solo run
一日日 二日目 三日目 四日目 五日目 六日目 七日目 八日目 九日目
山国志
2008.08.13 甲斐(かい)の男、尾張(おわり)の男
六月の事故で3週間ほど休み、そのせいで7月は休みを取れなかった。 夏といえばツーリングに出る俺が、オアズケを喰った犬の様な状態になっていたことは言うまでもなく、「8月の休みは全部、単車に乗ってやるぞ」と心に誓っていた 。基本的に『単車でやることは何でも好き』な俺だが、特に好きなことは二つ。ひとり旅、そしてダチに会いに行くツーリングだ。 今回は、この二つの要素を徹底的に盛り込んで、げっぷが出るまで走り倒すことにする。
水曜の半日仕事が終わると同時にワクワクといったん家に帰り、ヘンリービギンズのサイドバッグやデグナーの防水バッグに、着替えやその他しこたまつめて、積載性の悪いR1000に「ああでもないこうでもない」とやっとこさ積み込み終わったら、なんだかもう、ちょっと疲れてしまったかみ@38歳。 だがもちろん、そんなものは単車をまたげば忘れてしまう。 荷物を積み終えジャケットを羽織った俺は、楽しい旅の予感にヘルメットの中でニコニコしながら、今回の『山国志』最初の豪傑、ちょりちゃんの待つ甲斐の国へ向かって旅立った。
甲斐の国こと山梨へは、常磐道から首都高を抜けて中央道に乗る。 「中央道に入ったら連絡するよ」なんつってたんだが、入ってみれば停めるところもなく、そのまま石川PAまで。休憩をいれがてら、ちょりちゃんにメールをいれて一服してると、VTX1800Cが入ってきた。「こりゃ、誰か知ってる人か?」と思ったのだが、残念、知らない人だった。 つっても人見知りレスの俺だ。とっとと声かけて、しばらく談笑。これ、ステップボードは後付なんだってさ。最初、Cて気づかなかったよ。写真には写ってないけど、スクリーンが 高すぎなくて俺好みのスタイルだった。まぁ、VTXとかクルーザ好き以外には、しこたまどうでもいい話なんだけど。
節操なくうねる中央道を楽しんでやろうと思ってたら、談合坂付近から雨が降り出す。 サイドバッグに防水カバーを装着し、ペースを落としつつ遊びながら走ってたら、あっという間にちょりちゃんとの待ち合わせ場所、釈迦堂PAに到着だ。PAに入る寸前、挙動不審のビッグスクータが居たから「じゃまくせぇな」思って抜かしたら、後ろに派手なおねえちゃんを乗っけてた。俺の負け。 んで、PAにいたちょりちゃんは、出会うなり、挨拶もそこそこになにかを手渡す。 「かみさん、旅にはこれでしょ?」 「これなに……って酒かっ! ウイスキーじゃん! ちょりちゃん、さすがわかってるなぁ」 ひとしきり大笑いしたあと、単車の前に座り込んで話を始めるふたり。
つーか写真を撮ってて気づいちゃったよ、かみさん。 「おぉ?! なんだ? 左の防水カバーがないぞ?」 いきなり不可解な物体消失事件が勃発するとは、今回の旅もUMAだの霊だのに遭遇する羽目になるのだろうか? (カバーを適当につけて、バカみたいにすっ飛ばすからです。それから『今回も』どころか、一度も遭遇してません)。 ちょりちゃんはB-KINGで30分前から待っててくれだそうだ。 いや、ありがたい話なんだが、あのなおまいら。俺だって一応『自分の速度』とか『道の状況』なんてのを加味して「おそらくこのくらいだろう」と予想して集合時間を言ってるのだよ。それを「かみさんの事だから、きっと30分は早く着くと思って」とか、無駄にハードルあげるなって話だ。 や、上げないでくださいホント。わりとがんばっちゃう子なんで。
釈迦堂に来たとたんに、天気が暑いくらいになってきた。 そこで一時間ほどかな、ちょりちゃんとジュースやコーヒーを飲みながら話し込む。 ちょりちゃんがスズキの新しいスクータ、ジェンマを買いそうなので「買え買え」とたきつけてみた。 ちょりちゃんは仕事の時間が不規則なので、なかなか一緒に遊んだり飲んだりすることができない。たまにこうやって会えた時間ってのは、すごく貴重だ。俺はむさぼるようにヤツとの会話を楽しんだ。単車の話や飲み会の話、ゲラゲラ笑いながらしゃべっていると、あっという間に時間が過ぎる。 やがて、 「そういえば俺、ツーリングの途中だったんじゃん」 と思い出し、ちょりちゃんとの会合はお開きになる。後ろ髪引かれながらも走り出し、途中のインターでちょりちゃんと別れた後は、すっかり晴れ上がった東海道、中央高速を気持ちよくぶっ飛ばしながら西へ向かう。これからなら、北陸道を経由して敦賀あたりまでいけるだろう。 そこから山陰道を京都、兵庫、鳥取、島根と走り抜けて、ダチの待つ山口へ入る予定だ。
