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夏ツーリング

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2012.07.17 四日目(前編) 田沢湖〜十和田湖

〜青空〜

 

雨音が子守唄になったんだろうか。

思いのほか深く眠りについて、目を覚ませば朝の五時。

田沢湖の景観をバックに、出かける準備を始める。

 

ブーツはまだ乾ききってないので、AMPくんが酒をくれたビニールをつかって養生。

 

いつものように、『来た時と同じ状態』になるまで片付けたら、さあ出発だ。

 

今日、晴れるかどうかはまだわからない。

とは言えそれは、携帯が繋がらないとか、天気予報がアテにならないとかじゃなく。

俺が今日、ドコへゆくかわからんからだ。

田沢湖に別れを告げつつ、とりあえず朝メシ&朝トイレに向かおう。

と、その前にガソリンを入れなくちゃならない。ところが、東北の朝の五時過ぎじゃあ、開いてるスタンドなんて皆無にひとしい。なので、地図を見て一番スタンドの多そうな道をセレクト。田沢湖から東へ向かうその国道を、とにかくガス欠に備えながら走る。

ストーブ用のスペアガソリンも、あるにはあるんだが、500mlじゃ焼け石ウォーター。

途中のコンビニで、おばさんに聞いてみると、どうやら15キロくらい先にスタンドがあるそうだ。

俺も地図を見てそのスタンドの存在は知っていたが、しかし、どうも怪しい匂いがするので懐疑的な印象を持っていた。だが地元のヒトが言うなら、間違いないだろう。コンビニで朝メシとトイレを済ましつつ、開店する時間だろう朝7時くらいまで時間をつぶす。

 

やがて時間になったんで、スタンドへ向けて走り出した……のだが。

やはり旅路での自分の勘は(ルート以外)信じたほうが良さそうだ。あるはずのスタンドは、存在はすれども臨時休業中。店舗改装工事をしてるみたいで、人っ子ひとりいなかった。まあ、この先には盛岡の町があるから、だましだまし行けばどうにかなるだろう。

そんな感じで、超燃費走行を心がけつつ進んでゆくと。

盛岡の市街地に入るなりスタンドがあったので、これ幸いとソッコー給油。ガソリンを満タンにし、ようやくひと心地ついたところで、これから行く先を考える。地図を引っ張り出してながめてると、おや、どうやらこの先に、いつも亀くんが行ってる『岩洞』があるじゃんか。

そんじゃ彼のホームコースを走ってみようか。

 

大雨警報こそ解除されたものの、東北一帯、どうやら今日も芳しい天気ではなさそうだ。

だからカリカリ攻めるのは無理かもしれないけど、走ったことのない道を走るのは好きだし、まして(会ったことないとは言え)知り合いのホームコースと聞けば、そら走ってみたいだろ。つわけでキライな都市部の渋滞がある盛岡市内をしぶしぶ抜け、岩洞湖を目指す。

途中のコンビニで一服しながら、ミクシィで岩洞へ向かう旨を書き込んだり。

 

つわけで、ここから岩洞湖へ向けて走り出したのだが。

最初はそれなりのツイストだった道が、高帽山を登り始めると、エラい勢いでくねりはじめる。

「これはこれは。なかなか歯ごたえのある道じゃないの」

路面はドライ寄りのハーフウエットくらいだが、楽しいレイアウトなので思わず速度が上がる。ノリノリで山を下ってゆくと、その先からは曲率が下がって高速ワインディングになってきた。途中のダム湖あたりなんかは、「SSだったらトップエンドなんぼ出ちゃうんだろう?」ってくらいだ。

気合が入ってきたところで……う〜む、またポツポツきたなぁ。

高帽山と違って、速度の乗りがアレな道なので、ウエットになったら無理は出来ない。

ギアをひとつ上げて、トルクを生かした快適走行に切り替えた。

 

左手に岩洞湖を見ながら走っていると、ドライブインが見える。

亀くんの写真で見知っていた看板を見つけて、その前に単車を停めた。

同時に雨脚が強くなってくる。

タバコと地図を持ってレストハウスへ行くと、中の店はまだ開店してなかったが、オモテに屋根のあるテラスがあったので、そこで地図をながめて先の道を考える。レストハウスのスピーカーからは、スキー場のように大音量で音楽が流れ出してくる……のだが……

