
外観でもうひとつ、他のXBと違うのがシート。 足つきの話はおいといて、他XBの追随を許さないのが、シートの完成度と積載性だ。 長く乗っても疲れない上に、スポーツライドで動きやすいこのシートは、XBどころか他のバイクと比べても遜色ない。三段階に動くバックレストも、上の方が柔らかくなってたり、ロック機構がキーひとつ(厳密にはキーじゃなくてもいいのだが)で簡単に動かせたりと、よく考えられている。 タンデムライダーの居住性も高いから、国産ネイキッドから乗り換えても、違和感はないだろう。 もちろん、『振動以外は』だけど。 総じて、ツーリングマシンとしては、かなり使い勝手がいい。
■エンジン 空冷OHV、2バルブのV型二気筒、1200cc。 ビューエル製のサンダーストームユニットは、6600回転で100馬力を搾り出す。 このトルク型のエンジンは、『一本のクランクピンを、二本のコンロッドで共有』する、ハーレィ独特のレイアウトを受け継いでいる。当然、いいだけ振動するのだが、 豪快なラバーマウントのおかげで、3000回転以上になると振動は激減。 普通のツインスポーツ並みに押さえられてしまう。 『アイドリングで振動』して『高回転でスムーズに回る』そのテイストは、実際に体感してみると、やたら気持ちよく、非常に楽しい。信号待ちでドルンドルン震えてると、まるで生きてるように思えてしまうし、ぶん回せばストレスなく一気に吹け上がる。 本来、相反するはずのテイストを一台のユニットに閉じ込めた、珠玉のエンジンだ。 もちろん大排気量車は、多かれ少なかれそう言うテイストがあるけれど、中でもコイツはかなり秀逸なデキだと思う。さらにコイツは、『エンジンをテイストで語るのが嫌いなヒト 』も満足させる。カタログスペックこそ100馬力だが、6600回転で発生する100馬力なのだ。 高回転まで回しきらないSSより、峠で使いきれると言っていいと思う。
ただし、トルク型エンジンの常で、回せばパワーが出るってもんでもない。 回して走ればスポーティで楽しいが、絶対速度としては、回さなくてもそんなに変わらない。ぶん回すのは、単純にその方が楽しいから、ただそれだけと言っちゃっていいだろう。トルクエンジンで走るのに慣れているなら、回さずにトルクを生かした走り方で。回したければぶんぶんと。 どっちでも気持ちよく走れることだけは保証する。
■ハンドリング この単車の、最も語られるべきところだと、個人的には思っている。 基本的にはオーバーステア。 ただ、キャスターが立ってハンドリングが敏感なので、切れ込んでゆくと言うよりは、神経質で落ち着かない感じ。もっとも、コイツのワイドフレームよりさらに短いスタンダートフレームは、輪をかけて過激なハンドリングなので、それに比べれば、いくらかシットリしてると言えなくもない。 あくまで、『ビューエルの中では』の話だが。
短い低速コーナーなら、車体をあまり寝かせずクイックに曲がれる。 高速コーナーは、サスのセッティング次第だろうか。160で突っ込むくらいの高速コーナーは、破綻せずに曲がってゆけた。それ以上はハンドリングの前に、風圧がしんどい。重心が低いのと 、ハンドリングがクイックなのが絡み合って、一種独特のコツがいる部分もある。 XBの『クセ』と言うのはたぶん、このことだろうと思うのだが、俺はそんなに気にならなかった。 ただし、だらだらと曲がる長いコーナーは、クイックさが災いしてか、安定しない。 ハンドルを押さえ込んだりこじったりは要らないが、先を読みつつ、ある程度補正しながら曲がってゆく必要がある。じゃあ逆に、コーナリング中の軌道修正はやりやすいのかと言うと、今度は低い重心が邪魔をして、少なくとも昨今の国産SSのようにはやれない。 ま、俺がやれないってだけの話かも知れないけど。
特筆できるのは、車体からのインフォメーション。 潔(いさぎよ)く高速域をあきらめた分、サスペンションの動きや、トラクションを掛けたときの手ごたえが判りやすい。サスの柔らかい小さな単車に乗ってるときのように、股の下で動く車体の状況がつかみやすく、それに対してこちらが起こしたアクションへの反応も自然だ。 カテゴリで言ったら、大排気量の重量車なのだが、動きが軽量級なのである。 これがまるで、単車と会話しているような気がして、とてつもなく楽しい。
■オフロード スタイルから言ったら、やれそうな気がする。 そして、事実フラットダートなら充分に走れる。ノーマルサスのユリシーズなら、多少の凹凸もほとんど気にせずクリアできるくらいだ。実際、ノーマルサスで筑波山にある『ローリング止めの凹凸』を乗り越えた時は、ほとんどノーアクションでクリアできた。 ノーマルなら、長さなりの仕事はする。 ただし、フラットダートで飛ばせるのは、たぶんそれだけが理由じゃない。ビッグオフらしい乗車姿勢からくるコントロール性や、他のビッグオフにはない低重心。そして何より、このカテゴリの雄であるBMWのR1200GSより、30キロも軽い重量が効いてるんだろう。 だからサスがユリシーズより短い俺のXBでも、フラットダートをすっ飛ばすことができた。 しかし、当然と言えば当然だが、極端なオフロードを走破するのは難しい。 腹下マフラーは段差を超えるジャマになるし、17インチホイールではブロックタイアを履けない。 いや、履いてやってる人もいるにはいるが、あそこまで徹底的にカスタムするなら、国産SSだってオフロードを走れるって話だ。ストック状態でのハードなオフロードランは、まず無理だろう。むしろストックでオフロード走ってる人がいたら、それはカンペキに乗り手の腕だ。 ぜひ、教えを請いたいと思う。
