The 71st big machine club

2009.01.25 第71回でっかいもん倶楽部 in 東京

―タイア交換ブルース―

 

宴会してるときに、ケーロクのタイアが終わりそうだと話した。

そしたらじゅんが「そんなの甘い甘い。俺のリアタイアなんて、スリップサインどころかケースが出掛かってますよ」言うので、「じゃぁスリップサインが出てるタイアでよければ、あげるよ」つー運びになった。で、宴会開けの今朝、10:00ころだったか、のこのこ起き出す俺。

前日泊まってったAGLAも帰り、じゅんがひとり、バイク雑誌を読んでいた。

俺も一服つけながら、メールのチェックなんかをして、11:00ころだったかな? じゅんとふたり、ヤツの家およびスピードスターと言うタイア屋さんへ向かって出発した。国道6号線に出て、じゅんの先導で東京へ向かう。言ってもこっちはケーロクで、じゅんはアドレスV125だ。

「ついていくの、かったるいだろうなぁ」

と思っていたのだが。

走り出してすぐ、その考えを改める。たしかにアドレスは100くらいしか出ない。だが、逆に言えば100は出るのだ。そして操るのは変態じゅん。この組み合わせをナメていたことを、俺は強烈に思い知らされた。じゅんのキチガイ、とにかくブレーキかけないのだ。

バッシバシすり抜けてゆくアドレスの姿に、軽く感動さえ覚えながら後ろを走る。

「うっわ、そこ行くのかよ。鬼だな、こいつ」

こんなセリフをヘルメットの中で何度も吐きながら、東京に入った。とたんにじゅんの速度が落ち、穏やかな巡航となる。するとすぐ、白バイが見えた。なるほどとうなずいて、じゅんの後ろからのんびりと走ってゆくと、まぁ白バイに会うったらないね。改めて「東京には住みたくないなぁ」と思った。

 

そんなこんなで、じゅんの家に到着。

じゅんがGSX-R750に乗り換えてるあいだに、教わった番号に電話をして、在庫の有無と作業のあき具合を確認する。すると時間は大丈夫だが、パイロットパワー無印の在庫がなく、2CTだけだとのこと。だったらと、次に入れる予定だった016の在庫を聞くと、これはあるとの答え。

なので今回は016を入れることにした。

R750に乗り換えたじゅんに引き連れられて、スピードスターへ向かう道すがら

「かみさん、バイク交換してみます?」

てな申し出に、イチも二もなくうなずいて信号待ちで乗り換え、R750にまたがって走り出した。と、クラッチのミートポイントがずいぶんと近い。「じゅんは奥まで握るのが好きなのか」と確認しながらアクセルを開けたところで、また、驚かされる。

エンジンは回るものの、なにやら車体が前に出ないのだ。

よく言えば穏やか、悪く言えばちょっとかったるい感じで、ガラの大きさと相まってツアラーみたいなイメージのR750に驚きながら、まわすと爆音を響かせる『ちょい古』モンスターを走らせる。じゅんのやつ、このマシンでアレだけ速いんだから、最新の1000なんか乗ったら手がつけられないだろう。

できればずーっと『ちょい古』でいて欲しいものだと、改めて思ったね。

 

渋滞する道をすり抜けていると、突然、おっさんの乗ったクルマがスタンドに入るためだろう、左へ曲がろうとして、じゅんと接触しかけた。気づいたじゅんが停まってから、ワンテンポ遅れてギリギリで停まるおっさん。怒ったじゅんはオンオンと二三度レーシングしながら、おっさんをニラミつける。

目の前で始まった楽しげなイベントに、思わずニヤつく俺。

ま、絵面だけ見たらどっちも悪いんだけど、じゅんは完全に停止してたわけだから、もし接触してればおっさんの方に非がある。「そのときは、他人のフリして証言してやろう」と思いながら、興味深く成り行きを見守っていたのだが、どうやら接触してなかったようで何事もなく発進。

信号待ちで停まって、ふたりでゲラゲラ笑った。

 

なんつってるうちに、あっという間にスピードスターへ到着。

この外人のおっさんは、BMWのR1200GSに乗ってた。おっさんはGSに乗るものなんだろうか。

久しぶりに近くでGS見たけど、やっぱアホらしいくれぇデカいね。見た目こそオフロード的なスタイルはしてるけど、あんなんでオフロードを走るのは、少なくとも俺は願い下げたい。『フラットダートをずーっと走る』とかなら、良さが感じられるのかもしれないけどね。

 

