solo run

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山国志

2008.08.21 相模への遠い道

 

最終日はちんたら寄り道しながら帰ろうと思っていた。

途中、気が向いたところで降りて遊びながら、21日に三重のダチおーがんトコか静岡のけいこんトコあたりまで走って一泊。次の日の午前中にゆっくり柏まで帰れば、その次の日のケモ道探索も楽に参加できるだろう、という心積もりだったのである。

ところがボブさんから「帰り際にこっちへ寄りな。NEKOの兄貴と歓迎するよ」のお言葉が。

カタログにも載ってない、金払っても買えないようなパーツてんこ盛りのハヤブサをガンガン振り回す『ボブさん』と、最強の変態エイプハンガー使い『NEKOさん』。それにこないだの野獣会で初めて会って以来、やたらなついてしまった『こう兄ぃ』の三役揃い踏み。

そんな楽しい会合に、行かないわけにはゆかない。

ボブさんとメールを重ね、「21日の夕方には厚木に居る」と約束した。約束したら、果たさなければならない。余計な寄り道はこの段階で選択肢から消え、山口から厚木まで820〜830kmを一気に北上する、ひとりキャノンボールが決定する。

朝起きて準備をしたら、ドルフィーとNに別れを告げて、玖珂インターから中国自動車道へ。

最初のパーキングで、一服がてら飯を食う。

 

別に尾道とかじゃないと思う、普通のラーメン。味も普通。

 

中国自動車道は結構くねっていて、高速のわりには退屈しないで済む。なにより空いてるから、気持ちよく距離を稼ぐことも、普段なら可能だ。ところが俺は、この一週間で楽しいワインディングを走りすぎ、高速道路があまり面白くなくなっていた。

元気なうちは、それでも時々アタックしたりして遊んでるのだが、それも岡山あたりまで。京都に向けて段々道が混雑してくると、気持ちもずいぶん萎えてくる。と、休憩に入ったPAで、タバコに火をつけた瞬間、土砂降ってきやがった。単車置き場は屋根つきが多くて助かる。

「まぁた、毎度の通り雨だろう」と、しばらく休憩しながら、やってきたハーレィの人やSRの人としゃべったりする。出来れば少しでも距離を稼ぎたいが、なんつってもタイアがクソボウズなので、ウエットで無理は出来ないし、したくない。

これだもの。

ボブさんに「雨で遅れるかもしれません」とメールを入れて。

携帯で天気をチェックしてみると、どうやらこのあとは晴れ模様だ。なので、ちょっと小降りになった瞬間を見計らって、ハーレィとSRに挨拶すると、いそいそと出発する。京都、大阪あたりはどうせ混んでるだろうから、そんなに速度を出すこともないだろうし、降ってさえいなきゃ……

ヴォン! ヴォン!

大阪に入ったところで、イキナリ、様子のおかしい四輪にぶち抜かれた。ちなみに俺は四輪にまったく興味がないので、車種はカイモクわからん。結構混んでる中を、その四輪は180を越える速度で駆け抜けてゆく。となればこちらも、ウエットだのタイアだの言ってられない。

シフトを蹴りこんでアクセルを開け、四輪のケツに続く。

言っても速い四輪にベタ付けしてると、早晩カマを掘ることは間違いないので、ある程度の車間を空けて追わなくてはならない。イケるところを見計らって抜くつもりだったのだが、四輪の乗り手もなかなかのキチガイで、車の列を縫ってすっ飛ばしながら、速度を緩めない。

 

明らかに俺を意識した走りに、こちらも気合が乗ってくる。

後ろについて追うのをやめ、自分のラインで走る。四輪にはイケなくて単車ならイケるラインを使うのは、正直ずるいなぁとも思うのだが、このままケツについて消されるよりはマシだ。それに、このあたりになってくると渋滞って程のこともなく、コンディション的にはイコールと言っていいと思う。

すり抜けられる強みと、ウエットでも踏める強みで相殺だ。

車体が起きてると、ボウズのタイアが災いしてケツを振ることもあるが、コーナリングの時はそれほどのこともないので(俺が開けられてないってのも、あるだろうけど)、なんとか同じくらいの位置で走っていられる。つーかこの四輪、かなりヤルなぁ。俺が遅いだけか?

