The 30th small machine club
2008.07.21 第30回ちっちゃいもん倶楽部 in ケモノ道 〜ケモライド当日〜
イス寝の哀れなドンキホーテこと俺が、猛烈な二日酔いとともに目覚めると。
トモゾーの友人である当日参加組の面々がすでに顔を出していた。俺はむくみきった間抜けな顔のまま酒焼けした声で挨拶をすませる。彼らのハンドルネームなりを聞いてなかったので、便宜上、乗ってる単車で呼ばせていただくことにしようか。
白いメットのあごヒモに手をやってるのがKDXさん。KDX125つーある意味ケモライド最強のマシンを操るケモマスターだ。手前で、たぶん誰かのカメラに向かってポーズをしているセローの男がトモゾー。なにこの脚の長さ。俺がXR100またいだ時より余ってるじゃん。
右手前の青いDトラッカーがDトラさんで、右奥の赤いXRがXRさん。さっきのKDXさんと合わせてこの三人が当日参加組。んで黄色いDRにまたがってロード用のヘルメットをかぶりズボンのすそをソックスの中に入れてスニーカーと言う、ナメくさった格好の男がアオ。 TちゃんとNくん、irohaとMちゃんはお見送り。Mちゃんは二日酔いで死んでるけど。
当日組を散々待たせてようやく準備を済ませたら、さぁ! レッツケモライド! いつもの入り口からケモ道へ入ったら、雨の日だったらたどり着くまでに息が上がるような距離を、ほとんどトラブルもなく快調に進んでゆく。天気に恵まれたコンディションのいい道に、みんなご機嫌だ。新兵器SLを駆るよしなしなんて、背中から見てても機嫌がいいのが見て取れるほど。 なるほど、moto君が残念がるわけだ。俺もなんとなく残念な気分になってきた。ガケのひとつも落ちて見せりゃぁいいのに。むしろガケから落ちなきゃよしなしじゃねぇだろうに。などと、よしなしの背中に理不尽な不満をぶつけていると、突然、先頭が止まる。 何事かと行ってみれば、おぉXRさん! 本日の転落第一号じゃないか。 つっても、まだまだ始まったばかりだから、みんな充分元気。
落ち込んでるように見えても
ほらね。 引っ張り上げるのかと思ったら、そのまま下に落っことしてトモゾーが別の道からリカバリする。元気な男だ。その無限の体力には、驚きや呆れを通り越して、もはや神々しささえ感じる。変態ケモ魔人から、変態ケモ魔神へ格上げすることにしよう。 その魔神を先頭に元気よく進んでゆく……と言いたいところだが、二日酔いでヘロヘロの俺に、更なる敵が現れる。気温つーか湿度だ。草木の生い茂った山の中だから、かろうじて直射日光は喰らわないものの、じっとりと粘つく大気にじわじわ体力を削られる。 スポーツドリンクをガンガン飲むのだが、前日に痛めつけた胃袋は簡単にGiveUpしくさり、ちょっと隙を見せると内容物を逆流させようとする。けぽっ、とか嫌な音のするゲップを何度もしながら、足元のよさに救われ 、かろうじて進んでゆくことが出来る。
最初こそぎこちなかった当日組との会話も、山の中を一緒に走るうちに軽快になってくる。励ましあい、助け合いながら進んでゆくのだから、それも当然と言えば当然なのだが、こういうのは何度経験してもうれしいものだ。 ケモライドの醍醐味のひとつだと、俺は思う。
雨の日の半分くらいの時間じゃないだろうか。
あっという間に前半最大の山場、Vへ到着する。この間来たときから、まただいぶ地形が変わってて、どこからどう登ろうかと思案する。思案するつーか暑さでやられて息が上がってるので、とりあえず休憩する。そうするうちにも、次々とチャレンジしてゆく面々。
よしなしが右側から駆け上がり、最後にスタック。再チャレンジするまもなくヘルプが飛んできてくれて、そのままクリア。次にKDXさんが挑戦するが、盛大にマクれて木に引っかかった。リカバリして降りてきたKDXさんが休憩してるうちに、moto君が右からクリア。
マクれたKDXさん。でもこのあとのリカバリとかほぼひとりでやってた。この人も変態。
一回チャレンジして失敗したオーちゃんに、見本を見せてやるとばかりに同じところから駆け上がったトモゾーは、上りきったところでセローを放り投げる。無残にすっ飛びながらも、イッパツでクリア(?)してしまうところはさすがだ。カケラも見本になってないけど。 するとトモゾー、振り返って 「ね、こうやるんだよ」 ね、じゃない。 つーかトモゾーはとにかく元気。 「いやぁ鬱陶しいくらいテンション高くてゴメンねー!」 言われた日には、もう、苦笑いしかでてこない。moto君がすかさず『返事もしたくねぇ』と切り返すが、トモゾーにそんな言葉は届かない。ゲラゲラ笑ってバンバン走りながら、人のヘルプもバシバシこなす。これはホント、トモゾーの純粋に尊敬できるところだと思う。