それはともかく、驚いたのがじゅんのR750のミラー。

身体で隠れちゃうから、「さぞかし見づらいだろう」と思ってたのだが、意外に後ろ見えるんだ、これ。

もっとも、俺のケーロクはウインカ一体式だからミラー換えるとウインカも換えなきゃならないので、俺はつけないと思うけど。最初はウインカ一体式のミラーって好きじゃなかったんだけど、乗っちまえばアバタもエクボ。「わりとカッコいいじゃん」とか思っちゃうんだから、人間ってのは単純だ。

「人間が、ではなく俺が」って話もあるにはある。

 

さて、タイア交換をしてもらう間に、昼飯を食いにいこう。

と思って店の近所を歩き出したのだが、日曜日の昼だからか、暖簾の出てない店が多い。やっと開いてる店を見つければ、すし屋。「寒いから、あったかいものが喰いたいなぁ」と思ってたので、もしも他になければココへ入ろうと決めて、もう少し先まで探してみる。

すると、蕎麦屋の暖簾が出ていたので、ふたりでそこへ入った。

そばだけじゃなく色んなメニューが出てたから、夜は地元の飲み屋さんになるんだろう。そんな感じの店で、じゅんはイカフライ定食、俺は昨日の流れから鴨せいろを注文して、一服つけながら待つ。俺がじゅんのアドレスでの変態走りを賞賛する。そして、じゅんの

「今日は俺の本気を見せましたよ」

の言葉に大笑いしながらも、さて、このあと、どうしようか。

言ってもふたりとも、「寒くたって単車に乗るぜ」ってなキチガイだ。ここまで軽く走ってくるうちに、走りたいモードに火がついてるのは当然の話で、筑波に行くか奥多摩周辺に行くか、楽しい悩みを展開する。その時じゅんがジュンタローに電話したが、残念ながら仕事中らしく、出なかった。

ま、今にして思えば、出なくてよかったのだが。

 

飯を食ってソバ屋を出、スピードスターまで歩いてゆく。

店の前に来ると、俺のケーロクがすでに表に出してあった。「お、早いなぁ」と中をのぞくと、ちょうど今、じゅんのリアにケーロクから外した002(スリップサイン仕様)を、取り付け終わったところだった。良いタイミングだと喜びながら、まっさらの016を履いた愛機を眺める。するとじゅんが、

「おー! 新しいタイアだー! いいなぁ」

「さすが新品、つるつるだな。こりゃ、切れるように転べるぞ、きっと」

「ひと皮ムくまで、ゆっくり行きましょうね、かみさん」

などとダベりつつ、会計を済ませてオモテに出る。ヘルメットをかぶってから、行き先を決めてないのを思い出した俺たちは、店の前でこの先の予定をちょっと相談した。

「どこ行きます?」

「じゅんがさっき言ってた、大月だっけ? そこで良いよ」

「でも、時間はあるし、筑波の方でも大丈夫ですよ?」

「筑波だと、近いから助かるかな」

「それじゃ、筑波にしましょう」

てな感じで行き先も決まり、店の前でUターンするじゅんの後ろについて、俺もUターン……

 

すぱっ! がしゃん!

 

はい、ありがとう。

忘れたころにやってくる、気軽なわりに被害のでかい小ネタ、名づけて『新タイアすっ転びング』だ。最近、更新が少ないかみさんに、ネタの神様からの小粋な贈り物だね。まぁ、言わせてもらえば、こんなネタはマジで要らんけど。めっちゃめちゃ恥ずかしいっての。

スピードスターから飛び出してきてくれた店員さんに、メットの中で赤面しながら「大丈夫です」と応えてると、先に行ったじゅんが戻ってきた。どうしたんだ? といぶかしげな顔をするじゅんに「まさかと思ったら、本当にやらかしちゃったよ」とテレながら答える。

ところが。

そそくさと走り出し、信号待ちで停まろうとしたところで、事態はさらに衝撃の展開を見せた。

 

ぬかっ!

 

ああ、何年ぶりだろう。足の裏から伝わってくる、この感触。

RocketIIIで死ぬほど喰らった、『リアブレーキが抜けたときの感触』に気が遠くなる。じゅんにリアが抜けた旨を伝え、一度スピードスターに戻った。店の前でじゅんがリアキャリパーを点検してくれたのだが、どうやら『コケた時にボルトがゆるんだ』とかの単純なものではないようだ。

スピスタに洗浄用の水をもらいに行くと、店員さんが出てきて、ケーロクを店の中まで入れてくれた上に点検してくれた。するとどうやら、キャリパーが削れたときの衝撃で、隙間ができてフルードが漏れただけじゃなく、キャリパーのマウントステーが曲がってロータに接触している。

なのでとりあえずキャリパーを外し、新聞紙で養生してもらってシートバッグにつめた。

 

