solo run

一日日 二日目 三日目 四日目 五日目 六日目 七日目 八日目 九日目

 

山国志

2008.08.18 敵は伊予、土佐にあり

 

前の晩にいくら飲んでても、野宿の朝は二日酔いがない

この定説は今回も覆(くつがえ)らず、(初日のフラナガンとの宴会で、すでに覆ってます)俺は気持ちよく目を覚ました。今日は南下して、『奥出雲おろちループ』ってところを通ってから、一気に尾道まで下り、しまなみ海道から四国へ渡ろう。そう予定を立てて走り出す。

まぁ予定なんてあってないようなもんだが。

なんつってると、いきなり南下の予定を変更することになった。

広域農道と聞いたら黙ってられないのが、かみさん。

北上し、広域農道で朝からワインディングを楽しむ。でも、このまま行くと四国に行けないので、県道に出たところでUターンして戻った。んで広域農道の残りを走って国道314号に出、予定通り南下を始める。『たたらと刀剣館』つーソソる博物館を見つけるも、まだ開いてなかった。

なので、おとなしく南を目指す。

走ってると腹が減ったので、途中に見つけたこの旅における俺の親友、ポプラに入る。

最初見たときはびっくりしたんだが、ポプラのお弁当は、どれもご飯が入ってない。

買ってから、レジでご飯をよそってくれるのだ。このお兄ちゃん、俺の顔を見て何も言わないのに

 

やたら大盛りにしてくれた。俺、小食なのに(ベロ引っこ抜かれます)。

「朝から、変なヤツに『弁当のご飯』ごときで絡まれちゃたまらん」

と思ったのかもしれない。

さて、お腹いっぱいになったら、おろちループを目指そう。

 

看板が出てるので、特に迷うこともなくおろちループに着く。

つってもでっかいループ橋なので、近くにいると全体像が見えない。

なので、ちょっと離れたところから写真を撮ってみた。

 

「ふ、ヒトがアリの様だ」言ったとか言わないとか。ヒト、これっぱかしも居ないけど。

 

さて、「四国を目指して走るぞー」と息巻くかみさん、一気に南下して庄原あたりで一服しながら地図を眺めているときに、ちょっと面白いものを見つけてしまった。『どの方向から見ても三角に見える日本ピラミッド』なるマップルの書き込みに、敏感に反応する。

しちゃったら仕方ないので、寄り道することにした。

気持ちのいいワインディングを走りながら、ふと今更のコトに気づく。

「ワインディングばっかり、ムキになって探して走ってきたけど、こうやって名所的なものをめぐっても、そこに至るまでの道のりはほとんどワインディングじゃないか。だったら、もっと面白そうなところを回ってもよかったなぁ。つーかすげぇな山陰山陽。どこでもワインディングと観光が両立するのか」

次回来るときは、も少し観光地をめぐってもいいかもね。

 

やがてカンバンどおりに進んでゆくと、『日本ピラミッド入り口』の文字が見えた。

意気揚々と進んで行く俺の前に、不吉な映像が現れる。

おいおい、待ってくれよ。今回は、そう言うのナシにしてーんだけど?

 

道はますます細くなり。

 

R1000の先、暗くなってる部分が『日本ピラミッドの入り口』だそうだ。知るか。

 

ははっはっは! この落ち葉に覆われた道を、しかも歩いてゆけと?

いや、R1000だってもちろんヤだけど、俺はかみだぞ? 『かみは歩かない』んだぞ?

丁重にお断りして、日本ピラミッドを去る。

 

だが、そのあとも。

気持ちのいいワインディングを抜けたすぐ先に、

 

こんなんが控えてたりして、なかなか気が抜けない。

 

庄原の街中まで戻って、途中で必要なモノの買出し。

こっちで布系。

 

こっちでケミカル系。

 

買出しを済ませたら、さらに尾道までワインディングみたいな国道を一気にすっ飛ばし。

無事、しまなみ海道に乗る。

 

瀬戸内の海を眺めながらのんびりと走ったり、飽きてすっ飛ばしたりを繰り返し。

 

因島南のパーキングエリアで一服。

 

橋を渡るたびに、片手運転で写真を撮ってたのだが。

橋。

 

海。

 

橋。

 

だんだん飽きてきたころ、やっと四国は今治(いまばり)市に入る。

今治出口手前の来島海峡サービスエリア。

今治で国道196号に乗ったら、とりあえず西へ。

海を眺めながらひた走り、

道の駅『風早の郷・風和里(ふわり)』に到着。

つーか、この手のネーミングは、何とかならんものか。

 

ここでさっき買い込んだケミカル、ファブリーズ(お茶風味)の出番。

さすがに汗臭いのに耐えられなくなった。俺は意外とにおい系に敏感なのだよ。

 

ついでに、昼飯を簡単に済ます。

たこやき。昼飯としては簡単すぎだけど、味はまぁ、結構美味しかった。

 

