The 40th small machine club

2009.05.30-31 第40回ちっちゃいもん倶楽部 in D山

〜思いっきりケモライド(後編)〜

中篇はこちら

 

長いV溝の坂を登っていったmoto君が、途中で苦戦している。

XRやSLのようなトレール車は、すごく足つきがいい代わりに当然、ステップの位置が低い。なので、V溝のような場所ではステップが引っかかってしまいやすくなる。さすがのmoto君もこれには多少、苦戦を強いられたようだ。彼の場合、めったに単車から降りないから、余計難しいのだろう。

俺みたいにヘタクソは、とっとと降りて足漕ぎしちゃうからね。

 

moto君がクリアし、XRよりさらにステップの低いぼっちゃんが走り出す。

一番後ろの俺は、順番が回ってくるのに時間がかかりそうなので、メットを取って一服。

やがて様子を見に行ったよしなしやOちゃんが悲鳴をあげてるのを聞いて、俺も坂を上って様子を見に行った。んで、現場についた瞬間、思わず絶句する。

「こりゃまた、エグくなってるなぁ」

すべる粘土質の土はタダでさえスタックして削られることが多い上に、雨が降ればすべて溝の中に集まってきて川になり、その川がまた土を削る。人間と自然の共同作業は、いつの間にかこんな驚異的な土の壁を出現させてしまっていた。

「とりあえず、別ルートを探してみよう」

そう思って別ルートを行ってみると、走り始めてすぐ、粘土で滑ってすっ転ぶ。

何とかリカバリして再度挑戦すると、今度は上の方まで登ることが出来た。しかし、そこから先に進むのが、かなり厳しそうだ。なので結局、ちょっとバックして本来のV溝ルートに戻り、アタックを開始する。とは言え、moto君のように乗って行こうなどとはハナから思ってない。

俺は自分を知っているのだ。

 

速攻でV溝の上に足をかけ、

単車だけを前に進ませながら、何とかクリアしてゆく。

 

ようやくV溝を登りきり、「やれやれ、あとは水場で休憩だ」と思ってると、またも表情を変えたD山が我々の行く手を阻む。正確にはmoto君以外の人間の行く手を、だが。

右側の溝が今までのルートなんだが、そのまま行くとさっきより細いV溝になってて、とても走破できる状態ではない。少なくとも、ステップ位置の低いトレール車では難しそうだ。なので、moto君が造った迂回路を行くことになるのだが、これがまたなかなか難易度が高かった。

まず、すべる上にまっすぐな助走の取れない登坂。そのあと狭いスペースで車体を旋回し、ぬたぬたでまともにタイアの喰わないヌタ場から助走をつけて、もう一度短い登板。Vと溝で体力を削られた上に、もうすぐ休憩だと気が緩んでいたから、ここがなかなか難しかった。

トラタイアのOちゃんは、あっさりクリアしてたが。本気で、ホイール探す気になってきたよ。

 

なんとか全員クリアして、前半戦もようやく終わりを告げる。

脱出したかみさん39歳@汗だくヘロヘロ。

 

おもわず座り込む。タイアがドロでスリックみたくなってるね。

 

さて、ここでようやく休憩だ。

いつもの湧き水のある水呑場で、長めの休憩と昼食を摂る。

Oちゃんの昼飯は、

かつてパンだった板状の何かと、成分だけはオムスビと共通の何か。

 

俺は昼食を摂らずに、ポカリスエットで済ませる。

かなり天気がよくなってきて、暑さが心配だ。

よしなしはいつものようにタッパにオムスビを入れてるので、変形はまったくなし。それを見たmoto君に「あ、よしなしさんズルいなぁ」とからかわれて、ちょっと困ったように笑う。その八の字まゆ毛にS心を刺激された俺も、「プロテクターで、やけにガタイのいいエロ和尚に見えるな」といじめた。

休憩しながら気心の知れた連中とバカを言い、笑いあう。

楽しいねぇ。

 

さて、休憩しすぎるとダルくなるから、そろそろ出発しようか。

舗装路をちょっと登ったら、水のたまってる素彫りのトンネルを、びしょびしょになりながら越えてゆく。そこからしばらくケモノ道を走って、やがて後半戦最初の山場である『つるつる坂』に出た。手前の助走区間でいったん止まり、こちらを振り向いたmoto君。

「新しいバイクを転ばしたくないので、俺は速攻でヘルプ要請しますから」

と笑って走り出したのだが……

ヘルプ要請の合図であるホーンの音が、待てど暮らせど一向に聞こえない。

「おいおい、もしかして登っちゃったんじゃねーの?」

と半分冗談のつもりで言いながら、様子を見にみんなで登ってゆくと、なんと上の方からmoto君が歩いて降りてくるではないか。そう、つまり彼はイッパツでつるつる坂をクリアしてしまったのだ。つるつる具合が最高時の80%くらいだったとは言え、何とか立てる程度の、このつるつるの坂を。