こうなってしまっては仕方ない。

じゅんに走れなくなったコトを詫びて、このまま帰り、バイク屋に行こうと思っていたのだが。

「じゃ、かみさん。ウチに行って修理しましょう」

こともなげにそう言うじゅんに、ありがたいやら申し訳ないやら、とっさに上手く答えることができない。スピスタの店員さんに礼を言って走り出し、フロントブレーキだけでじゅんの後ろに続く。家に着いたら、じゅんがレーシングスタンドだの工具を持ってきてくれて、そのまま青空修理が始まった。

コケ慣れてるし、キズも気にする方じゃないから、それほど動揺してたつもりはなかったのだが、いざ作業が始まってみると、なにやらアタフタしてしまう。意外と動揺してたらしい。テキパキと作業を進めるじゅんに指示されて、ようやく動いてるといった有様だ。

情けない話である。

 

アクスルを抜いてリアホイールを外し、キャリパーステーを確認してみると。

「あぁ、ココが曲がってますね」

「なるほど、こんなの直るのかなぁ」

「叩いてみましょう」

動かないように俺がふんずけて、じゅんが曲がったステーをハンマーでガンガンぶっ叩きながら修正してゆく。なっこのことを『ハンマーホイール』とか笑ってたら、こんだ俺が『ハンマーキャリパー』だ。もう、いじめるのはやめようと心に誓いながら、作業の手伝いをする。

確認しながらぶっ叩き、なんだかんだ、ほとんど曲がりを直してしまった。じゅん、すげぇ。

これはR750のキャリパーステー。頑丈なつくりだ。

 

んで、こっちがケーロクのステー。上と比べると明らかに薄い。

もちろん軽量化のタメなんだろうが、いくらなんでもヒトコケで曲がって欲しくはない部分だ。

や、まぁ、コケる方が悪いんだけれども。

 

仮止めしてみたらステーの方は良さそうだ。なので、じゅんがキャリパーのオーバーホールをしてくれてる間に、俺はエア抜きの準備やチェーン引き、アクスルの本締めなどの作業をする。作業をする、とか冷静にやってるっぽいけど、じゅんに指示されて動いてるだけだ。

キャリパーのオーバーホール中。

 

じゅんが八割、俺が二割くらいの感じで修理をすすめ、なんとか、走って帰れる状態になった。

青い矢印のスライダーのおかげでカウルにキズはない。だが、赤い矢印のスライダーは、ハヤブサのときと同じように、クランクケースカバーの取り付け部分を割りやがった。カウルとケースカバーを天秤にかけるなら、正直、俺はカウルが傷ついてくれた方がまだ良かったなぁ。

幸いエンジンオイルは漏れてないようなので、これはこのまま様子を見よう。

 

せっかくナリさんにもらったヨシムラにも、擦りキズ。ま、キズ自体は気にする方じゃないけど。

最後に空気圧を点検すると、フロントもリアもパンパンだった。

「これじゃぁ、すべりますよ」

なんてフォロー入れてくれたが、今回のは確実に、俺がウカツなだけだよ。腕なら練習したりで上手くなっていくけど、ウカツなのは練習じゃ直らないからなぁ。まぁ、40年近くもこれで生きてきたわけだから、今更なかなか直らないとは思うが、チットづつは直していかないとね。

自分だけならともかく、周りに迷惑かけるのはイカンよ(ホントに『40近くなって今更』です)。

 

とりあえず、せっかくの休みを走れないどころか修理なんかに使わせちゃったことを詫びる。するとじゅんは、いつものようににっこり笑って、気にするなと言ってくれた。手際の良い作業で修理してくれた上に、この極上の笑顔。うっかり惚れかけた。

そのあと少し話してから、「用品屋に買い物に行く」と言うじゅんに先導してもらって首都高へ。

首都高の入り口で手を振るじゅんに「ありがとう!」と叫んだ俺は、すっ転んだわりには晴れやかな気分で、柏を目指して走り出した。加減速を控えながら徐々にバンクさせて曲がったり、直線では思いっきり開けてタイアに熱を入れたりしながら、わりと楽しく自宅へ戻る。

リアブレーキを積極的に使おうとするのだが、パッドのあたりは出てないわ、エアはしっかり残ってるわ(エア抜きしたのは、じゅんじゃなくて俺だからだ)、あまり手ごたえを感じないまま帰りつき、いつもの駐輪場に入ってから、キャリパーとタイアの確認。

とりあえず、皮むきは終わったっぽいから、来月あたりからまた、ガンガン走りに出かけよう。

 

でも、そのまえにキャリパーステーとクランクケースカバーは、オークションで探してみようかね。

 

わざわざ東京までタイア交換に行って、余計なことをやらかしたが、総じて楽しい一日だった。

じゅん、今日は楽しかった&イロイロ助かったよ。

ありがとね!

 

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