さて、ここから先の予定だが。

四国にきたら、最優先でやらなきゃならないことがある。もちろん、おととしの夏に生まれた伝説へのリベンジだ。アレから二年 。俺の単車はRocketIIIから、M109R、ハヤブサを経て、GSX-R1000という、排気量も重量も半分でパワーが三割り増しの、『最強の相方』になっている。

天狗のヤツに、一発食らわせてやらなくてはならない(R1000にその義理はありません)。

 

松山市街の渋滞を避けて、20号から国道11号を抜けて33号で高知へ向かう。

33号の途中で見た、作りかけのバイパス。

 

道の駅『みかわ』で休憩を入れるころには、俺のUMA人(ゆまんちゅ)魂は最高潮に燃え上がっていた。今度こそ天狗を捕らえ、その鼻っ柱に一発くれたあと、一緒に例の『RocketIIIポイント』で野宿して、 大酒飲んで歌いまくってやるのだ。もちろん曲名は『ゆまんちゅぬ宝』(作詞:かみ)。

てな感じで、テンションが上がってくる。

 

二年前、俺を奈落の底に突き落とした山々の姿が見える(自業自得です)。

 

そしてついに、俺はカルストの入り口にたどり着いた。

ここから尾根道を走ってゆけば、天狗高原へ出るのだ。

 

こんな幻想的な風景を見ながら、尾根道を走ってゆくと。

 

ついに! 二年前、走れなかった『四国カルスト』に、俺はやってきた。

 

牧歌的な風景の中に、牛が草を食(は)んでいる。

 

軽い感動さえこみ上げる心を抑え、俺はゆっくりとカルスト台地を走った。

 

カルストらしい風景に、停まっては見とれ。

 

また走り出す。

 

美しいグラデーションで連なる山々を前に、やがて、そのときがやってきた。

 

この先のどこかに、RIIIポイントがあるのだ。

気合を入れて走り出すと、道はやがて『日光いろは坂』みたいな急カーヴの連なる、ちょっと走りづらい表情を見せ始めた。あまり周りを見る余裕もなく、いや、速度を落としゃ良いだけの話なんだけど、ワインディング貧乏な曲がり道特捜隊としては、やっぱり「攻めて何ぼ」だ。

調子に乗ってガシガシ下ってゆくと、やがて道は曲がり道特捜隊よりも、ケモ道特捜隊向きな、SSで走るにはタフな林道になってくる。さすがに速度を落とし、山汁やコケの上を慎重に走ってると、道はどんどんケモ方向にエスカレートしてくる。だが、見覚えのある場所へは出ない。

「アレはだいぶん山を登ったあたりだったから、この道は違うな」

と確信するかしないかのうちに、下まで降りきってしまう。

しかも、反対方向に。

しかたなく、国道440号線へ出て、今度は尾根道(上のほうの写真の、カルスト入り口のところ)をカルスト側へは行かず、そのまますすんで南に下り、とりあえず村か町を目指す。

山口や広島、島根あたりの気持ちの良いワインディングからいきなり来ると、天地の差だ。

 

途中の、村か町っぽいところで、今晩の夕飯を買い込む。

 

そして水と、明日の朝に飲むコーラも買い込む。

なんでって、こうなりゃ日が暮れるまで探しまくるのだ。

「なんとしてもRIIIポイントで一泊してやろう」と言う、俺の気合の表れである。直接その場所に行くのは、俺の記憶からでは無理っぽいので、二年前と同じルートをたどってやろう、国道197号を走りながら、「たしかこのあたりだったんだよなぁ」と、きょろきょろしつつ走っていると。

 

ここだっ! 間違いない! このカンバンに誘われて、登った覚えがある。

よっしゃ、これなら労せずしてRIIIポイントまでいけるぜ!

 

 

 

 

 

うん、なんか普通に天狗高原まで来れちゃった。

 

天狗高原から見える、登ってきたワインディングと、美しい景色。

だが、どれだけキレイだろうと勇壮だろうと、俺が見たいのはこんな風景じゃないのだ。

 

なのでUターンして戻りつつ、林道っぽいところやいかにも寂れてそうな道を探しまくる。

が、どうにも見覚えのある風景に出くわさない。

途中で一度、国道へ出て、「最悪、ここで寝るか」的な場所も探しておく。

だが、どうも記憶があいまいな上に、もう、かれこれカルストの周りを三周はしてるので、さっき見た記憶とごっちゃになって、だんだん自信がなくなってくる。なので、完全にニュートラルに戻し 、一から探そうと、「確実にここより東ではない」と言い切れる、道の駅『布施ヶ坂』まで戻った。

この段階で5:30近かったので、さすがにやってなかったが、ここのおでんを例の駐在さんに食わせてもらったのだ。さらに言えば、ここで休憩を取ったあと、俺はカルスト目指して走りながらも、いつの間にか天狗に向かって驀進し、あっという間に伝説を作ったのである。

冷静に思い返してみても、ホンキでバカだね、俺は。

 

ここからもう一度、ゆっくりと記憶を探りながら走る。

しかし、やはりあの入り口から入った事だけは間違いない。二年経ってもほとんど変わらない風景に、焼きついた記憶が読みがえる。よし、ならばもう一度ここを登って、なんとしてもRIIIポイントを見つけ出そう。そしてそこで幸せに暮らそう。俺ならば、努力と根性で探し出せるはずだ。

俺の本棚に並ぶジャンプコミックスは、伊達じゃないのだ。

目を皿のようにしてゆっくりと登りながら、ある意味、俺の心のふるさとのひとつである思い出の場所を懸命に探す。『重いコンダラ』をゼロヨン10秒切るイキオイで引っ張りまわしながらも、しかし、俺の根性は空回りする(巨人の星は、マガジン連載だからです)。ホントか?