珍しく四輪と絡みながら、意外に楽しいライディングが続く。

しかし、ここは日本だ。しかも大阪と言う大都市だ。ジャンクションが迫ってくれば、さすがにある程度、渋滞してくる。前の車がどかなくてイライラしてる四輪の脇に寄り、片手を上げて「楽しかった。ありがとう」と挨拶。渋滞の列に並ぶクルマの間にR1000を滑り込ませて、先を急いだ。

 

公道にチェッカーで白黒つく勝ち負けはない。だとしたらやっぱり、楽しんだもん勝ちなんだろう。

単車に乗る以上リスクがあるのは当然で、それから目をそむけて『ゆっくり走れば安全』なんてのは、間違いとは言わないけど、基本的に努力放棄でしかない。ゆっくり走ることですべてのリスクが回避できるというなら、そういう方法もアリだとは思うが、実際はそうじゃない。

『事故に合う合わないの確率』だけで言えは、その主たるリスクファクター(要因)は速度じゃなくて頻度だ。毎日乗る者が事故にあう確率が高い。長く乗る者が事故にあう確率が高い。危険な場所にいる時間が長いのだから、当たり前のことだ。

ゆっくり走ってたって漫然と乗ってれば事故るし、飛ばしてたって集中してれば事故を回避できる場合もある。ベテランは予測が出来るけれど、それだけ長く乗ってるから事故に遭遇する確率も高い。赤信号全部無視したって、そこで必ず事故にあうわけじゃない。

確率なんてのは、その程度の目安でしかない。

机上でこんな事をいくら論じるよりも、乗って、走って、その上で得たリスクマネージメントの方が、何倍もタメになる。停まって考えるリスクマネージメントで死角になる事ってのは、たぶん、机上の安全論者が思うよりもずっと多いのだ。理と実、そのどちらに偏るんでもない、バランスの取れたリスクマネージメントをしなければ、失うのは自分の命だ。

命を失わない準備と心構えをした上で、自分自身出来る限りのリスクマネージメントをする。

その上で事故るなら、それは自分の責任だと納得がいくと思う。や、まぁ、死んだら納得もクソもないんだけど。ただゆっくり走るんじゃなく、考えナシにすっ飛ばすんじゃなく、乗るなら全身全霊を持って、自分の経験したすべてをフル活用して、とにかく生きて帰る。

その上で、走ることをしっかりと楽しむ。それが『公道での勝ち』なんだろう。

はい、また大きく脱線。

 

渋滞でかったるいだろうと思っていた大阪を、結果的に楽しく抜けられたことを例の四輪に感謝しながら走ってると、高速道路のカンバンに、『新名神』の文字が見える。看板の先には四日市と書いてあるじゃないか。なるほど、混雑する大阪〜名古屋を迂回できるのか。

それに、とにかく知らない道となれば、走ってみたい。

俺は迷わず新名神へR1000のノーズを向ける。

ジャンクションから入ったら、すでに新名神はガラガラだった。こりゃぁ大正解だと喜んでると、ヘルメットに雨粒がポツリ。「ウソだろぅ? やめてくれよぉ」の願いもむなしく、数秒後にはざぁっ! っと雨が降ってきた。トラックのコンテナの後ろに隠れて雨をよけながらSAへ。

ここでしばらく、雨が小降りになるのを待つ。

時間的にはまぁまぁのペースだが、このあとすっ飛ばせるのは伊勢湾岸道くらいのものだろう。その先は、天気がどうなるかわからない上に、渋滞の名所、東名高速だ。東名に乗ったら逃げ場はない。あせってすり抜けなくて済むように、今、もう少し距離と時間を稼いでおこう。

そう考えて、SAで給油を済ませ、雨雲に背中を押されるように走り出す。

 