「すげぇな、トラタイア」

moto君の腕もあるということは充分わかった上で、それでも、そうつぶやかずにはいられない。

 

つぎによしなしがアタックをかける。

さすがにブロックタイアはまともにグリップしてくれず、しばらく苦戦を強いられた。しかし、この日のよしなしは、いつもより数段ガッツがあった。簡単にヘルプを要請せず、休みながらも頑張って、徐々に車体を上に進ませてゆく。

坂の端っこの少しはマシな部分を使い、最終的にかなり上までゲインしてから、ようやくヘルプ。

お次は俺だ。

よしなしと同じ条件だから、同じところまで登ろうと頑張って走り出したのだが、はるか手前でスタックしてしまう。そこからよしなしと同じコースを取ろうとして、縁の部分に二三度トライするも、あえなく撃沈。しかたなく、つるっつるの本コース(?)をちょっと登って、そこでギブアップ。

さすがにここでは、土下座はしなかった。

次はぼっちゃん。

ガッツのある彼は勢いよくアプローチしてくると、俺よりも上まで一気に登る。あと一歩のところまでゲインしたところでスタックし、そこから先はヘルプで脱出。このとき俺は、ぼっちゃんのガッツを見せつけられて、ヘタレてた自分を反省する。タイアのせいにして甘えてたなぁ。

で、最後のOちゃんなのだが。

ブロックタイアでは行こうとさえ思わないつるつるの岩盤チックな場所を、冗談のようにするすると上りきって、イッパツクリア。Oちゃんと俺は技術的にほとんど大差ないと思うので、やっぱりタイアなのかなぁと、さっき反省した舌の根も乾かぬうちに思ってしまったり。

 

つるつる坂を上りきったところで、例の「ここが入り口です」の場所に出、そのまま下りコース。

グリップの悪い急な坂道を延々と下りながら、所々現れる難所を慎重にクリアしてゆくと、くだり最初のセクションに到着した。ぐいっと左へ曲がりこんだ急坂は、反対周りに登ってくるライダーのタイアに削られて、かなり深い溝になっている。

下りだと難易度自体は低いが、視覚的に恐怖を煽(あお)るセクションだ。

セクションにアプローチするよしなし。

アタック自体は慎重さが裏目に出て、けっこうハデにひっくり返ってた。

 

逆に俺はこの手の、『気合と勢いでクリアするところ』は得意なので(胸を張るところじゃありません)無事にイッパツクリア。さっさと先に行って単車を停め、カメラを持って引き返す。すると、Oちゃんが「怖ぇ〜!」と叫びながらアタックするところだった。

Oちゃんも無事クリアして、最後はぼっちゃん。つーか、この辺の順番は逆かもしれない。

 

ま、とにかくぼっちゃんも無事にクリアして、さらに先へ先へ。

 

雨のせいで全体的に難易度は上がっているのだが、ここまで走ってくるうちに身体が慣れて来ると言うか、動くようになってくるので、みな順調に走ってゆく。moto君以外はそれぞれ別々の場所で引っかかったりバランス崩したりするものの、大ハマリはせずに走りきり。

無事、第二休憩所である水場に到着。

 

疲労はあるが、身体が動く楽しさ、難所を走る楽しさ、ダチとバカ話する楽しさに笑顔が出る。

こればっかりはホント、やってみなくちゃ絶対にわからない楽しさだ。

 

綺麗な風景を楽しむため、ひとり水場でたたずむ39歳。

俺のリュックやmoto君のマシンなんかもそうだけど、濃緑に包まれた山の中では、自然色より反対色の赤の方が、鮮やかで美しく見える。オフロードマシンに派手な色が多いのは、そう言う理由もあるのかもしれないね。考えすぎかね。

ま、美しさはともかく、目立つ方がガケから落っことしたとき見つけやすくていいよね。

 

さて、ここらでコース的には後半も半ばを過ぎたあたり。

みんな楽しんでるし笑ってるけど、身体の方はそうもゆかない。思ってるよりずっと疲れてて、踏ん張れるはずの場所で踏ん張れなかったりが多い後半戦なのだが、たったひとりだけ、今までよりダントツに軽いバイクと走破性のいいタイアに変わった事で、体力をもてあましてる男がいる。

もちろんケモ鬼軍曹、moto君だ。

「あ、トライアル車が行ってるっぽいワダチがありますねぇ」

なんて言い出したかと思ったら。

 

あとでぽろっと漏らしてたが「思った通りにバイクを操れるから、疲れないし楽しいですね」だそうで、確かに今までの数倍も余計な動きを繰り返すその姿は、まるでトモゾーのようだ。そんな姿を見ていると、こちらもヘンな意地を張らず、素直に「トラタイア履こう」と思うことが出来る。

やっぱ楽しいのがイチバンだよね。

 