XRさん、Dトラさんもそれぞれアタックし、オーちゃんやアオもヘルプされつつクリアしてゆく。俺も右から行って、最後は助けてもらった。足場がいいのに自力突破もしてないから、本来なら体力が余ってるはずなのだが、やはりこの暑さは堪(こた)える。 みんな登ったところで少し休憩したら、続いて長い坂を駆け上がる。 ちょいちょい引っかかったりするものの、大きなトラブルもなく順調に進み、水呑場へ。
水呑場で、休憩と早めの昼食。つっても俺は固形物なんか見たくもない状況だった。
オーちゃんも見たくなかったはず。だいぶんヤられてるね。
ずらり並んだケモマシン。
「うわぁ!」 急にKDXさんが悲鳴を上げると、リュックの中からビニール袋を取り出した。 『バナナが大変なことになってる』と、もはやバナナではないナニかの入ったビニールをつまんでしかめっ面をしているKDXさんに、moto君が大笑いしながら追い討ちをかけた。『KDXさん、それバナナじゃなくて生ゴミだよ』つーと、もちろんKDXさんも負けてない。 『トモ、コレあげるよ』のセリフに、笑いながら『いらねー!』叫んだトモゾーは、くるりと横を向くと、さっき自分のドリンクをあげたアオに向かって『アオ、それ一本、一万円だからな?』すかさず俺が『おぉ、安いっ!』と切り返すと、トモゾーは『でしょ?』とにっこり笑う。 なんつってたトモゾーが、腹を減らして『誰か昼メシわけてー!』と叫ぶと、アオが自分の昼メシを出し、受け取って喰い始めたトモゾーに向かって『トモさん、それ一万円ですから』一同、疲れを忘れて大笑い。こんなのもまた、ケモ道の楽しさのひとつだと思う。
KDXさんが、さっきバナナではない何かを取り出したリュックから、新たに何かを取り出す。 塩飴(シオアメ)だ。 普通なら不人気NO.1、いろんな飴を盛っておいても、コレだけが確実に残ってゆくだろうマイナーリーグ爆走中の飴なのだが、疲れた身体にコレがまた、びっくりするほど旨い。イッコもらって口に入れた瞬間『うまっ!』っと叫んでしまった。次回、本気で購入を検討しているのはここだけの秘密。
さて、後半はいつもの道ではなく、トモゾーの先導で別のコースをゆくことになった。
しかし、夏のケモのイチバンしんどいところなのだが、とにかく草が爆発的に成長してしまってるので、1メータ先を走る単車のテールランプが見えなくなるほど、猛烈に視界が悪い。走り倒してるはずのトモゾーやKDXさんが、道を見失ってしまうほどだ。
見失うたびに、停まってUターンや迂回を繰り返す。
そして、とにかく蒸し暑い。
単車を降りて、道を探しにゆくトモゾー。
特筆すべきは、ケモ初挑戦のアオだ。 ものすげぇアホなカッコのまま、見るのも初めての草の深い山の中をガンガン進む。
すると、このオーちゃんに貰った野球用のハイソックスが、だんだんオフロードブーツに見えてくるから不思議だ。トモゾーが名づけたこのブーツの名称は『キャプテン翼』。メーカーはもちろんミズノ。軽くて通気性はいいが、ディフェンス的に難があることは否めない。
この先をくだったところで、急斜面アタックするために順番待ちをしていると、まず、トモゾーが空を飛ぶようなイキオイで駆け上がり、イッパツでクリアする。おぉ! とその光景に見とれていると、次の瞬間、俺の目の前に、さらに幻想的な光景が映し出された。 ぶおん! と言うエンジン音とともに、ものすげぇ急斜面を駆け上がったmoto君。 バイクはサオ立ちになりつつ、斜面を一気に駆け上がり、そのまま後ろへ向かって美しい弧を描きつつ、パーフェクトなバック宙。同じく乗ってたmoto君も、きれいな放物線を描いて生い茂る草の向こうへ消えてゆく。一瞬おいて、がしゃっ! っと派手な落下音。 「うっわ、大丈夫か?」 思ってると、しばらくして『かみさーん!』と呼ぶ声がする。整骨師の俺を呼ぶと言うことは、怪我をした可能性が高い。『バイクが目の前で一回転するトコ、初めて見たよー』とかくだらない突っ込みを用意してた俺は、やってきたよしなしに単車を預けると、慌ててmoto君のところへ向かった。