やがて四日市を抜け、道は伊勢湾岸道と名前を変える。

「何度走っても、ここは広くて飛ばしやすいなぁ。三重県、金持ってるんだな」

ダチのおーがの家に程近い出口を横目に見ながら、大阪でチカラを使い果たした俺は、サイト立ち上げてからは初めて、VTXで白黒赤のヒトと追いかけっこした思い出の伊勢湾岸を、珍しく160くらいで巡航する。とにかく広くて見通しがよく、その割りクルマが少ないから楽だ。

伊勢湾岸を駆け抜けて、豊田からついに東名高速へ乗る。

さて、ここからは段々混んでくるぞーと自分に気合を入れつつ、タバコ休憩と給油のみで走る。

 

牧の原SA。

この先に、ダチのけいこの店があり、この辺まで来たときは寄っていくのが定番なのだが、今回は『とにかく夕方までに厚木』と言うミッションがあるから、残念ながらこっちもスルー。ここでまたボブさんに「いま、牧の原です」とメールをいれたら、「あと一時間だな」

や、ボブさん。ぶっ通しで6時間走ってきた男に、鬼か。

苦笑してタバコを消すと、メットをかぶりながら。

「そういえばけいこんトコもしばらく寄ってないから、近いうちにまた、お茶割りを呑みに行こう」

なんてつぶやきつつ、牧の原を出る。

 

ハヤブサなら、それこそ牧の原から一気に厚木まで行ったって、なんてことはない。

つーか山口からだったら、もう、今ごろついててもおかしくないくらいだろう。こと長い道のりを走り続けるという点において、スーパースポーツはハヤブサにはかなわない。や、GO!!!君みたいに、『SSで下道を延々と走っても平気』な変態のことは、考慮に入れない方向で。

アレはレアケースだ。

愛鷹PAで最後の休憩。

さぁ、後は厚木まで一気に上るだけだ。

なんつってると

 

 

 

邪魔者。さすがにここから追いかけっこする体力は残ってないので、後ろについて写真とってみた。

その後、ゆっくり抜いて前に出たら、厚木で降りるまで後ろにベタ付けされた。

フラッシュ焚いたのが、お気に召さなかったようだ。

 

某コンビニにて、ボブさんに連絡。

ワルキューレで迎えに来てくれたボブさんと、ボブさんトコに行って、着いて早々シャワーを借りる。長旅の汚れをスッキリ洗い流したところで、ボブさんが「これからXRの納車なんだけど、付き合ってくれる?」言うので、「あ、ぜんぜんOKっす」と、納車用のトランポに乗り込む。

もちろん、片手にはボブさんが出してくれたバドワイザーを持って。

 

ハーレィのディーラーに向かう道すがら、ボブさんといろいろ話す。

「今日、NEKOさんとこう兄ぃも来るんですよね?」

「それがさ、朝から電話してるんだけど、NEKOの兄貴と連絡つかないんだよ」

「なはは。NEKOさんらしい」

「自由な人だからなぁ。まさに猫だよ」

NEKOさんの話や、音楽の話、ハヤブサの話だとかしてるうちに、ディーラーに到着。

 

今回、ボブさんが買ったXR12000、日本でイチバン早くナンバーがついたらしい。

ボブさん、そういうの好きだからね。

ディーラーのケツ、結構たたいたみたいだ。

 

なんと、『契約室』みたいなのがあって、ボブさんの名札がかかってる。

『それをブログ用に写真撮ってるボブさん』を撮ってみた。

 

契約室だか成約室だかの中で、書類を書かされてるボブさん。なんかお土産みたいのもいっぱいもらってた。俺もついでに、コーラをもらった。さすがっつーか、「いろんな意味でハーレィだなぁ」って思ったよ。俺は買うとしても中古だから、ディーラーには一生縁がないかな。

 

なんか『オサレ空間』で、非常に居づらい雰囲気。

ただ、ここ『ハーレーダビッドソン昭和の森』には全車種があって試乗も出来るみたいだから、好きな人は行ってみても良いかもね。なんかハーレィダビッドソンジャパンのフラッグシップディーラーらしいから。ボブさんのアレで俺も社長の名刺とかもらったけど、俺はたぶん行かないから、ま、誰か代わりに行ってみたら良いじゃない。