♪レディオマージーック、 なーがーれーるぅーよ、キミのぉくちびーるーにー♪

「ぎゃはははは! なんで湖畔のレストハウスで、アースシェイカーかかってんだよ!」

青春の一曲と言っていいだろう、アースシェイカーの『ラジオマジック』が流れてたもんだから、誰もいないレストハウスで大爆笑する、かみさん42歳。あとで亀くんに聞いたら、「あそこはよく、昭和の曲がかかってるんですよ」だそうだ。集まるのが、おっさんばっかりなんだろう。

単車乗りの平均年齢も、ずいぶん上がってるからねぇ。

 

雨は不本意だけれど、ひと笑いして気分がよくなった。

地図を見るとこの先に、西へUターンして国道4号線へ出るツイスティな道がある。そこを走ってそのまま西へ抜け、昨日走ろうと思ってた八幡平アスピーテラインを目指してみようか。もしかしたら俺の祈りが通じて、向こうへ着くころには晴れてるかもしれないし。

てなわけで岩道湖を出ると、国道を5キロほど東へ。

 

雨が強くなってきたので、途中で停まって、ダブルシールドの内側に入った水をふき取る。

Z6になってからのデカいダブルシールドは、視野が広いのはいいんだけど、前モデルのダブルシールドよりも大雨のときにトラブることが多い。面積が大きくなれば気密を保つのは難しいってことなんだろうけど、ツーリングライダーとしては何かしらの対策を求めたいところだ。

 

走り出して程なく、県道への分岐がみつかったので、そこからさらに山の中へ。

こんな感じの狭い舗装林道だが、他に走ってるクルマはいないし、ウエットで速度も遅い。

 

だから、ごちゃごちゃして見通しの悪い山間のわりには、楽しく走れた。

 

と。

走ってるうちに、行く先の方がだんだん晴れてくる。

「おぉ? こりゃもしかして、期待しちゃっていいのかな?」

嬉しくなって、踊るように走りながら先を急ぐ。

 

やがて山間部を抜け、国道4号線にでたところで。

やっと、やっと、やっと晴れ上がった!

昨日の朝から、まる一日以上。恋しくて恋しくてもだえ苦しんでた青空と太陽に、ようやくのことで出会えたのだ。すっかりゴキゲンモードに突入したかみさん。このまま八幡平へ向けてすっ飛ばしたいところだが、しかし、それより先にやっておかなきゃならないことがある。

濡れた装備を乾かしてやるのだ。

道端で、カッパやブーツを太陽に当てて干す。

足にかぶせてあるビニール袋は、昨日から干してたのにイッコも乾かなかったブーツを履くための養生。

一服しながら15分ほど乾かして、ガマンできなくなったので単車にまたがる。

 

ちょっと込んでる国道をクルマと一緒に走りながらも、青空のおかげで気分がいい。

10キロほど南下して、八幡平や十和田の文字が見えたところで右折。

どっかん直線の向こうに、八幡平の山々が見えてきた。

 

カメラが携帯なので、イチイチ停まって撮るのがめんどくさい。

 

やがて看板に、アスピーテラインの文字が見えてきた。

さあ、フルドライでは初めて走るアスピーテラインだ。

楽しみだなぁ。

 

出端から節操なくツイストするアスピーテラインに、歓声を上げる42歳。

前二回はウエットでテンションがあがらず、しかも反対側から下ってきた道を、今日は最高にゴキゲンな状態で登ってゆく。「ちょっと草津に似た感じがあるな」と思いながら、乾いたワインディングをユリシーズと一緒にひらひら駆け上がってゆく、まさに至福の時間。

昨日から溜まってた『走りたい魂』を一気に開放して、タイアのエッジを削る。

ぐるんと曲がって短い直線をだだだっと加速。

ぎゅーっと奥までタイトに曲がりこんだ道も、短いホイールベースと事故車のごとく立ったキャスターにかかれば、ハナウタ交じりで曲がってゆける。むしろアトラクションみたいなものだ。稜線を走る道の、胸のすくような景色の中を、俺は愛機とともに踊り続ける。

ああ、生きてるなぁ。

 