左手をぶつけたらしいmoto君は、痛そうな顔をしている。 急いで診てみると、心配してた骨折特有の血腫は見当たらない。強めにぶつけた兆候で、少し気になる色をしてる場所もあるが、どうやら骨は大丈夫のようだ。とりあえず冷やすように勧めるのだが、『大丈夫です』とか『治りました』とか、どんだけ強がりだおまえは的な返事をするmoto君。 しかしコレは彼一流の気遣いなのだと思う。 怪我が原因で走りが終わりになってしまわないようにと気遣って、痛いのをガマンして大丈夫だと言ってるのだろう。本当は受傷後3時間から5時間して本当の痛みが襲ってくることが多いので、できれば無理しない方がいいのだが、ここは彼の男気を買おう。 もちろんそれを解っているトモゾーも、『治った』moto君を変に気遣ったりはせず、『いやーゴメンゴメン、motoさん。あんなヘタクソだとは思わなかったからさぁ。まぁ、俺はイッパツでクリアしたけどね』などと軽口を叩き、moto君もそれに『このくらいがちょうどいいハンデだよ』とまぜっかえす。 もちろん、一般的にはバカな話なのだが、それでも俺はこの連中が大好きだ。
少し休んだあと、俺たちはmoto君の飛んだ坂を迂回して、別の場所から登る。
熱と湿気に包まれながら、青臭い緑の中を走ってゆくと。
突然、ぽつんと滝が出現した。
滝をバックにダブルピースのDトラさん。
滝に打たれるXRさん。 俺ももちろん、滝の水を浴びて戻ってくる。 「お、修行僧が帰ってきた。修行は終わったの?」 moto君が痛みのそぶりも見せずに笑ってる。実際のところ俺はこの辺でもう、折った鎖骨の周りや肋骨の周辺が痛かったのだが、その笑顔に『修行終わった。悟り開いたよ』と笑って返した。同時に、『駐車場に帰りつくまでゼッタイ痛いと言わない』と強く心に決める。
トモゾーやKDXさんの先導で、草深い山を走りぬけ。
一度、舗装路に出る。 左のmoto君は、黙ってても左手が痛いことが見て取れる。その横のオーちゃんも死んでるし、さらにとなりのキャプテン翼も死に体だ。つーかこうして座ってても、アスファルトが熱くて、ケツを低温やけどしそうなイキオイなのである。まさに『フライパンの上』状態。
休憩してるのだが、暑さと照り返しで、あまり休憩にならない。
さてそれじゃぁも少し走ろうと、KDXさん先頭に、9台連なって走る。 やがてやってきたのが。
どうやら開発放棄されたゴルフ場(?)。 見たまんま、最高においしいシチュエイションである……のだが。 トモゾーにセローを借りてちょろっと走ったら、ガレ場に足を取られてガケに落ちかけたり、なんでもないところですっ転びそうになったり、自覚してるよりも身体にダメージがあるようだ。足の筋肉が痙攣し始めているので、スタンディングするのもしんどい。
元気なのはトモゾーとKDXさん、Dトラさん、XRさん。
歓声をあげながら、とっとと探検に出かけてしまった。
この手前のところで、オーちゃんとアオはノックアウト。昼寝に入る。
よしなしの新兵器、SLはケモ道にもってこい。後ろで見てても、すげぇ乗りやすそうだった。
俺とmoto君、よしなしも、しばらくは探検して走ってみた。 今回は今までに比べたらずっと距離の短いケモライドだったので、三人ともアタマではぜんぜん疲れてない。だが、暑さでやられたところに妙な疲労感が重なって、なにやら気力がわいてこないというのが正直なところだ。山の中より直射日光な分だけ、余計に疲れる。 結局、moto君と俺、よしなしの三人も、それぞれ昼寝状態に入ってしまった。
やがてトモゾーたちが帰ってきたところで、ちょっと早いけど今日は終わりにしようと言う話になった。KDXさんに先導してもらって、舗装路をしばらく走ったあと、そのままいつもの稜線沿いに入り、駐車場目指して並んで走る。心なしか稜線のペースも遅めだ。 やがて無事、駐車場にたどり着き。
トランポ組、自走組、それぞれ帰り支度を終わらせたら、本日のCrazy Marmalade ちっちゃいもん倶楽部は、明るいうちにお開きとなる。最高に楽しい宴会と、最高に楽しいケモライド。こんなゼイタクな時間をくれたメンバー全員に、俺は心からの感謝をささげたい。
企画してくれたmoto君。 道案内してくれたトモゾーとKDXさん。 バカどもと一緒に走ってくれたDトラさんにXRさん。 キチガイ装備で熱い走りを見せたオーちゃんとアオ。 たくさんの写真を撮って俺の更新を助けてくれた、よしなし。 楽しく飲んでくれた上に見送りしてくれた、irohaとMちゃん。 moto君を貸してくれた上に酔っ払いに付き合ってくれた、TちゃんとN君。
みんな本当にありがとう。
近いうちまた、酒呑んで、喋って、笑って、走ろう!
そして最後に、俺。
次回は宴会のときからプロテクターしておけ。
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