solo run

風に吹かれて

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2010.08.19 六日目(中編) 長野

―アルプスの中年 かみ―

前編はこちら

 

「どうせなら、アルプス越えをしたいなぁ」

などと無謀な独り言を吐きながら、二三キロ走った先で、19号を外れて256号へ。

 

256号は、最初こそ穏やかガラ空きで走りやすい国道だったが、すぐにうねうねし始める。

もっとも、観光に訪れたマイカーならともかく、こっちは、その曲がった道が好きで走ってる酔狂だ。ここ数日、いいだけ曲がり道を走っているが、もちろん飽きることもなく。曲がってるのは、むしろ大歓迎なくらい。もう、病気なら病気でいいよ。楽しいんだから仕方ない。

「そろそろ、県道8号線への分岐があるはずなんだけどなぁ……」

あった。8号線は太平街道って書いてあったが、なるほど太平高原ってのがあるのか。

サクっと曲がって走り出すと。

なるほどなるほど。まあ、やっぱりそうだよね。狭い林道チックな道になるよね。

大丈夫、予想してたから。

正直、太平街道は言いすぎだと思うけど。昔は街道だったのかな?

相変わらず、陽の当たるところは暑く、木陰は涼しい。

前後どころか対向さえいない舗装林道を、風に乗って走る。太陽は時々顔を出すが、基本的には曇り天気だ。胸のすく景観は望めないだろうが、そのぶん少しは暑さが和らぐ。せっかく楽しいんだから、気を抜かず、転倒や事故に気をつけて走ろう。

それと、単車ガケから落とすのにも気をつけてな。

 

狭い道をえっちらおっちら登ってゆくと、ちょっと開けた駐車スペースに出た。

どうやら展望所らしい。写真は撮ってないけど、近くに茶屋らしきものもある。

 

南木曾岳、乗鞍岳など、ここから見える日本アルプスの山々を説明してる木製の看板。

だが、残念ながら今日は見えない。

ここらまで上がってくると、気温はだいぶん低くなる。

とは言え、空気が湿ってるから、蒸し暑い印象は拭えないけど。

ここで一服してから、また走り出す。

普通は山にトンネルを掘るもんじゃないだろうか?

なんでこんなトンネル作ったんだろう?

コンクリのパイプが余ったのかな?(ゼッタイ違います)

 

「う〜む、陽が出てくると、やっぱり暑いなぁ。つーか、やけに蒸してるな。降ってくるのかな?」

 

降ってきた。

それも、土砂降り。

おまけにカミナリまで、がらんがらん鳴り出してる。

神奈川のカミナリなら、「元気なってよかった」つーとこなんだが。木曾だけじゃないだろうけど、山の中だと、カミナリのホンキ度が違うね。正直、めちゃめちゃ怖ぇ。ごろごろっ、ぴしゃっ! がらがら、どっかーん! えらい派手な鳴りっぷりに、ケツの穴がすぼまる。

動物としての本能的なナニカなんだろうか。

 

超ホンキモードのカミナリに、こっちも本気でビビリながら、ポンチョとカッパを出して雨仕度。

そうしてる間にも足元が、見る見る川になってゆく。

 

カッパの入ってた袋は、そのまま自作メディスンバッグのレインカバーとして活躍。

ちなみにポンチョの袋は、ゾウキンを巻いたETCにかぶせて、『即席のレインカバー』にした。

雨対策を整え終わったら、ガラガラおっかない音を立てるカミナリに首をすくめつつ、今夏イチバンの安全走行で、ゆっくりと太平街道を東へ走る。さっきは、「街道じゃねぇ」とか言っちゃって、ホントすいません。どうか命だけはとらないでください。

ま、命じゃなくて骨ぇ持ってかれるのも嫌ですけど。

 

すっかり及び腰になりながら、どうにかこうにか雨の太平街道を抜け切ると。

下は冗談みたいに乾いてるつーか、雨の降った形跡がない。どうやら、あの激しい雷雨は山間部だけだったようだ。それとも、雲が厚く垂れこめているから、これから降ってくるんだろうか? これから降るなら、雨対策はそのままにして走った方がよさそうだ。

飯田市内のコンビニで休憩しつつ考え、結局、雨装備は解かないで走ることにした。

ここから、中央高速と併走する県道15号を北上して、松川から県道59〜22とつなぎ、国道152号へ出るというルートを決めた。その152号には、平行して国道153号が走ってて、本来、ここらのメインルートはそっちらしいのだが、メインルートってことは混んでる可能性がある。

なので、わざわざ一本東寄り(山寄り)の、152号を走ろうと思ったのだ。

 

県道15号を走り出すと、最初こそ『住宅地を抜ける生活道路』の様相だったが、ほどなく、

いい感じにガラ空きになり、視界も開けて走りやすくなる。

 

10キロ強ほど北上して、併走する中央道の松川インターからこの道へぶっ違いに交差する、県道59号線を右折する。この道を東に走って小渋ダムの脇を抜け、先ほど言ってた国道152号へ出てやろうと言う目論見だ。ここらでガソリンが心もとなくなってきた。

そしてそれより何より、せっかく着てるのにまったく役立つ気配のないカッパを脱ぎたい。

ちょうどガソリンスタンドがあったので、ここで給油がてらカッパを脱ぐ。

すごい親切な方で、雨装備を解く場所を貸してくれたり、ルートの心配をしてくれたりした。

俺、そんなに頼りなく見えたのかなぁ。

それとも、「アルプスを越えたい」とか、バカなコト言ってたからかなぁ(それです)。

 

ありがたいながらも、若干の不満を感じながら、アルプスへ向かって走り出す。

いやまぁ、アルプスへ向かってつったって、さすがに道のない場所は越えられないんだけど。

すくなくとも、フューリィでは無理だ。

そのうち、よしなしあたりが、怒涛のアルプス横断を見せて、いや、魅せてくれるだろう。

小渋川沿いに走りながら、国道152号を目指していくと。

 

う〜む、そうきたか。

マップルと見比べてみるのだが、カンバンの地図がシンプルすぎて、行けるかどうかイマイチ把握できない。しばらくにらめっこしてるうちに、ようやく両方の地図の共通点、『分杭峠』の文字を見出す。同時に、俺の行きたい部分が計ったように通行止めだということがわかる。

「まだだ、まだ終わらんよ! こっちに迂回出来そうな道があるじゃないか!」

そう、確かに通行止め部分を迂回できる、県道210号線が、あるにはあるのだ。

『荒れた』『一部未舗装』『ダート』など、『遭難ワード』に満ちたルートではあるが。

 

伝説作成フラグが立ったところで、それじゃ行ってみようか。

あはん、イキナリこんな景色ですか? 俺に何を期待してるんですか?

 

いやいや、負けずに進むぜ。ゼッタイ無事に通り抜けるぜ。

 

後編に続く

 

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