 

んで受け取って帰るのかと思ったら、なんか『納車式』があるらしい。

「なんだそりゃ?」と思って見てると、XRの乗った台の上にボブさんが乗せられて、一ダースくらいのスタッフに囲まれてる。「それでは、XR1200をご購入されました、ボブ様の納車式を行います」とかなんとか挨拶が始まって、そりゃもう大騒ぎ。面白いからこう兄ぃに見せてやろうと、動画を撮る。

途中でボブさんに電話がかかってきて、わりとなし崩し的に納車式が終わり。

さてそれじゃ、トランポに積み込んで帰りましょう。

つーか、宴会やりましょう、宴会!

「ハーレー買いました!」的な気負いも一切なく、おもちゃを買って帰るみたいなボブさんに、ディーラーの人が苦笑してたので、「ボブさん、もう少し感動しましょうよ」ってツッコんでおいた。「すいませんねぇ、こんなヤツで」と半笑い。もちろんこのヒトぁ、カケラもすいませんなんて思ってない。

んで、宴会に向かって走り出すと。

キチガイ沙汰の土砂降り。後で聞いたら、記録的な大雨だったそうだ。

 

雨の中を走って、宴会場になってるお店へ行く。

するとすでに、こう兄ぃがきてたので、早速挨拶。ボブさんが「この雨じゃ貸切か」なんて言ってたら、ほかにもツワモノがいた。店長さんがボブさんの友達で、いろいろと美味いものを食わせもらい、酒もしこたま呑んで(俺だけが)、いろんなバカ話をする。結構な時間、呑んだくれた。

やがて明日仕事だというこう兄ぃのポルシェを見送り、俺とボブさんも帰路に着く。

呑まないヒトと宴会やると、クルマで送ってもらえるのが良いね。

 

んで、ボブさんの店の前にとまってる、キャンピング仕様のクルマが、今夜の寝床。

 

屋根もあって虫も入らず、電灯までついてるってんだから野宿erにはもったいないくらい。

やわらかいシートの上で熟睡させていただいた。

 

翌朝、ちょっと用事が入ってしまい、ボブさんとアサイチでお別れする。ボブさん、楽しい経験と美味いメシ、酒、寝床。徹底的にお世話になっちゃいまして、ありがとうございました。もう場所は覚え ましたので、また遊びに行きます。こんだ、ブサで一緒に走りましょう。

 

厚木インターから高速に乗って、俺は柏を目指し走り出した。

 

 

2008.08.22 エピローグ

走って走って、走り倒した9日間。

頑張ってくれたR1000も、リフレッシュしてやる。

オイル交換をして、ボウズタイアも交換する。もちろん、パイロットパワー無印だ。

 

ジェンマ。ちょりちゃん、買うのかなぁ。

 

ついでに、翌日から行くケモ探索のために、ランツァのチェーンと前後スプロケ交換。

キレイなチェーンとスプロケ。どうせすぐ、泥と草でぐちゃぐちゃになっちゃうんだけどね。

 

今回の目的、『ひとり旅、そしてダチに会いに行くツーリング』は、バッチリ達成できた。

お腹いっぱいになるまで単車漬け、ワインディング漬けの生活を送ったので、満足感もひとしおだ。

会う方に至っては、ちょりちゃんとしゃべり、フラナガンと呑んで騒いで一緒に走り、、デコ、ゆっちょむ、ドルフィーとは一緒に走れただけじゃなく二回も呑んで騒げた。ボブさん、こう兄ぃとも、心ゆくまで呑んで騒いで楽しい時間を過ごした。おっと、NとJちゃん、N両親も忘れちゃならねぇ。

とにかく、今回の旅で再確認できたのは。

『俺は、単車に乗るから俺なんだ』

ってこと。これだけ走ってきて、翌日にはオフロード走りに行くんだから、間違いないだろう。

さて、次の旅には、どんなことが待ってるんだろう。

今からもう、ワクワクするね。

 

みんなも、いい旅を!

 

総走行距離:4500km

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