この単車から感じられるものは、きっと乗り手の数だけある。 ビューエルは特に、その個人差が激しいと思う。だからこそ、マイナーで、高価(発売当時)で、そのわり仕上げは荒くて、トラブルも多くて、挙句の果てにメーカーさえなくなってしまったこの単車に、それでも大勢の中毒者がいるのだろう。 最後に、ビューエルのインプレを締める常套句で終わろう。
とにかく、機会があったら試乗してみろ。
| |
板乗りがXB9Rを買ったというので、試乗させてもらった。 ■外観 『フルカウルのアッパーだけ』をつけたような形のハーフカウルは、まるで、俺がガキのころ全盛だった、『金のない走り屋』そのまま。そして、Rの名に恥じない、セパレートハンドルに高いステップ。好みは別れるだろうし、正直、最初は俺も「どうだろう?」と思ったことは否定しない。 ただ、俺のドタマにはご存知、『速いとカッコよく見えるシステム』が搭載されているので、乗ってしまった今となっては、「うん、これもありだな」と思っていることも付け加えておこう。つわけで、兎にも角にもまずは跨(またが)ってみる。 ポジションは明らかにSS並みだ。ステップが高くてハンドルが低い。 これは、少し試乗してからの感想だが、ハンドルの高さが低すぎるように感じた。サーキットユースではベストなのかもしれないが、公道を走るならもう少し高い方が(俺の場合は)、より安全に走れるように思う。これ、アップハン入れたら、めちゃめちゃ面白いだろうなぁ。
■エンジン ぼるるるるっと走り出すと、トルク感には劣るものの、非力な感じはない。 国道へ出てすり抜けながら開けてみると、なるほど確かに面白いエンジンだ。あくまでイメージだが、『12のエンジンの圧縮比を下げた』って感じ。回転の軽快さが強く印象的に残るからか、アンダーパワーと感じない。『コレはこう言うエンジン』と納得してしまう。 ただし、『9Rの』じゃなく『この機体の不具合』があって、それが残念だった。 社外マフラーとレーシングモジュールを入れているそうなのだが、高回転のセッティングが今ひとつで、5000回転以降が『回ってるだけ』になってる。せっかく、途中まで気持ちよく加速してるのに、そこから先がフン詰まりなのでストレスが溜まる。 ま、確かに上を薄めるのは怖いと思うけど、ナンボなんでもこれはなぁ。 ビタっとセッティングが出れば、空冷OHVとしては限界近くまで回るユニットだけにもったいない。
そのまま市街地を抜けて、ちょっとツイストした場所へ。 「荒れた細かいツイストこそ、ビューエルの真骨頂だろ」と、期待が高まる。 ■ハンドリング 最初はリーンウィズで曲がってみる。 と、初めてビューエルに乗った時のことを思い出した。一年2万キロ乗ってる俺に、それでも『あの最初の衝撃』を与えるハンドリングなのだ。「見た方へ曲がる」てのは本来、ハンドリングの素直な単車に使われる言葉だが、コイツにはこの言葉がよく似合う。 ネガポジ、両方の意味で。 とにかく、カンッペキなオーバーステア。ケツのカチ上がった俺の12Xとタメか、下手すりゃそれ以上に極端なオーバーステアで、チンタラ乗ってるとバンクなんかしちゃくれない。『ガンと寝かしてぐーっと曲がる』つってる、『ガン』くれぇのトコで、もう、向きが変わってる。 ハンドルこじれば、ムリに寝かすことは出来るだろうが、あんま意味はないだろう。
今度はリーンウィズからケツを半分ほど入れつつ、先ほどより進入速度を上げる。 ブレーキリリースと同時にバンク。リアのトラクションが抜けないよう、ピッチングを意識しながら慎重かつ大胆にアクセルを開ける。丁寧に乗れば、「12Xのイン側を走れるンじゃねーか?」と思ってしまうほど、クイックに向きを変える。 そうして乗ると、ものすげぇ過敏で過激な、面白いハンドリングだ。 「面白いけど、こらぁ疲れるなぁ」 下半身のホールドを意識し、腹筋背筋で上体を支え、とにかくハンドルをフリーにしてやる。そして積極的にトラクションをかけるため、速度を上げる……か、あるいはサスを抜くか。あとは、基本どおりの操作を、より正確に、より高速に処理してやる。 ぼやっと乗ると、ぼやっとしか走らない。 そんなハンドリングだ。 俺の12Xもケツ上げてからオーバステアが強く、過敏になっていたが、9R……つーかスタンダートフレームは別物だ。コレで楽しんで走れるヒトは、ワインディングだと、ワイドフレームじゃ物足りないかも知れない。そのくらい過激で面白いが、そのぶん気が抜けない。 俺のようなウカツ者には、ワイドフレームのユルさが優しくていい。
Rの名に恥じない、硬質で男っぽい単車だと思う。
|