少し長めの休憩をしたら、さて、最後にもうひと踏ん張り。

全然元気なmoto君を先頭に、みんな楽しくケモノ道を走ってゆく。

俺やよしなし、Oちゃんはもちろん言うに及ばず、初挑戦のぼっちゃんも、もちろんヘロヘロに疲れてはいるけれど、やっぱり楽しそうだ。真夏ほど体力が削られない季節だとは言え、この根性には迷わず賞賛を送りたい。もっともmoto君は休憩のとき、

「いじめ足りないかなぁ。つーか俺、優しくなってますよねぇ。いかんなぁ……」

と笑ってたが。

俺は優しくていいと思うんだけど。なにが『いかん』のか、さっぱりわからないよ、moto君。

 

このあとも結構セクションがあるような記憶だったのだが、走ってみると意外とどうってことなかった。

一箇所だけ、ちょっとした下りとのぼりの複合勾配があって

よしなしとぼっちゃんが、二回トライをしたくらいか。

 

サクサクとケモノ道を抜け。

全線クリア。

最後はいつものように稜線に沿って突っ走り、全員、無事に帰着することが出来た。

 

帰着したら、一服しながら駄弁る。

納車翌日に、見事に残念なマシンの仲間入りを果たした、ぼっちゃんのトリッカー。

 

しばらく座り込んで歓談するも、ぼっちゃん以外はもう半周くらいなら出来そうな勢い。

「このまま、ここで一泊できるなら、もう一周くらい走れそうだねぇ、moto君」

「ええ、そうですね。ナイトランも楽しそうですね、かみさん」

などと笑いながら話していると、ぼっちゃんが「カンベンしてくれ」といった表情で笑う。しかしまぁ、初参加のぼっちゃんは疲れてて無理ないにしても、後半戦が思ったより楽だったのは確かだ。マシンを変えて楽になった俺やmoto君、Oちゃんだけじゃなく、よしなしも元気だったのだから。

ちったレヴェルアップしてるのかね。

 

つーか。

ウインカー割られて、ミラーも粉々にされた、俺のSLとか、

 

また、ハンドガードがぶっ壊れたよしなしのSL。

それに、タテ一回転してハンドルがずれたOちゃんのセロー、ドロだらけ傷だらけになったぼっちゃんのトリッカーなど、マシンの方がむしろ元気がなかった。いや、コイツらは走るために生まれて来たんだから、これだけ使い倒されればむしろ本望なのかな?(壊されるのは本望じゃありません)。

 

さて、いつまででも話していたいが、そろそろ撤収しようか。

みなはそれぞれ、さっぱりと楽な格好に着替えて、トランポにマシンを積み込む。

が、もちろん俺は自走なので、そのままの格好でテントの撤収。

荷物を片付けてSLに積み込み、全部の荷造りが終わってからハタと気づく、うっかりかみさん。山用にタイアの空気圧を落としているから、それを戻してやらなくちゃならないのだ。アタマをかかえ「エアポンプ、積み込んじゃったよ〜! 出すのメンドクセぇ!」と騒いでたら、ぼっちゃんが

「エアポンプありますよ」

と貸してくれた。

これがまた、かなり素ン晴らしいポンプで、サイズが大きいから空気を入れるのがすごく楽な上に、デジタルエアゲージがついてるので、いちいちゲージを差し込んで空気圧を確認しながら入れなくても済むのだ。かなりお気に召したので、これ、近いうちに買うね、俺。

 

よしなしも、すでに着替えて単車も積み込み済み。

一瞬、トランポのみんなが羨ましくなったが、俺はずーっと単車だけに乗ってきてるので、クルマでのんびりって言うのは向かなそうな気がする。実際に乗ってないからなんとも言えないけど、気が短い俺には、すり抜け出来る自走の方が性にあってるんじゃないだろうか。

やっぱり、単車用のキャリーカーとか、必殺の自作ホイールキャリアのが俺っぽいしね。

 

トランポ組も自走の俺も、それぞれ準備が整ったところで。

本日のCrazy Marmalade ちっちゃいもん倶楽部は、最後まで笑顔で終了した。久しぶりのD山、久しぶりの山中宴会、気心の知れた連中、初めて会ったのにそんな気がしない男、そして新しいマシン。楽しい要素がてんこ盛りで、最初から最後まで笑いっぱなしのケモライドだった。

月夜にしんみりと呑み、大騒ぎして呑んだくれ、ケモ道を走って、飛んで、こけて、笑って。

そこにある山、空に浮かぶ月や太陽、緑の木々、山を管理しているひと、バイクを造ったひと、酒を造ったひと、そしてもちろん一緒に呑んで一緒に走った最高にバカで楽しい連中。そのすべてに、心から感謝したい。素直にそう思える、本当にステキな時間だった。

やっぱり、ケモライドは楽しい!

みんな!

近いうちまた、山の中で遊ぼうぜ!

 

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