やがて

 

 

 

 

 

ポイント捜索どころじゃなくなってきた。

これだけ霧が深くなってくると、遭難はともかく、事故くらいは起こしかねない。

気をつけてゆっくり走りながら、しかし、枝道を見つけるととにかくすべて寄り道してみる。

ま、『支線に入って探索し、ダメならUターン』ってのは、ケモで慣れてるからね。

俺様にかかればこの程度の舗装林道など、高速道路みたいなもんなのだよ。そりゃ、マシンはR1000だから、さすがにひょいひょい入って気軽にUターンってほどじゃないけど、その分、道が舗装されてるんだから、あとはガソリンさえあれば、俺は永遠に……永遠に……

ガソリンがナイチンゲール。

仕方ないので、いったん国道まで戻ろうと走り出したのだが、峠を下ってるうちに、冗談みたいに日が暮れてくる。地図で確認したスタンドは、すでに店を閉めていた。一応こんなこともあろうかと、スペアのガソリンタンクは持ってきているが、1リッターじゃR1000はいいとこ15〜6kmしか走れない。

「う〜ん」

散々悩んだ挙句、俺は断腸の思いでRIIIポイントをあきらめた。

つーか、とりあえず回れる枝道は全部回ったのだ。明日、明るくなったからと言って、見つけ出せるとも思えない。「もしかしたら、舗装されてキレイな道になっちゃってたから、気づかなかったのかもしれない」と結論付け、とりあえず近くの道の駅に行こうと走り出した。

 

だが、道の駅まで来たときには、俺の心に新しいミッションが生まれる。

「明日は九州に行く。だったら、今日のうちに走れるだけ走って、距離を稼いでおこう。国道沿いなら、やってるスタンドがあるかもしれない。万が一ガス欠になったら、そこで野営して、スペアガソリンで明日の朝、ガソリンスタンドを探そう」とかなり適当なプランを立てて、道の駅をスルー。

すると、その選択を賞賛するかのように、数キロ行った先でやってるスタンドがあった。

ガソリンを満タンにして、さて、それじゃあ行けるところまで行こうと走り出す。国道197号を延々と西行し、ワインディングみたいな国道を駆け抜ける。夜のワインディングは島根で散々走ったから、慣れたもんだ。十分余裕を持ってワインディングを楽しんでると、そろそろ疲れを感じ始める。

『大好きなワインディングで疲れを感じる』なら、それはすなわち限界が近いことを意味する。

なので素直に、通りがかった道の駅『広見森の三角ぼうし』(だから、この手の勘違いした洋菓子屋のケーキチックなネーミングはどうかと思うぞ?)に滑り込み、そのまま奥の駐車場へ入り込んでR1000を停めた。今晩は、ここで眠ることにしよう。

三角ぼうしの裏。時間は、7:00過ぎくらいだろうか。

テントもシュラフも持ってきてないので、単車の横にエアマットを敷いたら準備は完了だ。

昼間、『ファッションセンターしまむら』で買い込んでおいた、タオルケット。

昨日の夜、掛け布団代わりのシュラフカバーが、汗を吸わずにやけに気持ち悪かったので、荷物が増えるのは承知で、買っておいたのだ。最新科学の繊維は、機能的には優れているけど、やっぱり肌触りは綿が最強だね。英断した甲斐があったよ(英断は大げさです)。

 

そしてこっちは、新旧虫よけ装置の競演。虫除けキャンドルに、サラテクト。

サラテクトは『ディープウッズ』タイプつー、イチバン強力(だと自称する)シロモノ。つっても結局、蚊の食欲には惨敗だった。むしろ旅の間中、蚊に食われてたので、俺の身体の方が免疫を持ち始めた。喰われればかゆいのだが、二三回引っかいたら「ん、なんか平気かも」つー具合。

ヒトは進化する生き物なんだと、改めて実感。ま、退化、野生化だって話もあるにはある。

 

今日も朝から走り続けた疲れが、焼酎を飲むと同時に襲ってきた。山じゃないから暑いことは暑いんだけど、それでも気持ちよくほろ酔いしながら、mixiや「笑ってる?」を更新したり、明日のフェリーの時間を確認してるうちに、いつの間にか、俺は深い眠りに落ちていた。

起きて、走って、呑んで、眠る。

単純だけど、最高に幸せな日々。

 

<<五日目へ

七日目へ>>

index

inserted by FC2 system