中央道を飛ばしていると、車や単車が道を開けてくれる。 「ありがとーおぅ!」 と谷村新司ばりに機嫌よくお礼を言いながら駆け抜けていると。 突然、左側にいた白い車が、俺が近づくのを待ってたかのように屋根からひょいと電飾を出した。言ってもこっちはまだ抜いてないわけだから、何ひとつやましい事があるわけじゃない。 間違いなく変な紙は買わされない。だが、こんなトコロでこんなヤツと話したいわけでもない。 ダチやかわいい女の子なら大歓迎だが、コスプレの二人組と仲良くなる気はビタイチナッシング。 もちろん減速せずにそのまま脇を抜ける。とたんに気分の悪くなるサウンドが、街宣車のような音量で鳴らされた。そのあまりに傍若無人な道ゆきに、周りの車もあわてて道を譲っている。「まったく、マナーってものがなってないな」とつぶやいた俺は、すり抜けの速度を少し上げた。
電飾と遊んでたら、いつの間にか恵那峡に来てたので、給油がてら休憩。 mixiでも更新しようかと思ったら、ここはAUのつながりが悪いみたいだ。んじゃと走り出し、中央道から名神高速と順調に歩を進め、相変わらずのクソ暑い中、養老サービスエリアに入ったところで、携帯がなった。発信者を見ると、 中部の兄弟にしてV-MAXジャンキーのダチ、フラナガンだ。 「おうよ、どした?」 「かみさん、多賀SAには何時ころつくんですか?」 「あほたれ。敦賀のほうに行くつったべよ。多賀なんか寄るか。このまま北陸道で……」 「ビールを用意してあるんですよ」 「わかった、多賀だな? すぐに出る」 というわけで予定変更。酒を用意してくれたその心意気を買わなくて、何が男か。クソ暑いこの天気にビールを呑まずして、何が酒飲みか。すっかり暗くなった名神高速を、米原ジャンクションまですっ飛ばし、本来の予定である北陸道には乗らずに、そのまま南下して多賀を目指す。
多賀SAに到着。 メシ食ったり一服しながら、ビールもといフラ公の到着を待つ。
きれいにカスタムされた400ガンマ。 オーナーに話しかけたら、「エンジン二機目です」だって。完全に取り憑かれてるね。
やがてビールもといフラ公が、やかましい排気音とともにやってきた。 多賀といえばサービスエリアにホテルがあるので有名だし、俺も一度泊まったことがある。しかしお盆初日の今日は、さすがに客の数が多いようで、すでに満室になっていた。まぁ、もともと今日は野宿のつもりだから全然問題ないわけで、PAの休憩テーブルでフラと宴会を始めた。 わざわざビール持ってやってきたキチガイ、フラナガン。 こいつと飲んで単車の話をするのは、すごく楽しい。
ジーンズも捲り上げて、やる気満々の俺。 と、 かわいい参加者が現れた。宴会は、さらにヒートアップ。
ガンガン呑んでくっちゃべってるうちに、フラが後ろを見ながらにやりと笑う。 「かみさん、かみさん、見てください」 「あんだ?」 「二軒目に行きませんか?」 実は、最初に目をつけたアズマヤみたいなところには先客がいたのだが、彼らが帰ったのでその場所があいたのだ。俺とフラは 「よっしゃ、ハシゴだー! 二軒目行くぞ!」とゲタゲタ笑いながら、ビールだの荷物だのを引っつかんで、二軒目に移動する。その距離、30Mってとこだろうか。
二軒目。今度はテーブルじゃなくて座敷タイプ。
千鳥足で二軒目に現れた、タチの悪そうな泥酔客。
フラの持ってきた、無駄にかわいい敷物を敷いたら、さぁレッツ宴会、第二段!
ガッツンガッツン呑んだくれ、ビールが切れたので焼酎を飲み、ちょりちゃんにもらったウイスキーにも手をつけて、それでも足りない俺は、フラ公の「かみさん、ここのPAは向こう側とか下に降りられるんですよ」の言葉におどらされて、わざわざくだり側のPAまで足を伸ばすも、酒はゲットできず。 だが、歩いたおかげで酔いが回ったようで、俺たちは戻ってくるなり就寝した。
一日目、甲斐のダチと会って話し、尾張のダチと呑んですごした、楽しい一日だった。
|