駐車場があったので、そこへユリシーズを滑り込ませた。

有料駐車場なので、いつもだったらスルーしちゃうところなんだが、あまりに嬉しくて鷹揚な気分になっていたのだ。まあ、有料たって単車は100円だったけど。あと、入った一番の理由は、調子に乗ってすっ飛ばしてたら冷えたらしく、ちょっとお腹が痛かったからなんだけど。

昔は鋼鉄の胃腸を誇ったのになぁ(´・ω・`)

 

ようやく乾いたワインディングを目一杯すっ飛ばせて、ユリシーズもなにやら嬉しそうだ。

 

駐車場から歩いて休憩所へゆき、トイレを済ませて出てきたら、しばらく景色を眺める。

八幡平の山々。空気が澄んで遠くまでよく見えるのが嬉しい。

 

これは、このあと走ってゆく道。消失点に続く道が気持ちよかったので撮ってみた。

 

一段下の休憩所。この写真はミクシィにもアップしたヤツ。

 

駐車場で地図を見ながら、この先の道を考える。

もちろんここまで来たら十和田湖、つーか奥入瀬(おいらせ)が見たい。だが、そのまま北へ向かって国道を走るってのは、さすがに芸がなさ過ぎるだろう。雨でも降ってるならそれでもいいが、せっかく晴れたんだし、出来れば曲がった道を進みたいところだ。

そう思いながらルーティングして、だいたい決まったところで走り出す。

 

さらにぐねぐねと入り組んで下るツイストを、飽きもせず歓声を上げながら下り。

平坦な場所へ出たらアクセルを緩めて、空冷Vツインがドコドコ言うのを聞きつつ走る。

国道とは言え、このへんの三桁国道はそんなに混んでないので、快適な青空の下を、まるでクルーザのように走ってゆけば、10キロや20キロなんてあっという間に走り抜けてしまう。先ほどワインディングで散々すっ飛ばしたエンジンをいたわりつつ、景色を眺めて走ってゆくと。

国道へ出る手前、写真の赤い矢印のところから、秋田の比内へ抜ける道へ。

 

またも山間の舗装林道チックな道を走ってると、道端に温泉があった。

見逃してしまいそうな小さな温泉の前で、俺はフルブレーキングして駐車場へ飛び込む。

大葛温泉。

ホントに小さくて、おそらく観光客というより近所のヒトがやって来るのだろう、なんの飾りっ気もない温泉なんだが、この温泉に出てた看板が、俺の心をガッチリキャッチした。なぜなら入泉料が100円だったからである。今どきジュースも買えないワンコイン。銭湯より安いワンコイン。

温泉に重きを置かない俺にとって、実にありがたい存在だ。

 

温泉に入って汗を流しさっぱりしたら、さあ、また走り出そう。

大葛温泉から、いかにもな田舎町を抜け、山間の意外に綺麗な舗装の道を10キロほど走ると。

 

比内鶏(ひないどり)で有名な、秋田県大館市の比内町に入る。

いや、大葛温泉も、すでに比内町なんだけどね。

道の駅『ひない』にある、直売所『とっと館』に入り、中で昼食をとる。

比内地鶏ラーメンが有名らしいのだが、街中に入ったとたんクソ暑くてヤラれてたので、冷やしぶっかけそばと、比内地鶏のつくねを食った。つくねは美味かったけど、ビックリするほどじゃなかった。たぶん地元の料理屋とかで食えば、もっと美味いんだろう。

そんなとこ入ったら、ぜってー呑んじゃうから行かないけど。

 

お腹もいっぱいになったし、ワインディングも充分に堪能した。

ならば十和田湖へ行って、去年俺を魅了した、あの奥入瀬渓流へゆこうじゃないか。

十和田湖まで一本道で繋がる国道103号線に乗って、たんたんと進んでゆく。

やがてまっすぐだった道がくねりはじめれば、十和田湖が近づいた証拠。十和田火山の噴火で出来た二重カルデラ湖(ウィキペディア/拠)だから、当然、湖の周りには外輪山がある=ツイストロードってわけだ。いや、走ってるときはそんなこと意識してないけど。

 

気持ちよく曲がり始めた道を、ひらひら踊りながら登ってゆくと。

ぱあっと目の前が開けて、十和田湖がひろがった。

 

大好きな奥入瀬渓流は、もう、すぐそこだ。

 

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